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トゥルー・グリット スペシャル・エディション [DVD]
私は、ジョン ウェインの勇気ある追跡の記憶はない。この作品がそのリメイクということは知ってはいたが
それよりも、父親の敵討ちを依頼する少女を演じる女優の評価が非常に高いので、それでは見てみようということで鑑賞した
西部劇としても、映画としても一級品
凄腕だが、アルコール依存症ともいえ、片目のため、相棒となり一度は、袂を分かつテキサスレンジャーを救うべき
ライフルを撃つが、それが誤射してレンジャーを撃ったのではという疑惑や、このレンジャーの長距離射撃の腕はどうか
ということで、物語の終盤で、子供のような腕の競い合いなど、よき時代の西部劇テイストの溢れる反面
復習の炎は、自分も焼くことになる危険もはらむということも語っている。
オリジナルは知らないので、この少女が大人に成長してからの物語はどのようになっているかは分からないが
敵討ちと悪党と倒して、めでたしめでたしでは終わらない。
感慨深いラストである。
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イリュージョニスト [DVD]
ジャック・タチは大好きなコメディアンで映画人だ。
愛犬を迎えるにあたって彼から名前をもらった。
Jacquesという。
けしてJackではない、名前を聴かれると説明するのが大変だが、
Jacques TatiのJacquesである。
1950年代のパリ。ロックンロールやTVが台頭し、
時代に取り残された初老の手品師タチシェフ(ジャック・タチの本名はジャック・タチシェフ)は
英国のスコットランドの片田舎に流れ着く。
そこで知り合った少女アリスは、
彼を手品師とは思わず、魔法使いと信じ込み、後を追う。
やがて二人はエジンバラの安ホテルで暮らし始める。
彼は手品師で魔術師じゃない。
けれども、目の前に熱烈なファンが
魔法を叶えてもらいたいと願えば、
それを叶えずには居られない。
でも、魔法じゃない。
彼は彼女が信じている魔法を叶えるため、
寝ずに働き彼女が欲しがっていたドレスなどを買うお金をつくる。
台詞はぎりぎりまでそぎ落とされ、
余計な説明や心理描写などはない。
ジャック・タチの喜劇映画と同様、
主人公のパントマイムのような優雅な所作が印象的で(彼の歩く姿がとてもよく似ていたのでにやけた)
サイレント映画を思わせるジャック・タチの上品な笑いがちりばめられている。
実際、主人公が映画館に入ると、
実写のジャック・タチの「ぼくの伯父さん」が上映されていて、
スクリーンのユロ氏(ジャック・タチの当たり役)を
彼が一瞬だが観ることになるシーンはジャック・タチのファンならにやけるだろう。
だが、少女が若い男性と恋に落ちた時、
映画はほろ苦い余韻を残して、幕を下ろす。
魔法はとけたのだ。
最初は喜劇だけどラストはビターな切ない映画です。
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ユゴーの不思議な発明(文庫) (アスペクト文庫)
入り口はファンタジーだが、作品の中心には、ジョルジュ・メリエス(フランスの映画製作者で、
映画の創生期において様々な技術を開発し、特にカットを積み重ねて作品を作るという技術を導入した)
の自伝/オマージュを封入した作品である。
他の評者も書いているように読み始めるとちょうど2時間ほどで読み終えられる長さで、
黒炭で描いた、アニメーションの原画のような独特の作風(色のついていないフレデリック バックといった感じ?)の絵が、
まさにアニメーションの原画をめくる様にページをめくるごとに少しずつ動きながら話が続いていき、不思議な読書感を味わうことが出来る。
絵本に分類されているそうであるが、実際は、絵本とグラフィックノベルの中間でよりグラフィックノベルよりの感じだが、
絵と文章の住み分けが絶妙で、集中力を切らすこと無く最後まで読ませる作品に仕上がっている。
また、大人も、こどもも同様に楽しめる内容だと思う。
様々な賞に輝く映画監督として、また古い映画の保存や修復に最も真剣に取り組んでいる篤志家
としても有名なマーチン・スコセッシが監督でこの作品が映画化されたということで期待させられるのだが、
予告編を見て、かなり原作と映画では作品のtextureが違うなと感じた。
映画と原作の世界観は完全に別物だと思う。
映画と同じ時間で読み切れる作品なので、
映画を見た人もこの作品の独特の世界観を楽しんで欲しい。