雪崩リスク軽減の手引き―山岳ユーザーのための
雪崩というと、アカデミックな学問の方向に流れるか、
「総合的な感覚が大事」といった体感論にとかくなりがちであるが、
この本では「現場プロが実践」という、地に足がついた具体的内容が展開されている。
まず、雪崩の危険がある「地形」についての詳細な記述は秀逸である。
「地形」を理解し行動することが、雪崩のリスクを低減する為にいかに重要であるかを
繰り返し丁寧に説き、更にフィールドでのリスクマネジメントへと発展させている点が
素晴らしい。
また、斜面の雪は雪崩を起こしうるのか? という我々最大の関心事に対して、
「積雪の不安定性評価」という言葉を提示し、その概念と目的、使用するデータ、
そして実際の例が書かれており、抽象的になりがちな雪の安定性について
分かりやすい記述がなされている。
ただし、レスキューに関しては、掘り出しで終わっており、その後の搬送等については、
別書籍等が必要であろう。
バランスの取れた構成と明快な文章、そして原則的な事項を大切にした記述の確かさは、
両著者が所属する日本雪崩ネットワークのこれまでの活動内容と実績を考えれば
うなずけるところである。
他団体においても、この本を採用することによってより充実した雪崩講習会の開催と
実践に即した理解を深めることができるだろう。
他の雪崩本や雑誌で見かける記事と比べ、それらとの質の違いは歴然である。
餅は餅屋といったところか。
どれが本物か?見抜けるか否か、ユーザーの側も問われていると言える。
手元に置いておいて損はない一冊。
雪崩(紙ジャケット仕様)
二枚看板のBANDは掃いて捨てるほどあるけど、ひとつのBANDでここまで見事に静と動のコントラストが完璧なBANDはお目に(というかお耳に)かかったことがない。レズリーウエストが動なら、フェリックスパパラルディは静であり、この絶妙なバランスで1枚のアルバムを完全体にしているのでしょう。初期もかなり良いのですが、個人的にはこれが大好きなアルバムです。
雪山の基本 (OUTDOOR PERFECT MANUAL)
「ゲレンデを離れ雪山で新雪を自在に滑ってみたいと考えているスノーボーダーやスキーヤー」向けに
魅力、ギア、気象、行動、雪崩、積雪、レスキューと基本を説いてくれる。
ゲレンデの上級コースを楽しめる滑走技量と、日が暮れる前に出発点に戻る5〜6時間を前提として記述されている。
タイトル通り「雪山の基本」ばかりなのだろうが、管理されたゲレンデの外に出るために必要な知識は幅広い。そして知識や道具だけでは自然に通用しない認識が読み進めるごとに深まる。
バックカントリーという自由を手に入れるための代償・怖さが理解できる。自然に人間の事情は関係ない。
その自然に足を踏み入れるには、心構えというよりも覚悟を、技術というよりも自律を、本書より学んだ。
本書を読むと軽い気持ちでコース外のロープをくぐれなくなると思う。
逆にゲレンデで楽しむことの安心感も再認識出来る。
バックカントリーに興味がある方は勿論の事、
上級者だと自負しているスノーフリークにこそ、雪山の新たな魅力に触れられる一冊、お薦めです。
雪崩リスクマネジメント―プロフェッショナルが伝える雪崩地形での実践的行動判断
訳がまずい。
雪崩リスクを避けるための本格的な本は数が少ないだけに、大変惜しい気がする。原文はおそらくユーモラスで割とざっくばらんな語り口であると思われるが、英語の原文の語順にひきずられた素人っぽい訳文は、ところどころ意味が不明な上、流れが非常に悪い。集中できない。(例えば「これ」「それ」「これら」「それら」といった代名詞が多すぎる。学校英語の直訳よりややましといったレベルか)
おそらくボランティア的な意識で手弁当で訳されたのだろうと思う。訳文の善し悪しよりも、貴重な情報が訳出されたそのこと自体を感謝するべきなのかもしれない。もしかすると半ば自費出版なのだろうか?情報の価値だけであれば、星5つをささげたいところ。
手元にあるのは2004年12月の初版だが、増版の可能性があれば、全文のブラッシュアップを期待したい。