五十嵐大介画集・海獣とタマシイ (原画集・イラストブック)
「海獣の子供」完結と共に、五十嵐大介氏、待望の第一画集の刊行です。
内容的にはほとんど期待通りのものだったのですが、やはり痛いのは値段が高いということ。五十嵐さんの漫画を読んでいるのは、何も独身貴族だけではない。進学前の子供を抱えてヒーコラ言っているオトーサンだっていることを考慮してほしい。自分も決死の覚悟(苦笑)で買ったわけだが、今の書店は、ビニールで封がされていて本の中身も確認できない訳だから、これだけのお金を出して買うべきものかどうかいまだに迷っている人だって多くいると思う。そんな訳で、本レビューではできるだけ具体的に掲載内容について書きたいと思います。
ボックス封入という形で、2冊に分かれています。
1冊目は「画集」。今まで五十嵐氏が描かれてきた漫画の表紙画を中心に編集されています。
個人的に嬉しかったのは、一番最初に刊行された時の「はなしっぱなし」(講談社版)の表紙画の数々がずらり掲載されているという点。今まではネットオークションなどで、小さな画像でしか見れなかった表紙イラストを、細部に亘って見ることができます。表紙以外にも、ソデや目次用にカラーイラストを結構描いていて、「はなしっぱなし」関連だけで20葉以上を収録。初見のものも結構ありました。
あとは、「そらトビたましい」「リトルフォレスト」「カボチャの冒険」「魔女」「海獣の子供」「猴 SARU」・・・といった表紙画や関連イラスト、漫画のカラーページが掲載され、その後は池上永一氏や木地雅映子さんの小説の表紙画、といった形で、公式に発表されているイラストの主だったものは網羅されています。
あまり知られていないものでは、イメージフォーラムの募集用チラシや、埼玉新聞の広報用?のイラストといったものが数葉。ペン画もいくつか掲載されていて、巻末は岩手や西表島の風景などのスケッチや習作が数点。
不満はないものの、全体的には意外性がないという印象も否めなく、仕事以外で五十嵐氏が描いたスケッチやイラストなどをもっと掲載してほしかった。「あっ、こんな画も描くんだ」「やっぱりこんな画を描いてるな」といった発見がもっとあるような編集にしてほしかった、という気持ちも残ります。
例えば、川崎市民ミュージアムで「スイスコミック・アート展」を開催した時に出品した、「時間」をテーマにした作品。これは本画集には掲載されていません。まだまだ未発掘のお宝作品はいくらでもあるはずなので、その辺り、もう一押しが欲しかったですね。
2冊目は「読み物」と銘打っていますが、早い話が、今まで雑誌などで行ってきた対談を中心にした編集です。松本大洋、荒川弘、羽海野チカ、茂木健一郎、中沢新一、石川直樹、伊坂幸太郎といった面々。これは五十嵐チェッカーにとっては、すでに読んできた記事が大多数で、これはないだろうという内容です。過去の対談記事からカットされたアウトテイク集ならいざしらず、この記事のほとんどは持ってるよ、というファンにとっては、これほど無駄な内容はなく、さらにこうした企画ならわざわざ画集でやらなくても特別編集のムック本で充分じゃないか、と思わざるを得ません。ここでコストが無駄にかかっているなら、対談記事はなくてもいいから、もっと価格を下げてほしいというのが正直な感想です。
いきなり厳しい意見から入ってしまったので、他の部分をフォローすると(笑)、対談記事以外に、短編漫画やネーム、イメージスケッチといったものも掲載されていて、こちらは嬉しい内容です。
まず漫画は、カラー描き下ろしの6ページ作品『いってらっしゃい』。ちょっとフシギな内容でした(笑)。
個人的に凄く嬉しかったのは、「はなしっぱなし」の一篇『華と豺(やまいぬ)』のフルカラー収録!この作品はどうしてもカラーで見たかったので感激です。思っていたよりも渋い色調でしたが、これは「ありがとうございます!」という感じ。
