完全読本 さよなら小松左京
小松左京の死によって僕の中では、改めて昭和が終わった感じがする。
昭和の巨人の死だ。
雑誌にしても新聞記事にしても通り一遍の記事で、村上春樹がノーベル文学賞をとるかどうかという記事とは正反対な扱いだ。
手塚治虫が死んだ時に感じたように、社会が先駆者に与える冷たい仕打ちに、今回もがっかりさせられていたところだった。
手塚の追悼号の白眉には朝日ジャーナルの「手塚治虫の世界」や、宮崎駿氏の熱い追悼文、手塚治虫に『神の手』をみた時、ぼくは彼と訣別した」が掲載された『COMIC BOX』があった。
小松左京氏にもそんな本が出ないだろうか待っていた所、徳間書店からついに真打ち登場である。
この本は、小松氏への愛と尊敬が溢れている。
これから、小松作品(含む映画)に触れようという人にもとっておきの入門書となっている。
発見された新作原稿や未収録作品も素晴らしいが、
小説のみならず、映画の論評を集め、さらに70名近い人に追悼アンケートを行い、好きな作品を紹介している。
また、追悼対談や、寄稿も、小松氏の身近な人から3段組、所によって4段組で300ページという
尋常じゃない量を集めており、内容も本当に心のこもったものだ。(CDは未聴、これから、ゆっくりと楽しみたい)
そしてなにより、1967年SFマガジンに載った小松氏の「”日本のSF”をめぐってミスターXへの公開状」、はじめて読んだ文章だが、
朝日新聞の匿名記事におけるSF批判に対する反論記事だが、この火の塊のような情熱はすごいと思う。
手塚や、小松等の第一世代のSF作家らは、道なき所に道を作り、まさに寝食を忘れて、SFや漫画という表現に打ち込んだだけに、
尋常じゃない情熱が溢れている。
とにかく手にとって、読んでいると一緒に熱くなってくる本で、こんな本を待っていたんだ、と語る自分がいた。
いまや、マンガやアニメは日本を代表する「文化コンテンツ」で上手に利用するとどれだけでも金を生み出す打ち出の小槌だそうで、政治家も省庁も国をあげて積極的に支援をしていきたいそうである。
僕らは、子供心に、親や新聞がマンガの事を低俗な分化として糾弾していた時のことを思い出す。
手塚の漫画が低俗で悪質だと聞いた時の理不尽な糾弾に対する怒り。
SFがくだらないものと蔑まれ、世界文学や日本文学と称する作品名や作家の名前を上げ、それと較べていかに低劣で、くだらない読み物にSFが属するのかを諭す教育者や親たちの無理解。
だからこそ、僕達は、漫画を応援し、同様に低俗な読み物であるSFを愛したのではなかったのか。
日本のマンガやアニメには必ずといっていいほどSF的なフレーバーが加えられている。
戦後漫画の無意識を生み出したのが手塚治虫であるのならば、
クールジャパンの無意識を生み出したのは、小松氏等のSF作家たちではなかったのか。
3.11後の現在だからこそ、小松氏やその他の先駆者に追悼の意を表し、作品を読み返し、未来を見据えて、やれば出来るんだという気持ちを心に据えて、力強く進みたいと思う。
この本は手に入れたその日から「僕の宝」なりました。
日本沈没 [DVD]
映画の内容は上記のとおり。映画としての面白さやとっつきやすさではハリウッドの洗練された明るい(?)パニック映画に一歩譲るかもしれないが、パニックシーンの量、重~い絶望感等、「パニック度」では断然こちらが上回っていると思う。そんなすごいパニックシーンを今回のDVD化ではオリジナルのモノラル音源に加え5.1ch2003Remixバージョンによって再現されている。何年も前に発売されたビデオに比べサウンドが大幅に強化されていて家庭で見るにしてはほぼ満足の迫力。さらにオーディオコメンタリーまで収録されていてる。メイキングが無くてちょっと残念と思ったが、このコメンタリーでそれぞれのシーンのメイキング秘話が語られている。映像特典は特報、予告編、そして小松左京氏と映画にも出ていた竹内氏の対談が収録されている。劇場版「日本沈没」をじっくり満喫できる納得のDVD化だ。
日本沈没 下 (小学館文庫 こ 11-2)
「日本沈没」は地震の阿鼻叫喚を描いた単なるパニック小説ではない。
そのかわり前半部には科学的な解説がたくさんあるし、政治やら社会やら、はては日本人論まで繰り出されるから、
こちらは脳みそが沸騰しそうになる。
エンターテインメント小説として読むと、あまりの歯ごたえに面食らうのだ。
これはSFなのか?現実の記録なのか? 震災の後で読むとわからなくなってくる。
復活の日 (ハルキ文庫)
生物化学兵器として開発された驚異の感染力と殺傷力を持つMM菌が、偶発事故により世界中に蔓延。世界中の人々が一人、また一人と倒れていく。
そして、唯一生き残ったほんの一握りの人類に新たな厄災の牙が・・・・。
小松小説の特徴は、情報・謀略小説かくやの綿密な状況設定と、それ以上に戦禍を経験した著者の重厚な人間愛にあります。SFが苦手な人にもお勧めできます。
「所詮SF」とタカをくくって読むと、あまりの「重さ」に驚くと思います。それでいてラストは「あっ!」と驚くものだから、まさにエンターテイメントに徹した傑作。「ひたすら感動したい」という方はぜひご一読を。ただし、映画の方はちょっとなあ。
【東宝特撮Blu-rayセレクション】 日本沈没
小学校の時、地元にあった小さな映画館で見たときの衝撃は今でも忘れられません。特に東京が大地震に襲われた場面の高層ビルからガラスが降ってきて血を流しながら逃げ惑う人々、丹波哲郎演じる首相の皇居内に都民を避難させるシーン等々…、D計画の発動などは大人になってからソフト化されたものを見て人間ドラマとしてもすばらしい物だったんだと思いました。
今回のブルーレイ化によってより美しい画面になった日本沈没はチェックです。個人的には平成版より昭和版の本作の方が好きです。