雁の寺・越前竹人形 (新潮文庫)
3回読みました。 主人公玉枝が喜助に対して注ぐ哀しいまでにひたむきな愛情〔恋情〕に本来の日本女性の姿を見た思いがしました。また、最後は哀れな結末で終わるのですが、その玉枝に「頑張れよ、負けるなよ」という作者の声が作品全体に響いているような気がします。
沢庵 (中公文庫)
水上氏の伝記ものはこの「一休」と「良寛」、そして本作「沢庵」が有名ですが、
私はこの「沢庵」を水上作品の中でも、文学史に残すべき傑作だと思っています。
例えば「一休」の時とは違い、氏の、対象への姿勢・文章に余裕があり、
沢庵に迫ろうとする思いと、落ち着いた趣きが作中に並存しています。
そのため読者に、伝記物にありがちな、変に熱い執拗さも感じさせなければ、
乾燥したつまらなさも感じさせません。
全体を通して、名文として挙げられる箇所が多くあります。
水上氏に使われると、何の変哲もない一つの言葉・一つの表現が、
じわーっと深い意味や雰囲気を持つことがありますが、
この「沢庵」は伝記物でありながら、その水上氏の魔力が多く発揮されています。
現代作家の伝記ものの中でも群を抜いた名品です。
ぜひご一読あれ。
一休 (中公文庫)
小説家・水上勉による禅僧一休宗純の秀逸な伝記文学です。自らも京都の禅寺で修行生活を送った経験のある作家が、室町時代の反骨精神みなぎる一休禅師の生涯を活き活きと描いて余すところがありません。男色のみならず、女色にも耽り、破戒無慙な生涯を送った“奇僧”の一生を知りたい人々は是非とも一度御覧頂きたい作品です。とりわけ、当時の禅宗寺院で盛行した男色愛好の習慣を知る上で参考になりますよ。
飢餓海峡 [DVD]
下北半島の先は北海道です。
鉛色の空の下,同じ色の海が波のしぶきを強烈に舞い上げる場所です。
ここで,戦後まもなく台風で連絡船が沈みました。
その実際に起こった事件に,本作は架空の二人の人物の悲劇を乗せて綴ります。
映像を見てください。
寒い寒い場所です。つらいつらい生きることです。
そして,そんな日々に信じられないような親切を受けたら,それは生涯を支える大切な宝物になります。自身を死へといざなうものであっても。
この映画の前半の圧倒的な迫り方と後半の引っかかりどころの無さは,そのまま土地の持つ力の違いなのでしょう。下北半島,青森の土が生きることの悲しさとうれしさの強力な説得力になっています。
原作には無い「爪」を崩壊への鍵としたことは,ため息をつく位巧みな演出ですね。
すごい映画です。すごい,悲しい,美しい日本があったものです。
特撮テレビ・ヒーロー主題歌集
実はこのCDがリリースされたのはかなり前(15年位前?)なんですが、4年ほど前に同年代の知り合いに貸したまま帰ってきません…(泣)
それはともかく、昭和40~50年代に巻き起こった特撮ヒーローブーム。その数あるヒーロー番組の中から厳選されたヒーロー達のオープニングとエンディング曲が納められています。若干「ワイルド7」「白獅子仮面」「魔神ハンターミツルギ」など毛色の違うものに違和感を覚えたり(失礼)、人によっては収録して欲しいヒーローが抜けていたり…ということがあるかもしれません。しかし!まず昔の特撮ヒーロー物の音源をとりあえず求めているのであれば、このCD2枚組がベストチョイスだと思います!最近よくある「テレビサイズ版」ではないので欲求不満に陥ることもないでしょう。
もしこのCDで物足りなくなったら、また別の特撮ヒーローの音源を収録したCDに手を伸ばす…そんな展開が理想だと思いますよ。