今まで単行本に掲載されていない短編漫画では、「リトル・フォレスト」の最終話をイメージして描いたと、どこかで五十嵐氏が語っていた『ダンコンダラスコ』。あと、これまた個人的に大好きな『よかったね雨男』が、なぜか掲載されていて再び感動。そして、山神に女性が孕まされる、エロティックな『魚』。五十嵐氏は、初期の頃はエロティックな要素がある作品も描いていましたが、最近はなりを潜めているな〜、と思っていたのですが、意外な作品を描かれていました。これは嬉しい発見です。また、石川直樹氏と「ユリイカ」で対談した時に同時掲載された『河を渡る』。五十嵐氏らしい、生き物たちの世界をミニマムな目線で描いた小品。これもけっこう好きな作品です。
そして、「海獣の子供」のジムのスピンオフ短編『ある旅人のはなし』。初出は雑誌「BRUTUS」で、「海獣の子供」最終巻のラストにも白黒掲載されていますが、ここではフルカラー掲載。扉画の参考にした写真も載っています。
そして、『うたぬすびと』のネームをノーカット掲載!自分が「魔女」を初めて読んだ時に、強烈なインパクトを受けた作品なので、これまた感動です。
他には、五十嵐氏が岩手で暮らしていた農家や、近所の山や田んぼの風景写真。過去の作品のアイディア・スケッチ。広告用や店頭POPのイラスト・・・といった感じです。
対談記事に関して言えば、伊坂幸太郎氏との対談は今年5月に行われたもので、これだけは本書初出の記事のようです。五十嵐氏の次回作についての話などもほのめかしていたりするので、興味深い点もあります。
以前、女優の真木よう子さんと五十嵐氏が対談した時に、「海獣の子供」の琉花のモデルは相武紗季だという話をしていて、資料用という建前で結構アイドルの写真集を買っていたりする、という話をしていて、これは他の対談やインタビューでは聞いた事がない意外なエピソードだったので、むしろそうした対談を掲載したほうが面白かったのではないだろうか、とも思ったりしたものです。
「期待通り」というのは、一方で「意外性がない」とも言え、こうした画集の企画では、「意外な発見」というものも価値を高める要素になる、と自分は思っているので、そうした発想も大事にしていってほしいと感じました。
五十嵐ファンをできるだけ喜ばせようと考えて制作されているのは良くわかります。しかし、上記のように、わざわざ画集に入れ込まなくてもいいようなものを入れたために価格が高くなってしまったとしたら、それは本末転倒ともいえます。どんなに高くても、2千円台に収めてほしい、というのが消費者の心理ではないでしょうか。このデフレの時代に3,800円はちょっとキツいし、これは相当の豪華本の価格だと思います。
という事で長文になってしまいましたが、本書を買うべきかどうか迷っている方々の参考にして頂ければ幸いと思い、レビューを書いた次第であります。
はなしっぱなし 上 (九龍COMICS)
初連載作品とあって処女短編集『そらトびタマシイ』と直結した
エネルギーがあります。著者は『リトル・フォレスト』なども含め
八百万の精霊たち、自然への信仰や畏怖をその主題の通奏低音に据えて
いると思いますが、この連作短編にはそれが特に顕著に出ていると思います。
文明により洗練された現代社会の住宅街、路地裏、
その全てのコンクリートの下には、それでもやはり土があるということを
つい僕らが忘れがちな、けれども決して忘れてはならない大切なものを
教えてくれる。
この上巻の中では、特に僕は『ハルノサキブレ』、『虹を織る声』、
『こんな冷え込んだ日には空を見ながら歩かないほうがいい』、
『博物館で月見』、『裏ねこ』、『雲と霧の戦い』に感銘を受けました。
海獣の子供 5 (IKKI COMIX)
五十嵐大介さんの『海獣の子供』と出逢ってから、一体いくつの夏が通り過ぎて行っただろうか(笑)。
やっと完結です。
一人の少女、琉花の、ひと夏の物語。ジュゴンに育てられたという、二人の不思議な少年との出逢い。水族館で、光に包まれ次々と消えてゆく海洋生物たち・・・それは壮大な「本番」に向けてのリハーサルだった。鍵を握る「隕石」を託された琉花が、海底の洞窟で遭遇したものは・・・。
最初に『海獣の子供』を読んだ時、これは五十嵐大介さんが今まで『魔女』といった作品で描いてきたテーマの集大成に違いない、と思っていた。
五十嵐さんは、インタビューの中でよく、科学や知識に引っ張られすぎると、想像力をはたらかせるすきまがなくなってしまうから、最新科学などの知識はあまり調べすぎないようにしている、と言っているが、その一方で、『海獣の子供』の中で神話や伝説を介して描かれているものは、ここ数年の間、科学的に実証されてきた。例えば生命海洋発生説なども、隕石が海面に激突したときの衝撃で、生命の元になるものが生成されたことが実験で証明されたりして、実はこの漫画は生命の誕生の秘密に肉薄する凄い作品になるのではないだろうか、とドキドキしていた。
そして、最終巻・・・その期待は、いい意味で外された(笑)。そこに描かれていたのは、五十嵐的神話世界というか、壮大なファンタジーだった。あっ、と思わされたのだ。五十嵐さんの漫画は、そもそも科学漫画なんかじゃないだろう、と。いつの間にか、理にかなった物語展開を期待していた自分の頭をペシリと叩いてしまった。
「波や風の語るコトバはシンプルなのに、皆考えすぎてんのさ。大切な事は、言葉なんかにしないほうがいい」
物語の深奥には、生命の神秘に肉薄するテーマが間違いなくあると思う。でもそれは、リクツで理解するのではなく、この漫画を観て感じればいい。
「五感で感じる漫画を描きたい」とよくインタビューで語っている五十嵐さん。本・最終巻は、まさにその言葉を表すかのように、ひたすら「絵」の力で見せていく。ページをめくってもめくっても、ひたすら海洋生物の群れ、群れ、群れ!ネイチャードキュメンタリーを観ているかのような、その生命の躍動感に、圧倒される。
そして、その先に待ち受ける「本番」とは・・・!?
連載の間に、『猴 SARU』の描き下ろしを挟んで一時休載。第4巻からの長かったこと!さらに連載終了からこの第5巻発売まで実に1年近くも待たされました(笑)。しかしその間、五十嵐さんは来る日も来る日も、この大幅加筆分のクジラやイルカや、海亀やエイやアザラシたちを描き続けていたのか・・・そう考えると、何だか気が遠くなってしまう。しかし、この最終巻は時間をかけているだけあって、今までのどの巻よりも描き込みと情熱はハンパないです。近所の書店で購入したのだが、本書だけはビニールがかかっていなかった。書店員さんも、「とにかく見てくれ!」と言いたかったのではないだろうか。
実はちょっと心配だったのだ。この作品が終わったら、五十嵐さんは表現したいことを全て吐き出してしまって、もう漫画を描かなくなってしまうのではないだろうか、と。
取り越し苦労でした。
読者としての「長い長い長い海獣の夏」が、やっと終わりました。
そして、次回作が待ち遠しいです。
「桜蘭高校ホスト部」Blu-ray BOX
少女漫画原作なのですが、男が見ても面白いです。
優秀なんだけどどこかズレてる貧乏少女と、金持ちなんだけど嫌味もなく憎めない
ホスト部の面々との掛け合いは見ていて面白かったです。
基本コメディータッチでシリアスや恋愛要素なども味付けとして入っています。
ドロドロした部分はありません。なので、ストレスフリーで見れる点は良かったです。
商品ですが、基本的にパッケージは簡素で特典もなく見れれば良い人向けです。
ps3や国内のBDプレヤーで問題なくみれると思います。
画質云々は良くわかりませんが綺麗だと思います。
ただ、どうもフルスクリーンでは無く画面が切れます。
TOY
ランプシェードなどで垣間見れる『サカノウエヨースケらしさ』が
良く出ているアルバムです。
ちょっと古めのテイストが良いですね。
歌い方は決して上手くないのですが、
サッカンが書く素直な詩に共感できる方も多いのではないでしょうか。
トータルプロデューサーは浅倉大介さんですが、
クレジットを見ると他にも色々と見覚えのある名前が…(笑)。