花嫁吸血魔 [DVD]
池内淳子が怪物まで演じさせられたというが、怪物の動きがどう見ても男の動作にみえるんだが・・・。それでも池内淳子にとっては屈辱の作品。後にフィルムを買い取って葬り去ったらしいが、別のところにあったフィルムでDVD化。池内にとってはなんともイヤなことでありますが、わたしのようなゲテもの好きにはうれしい商品化。
ところで、こういうホラー映画を撮って、映画界を去った並木鏡太郎監督は鞍馬天狗の監督としての評価されるらしいが、そんな職人監督の撮った「樋口一葉」にはびっくり。貧乏にくるしみながら、人として恥ずかしくない生き方をする映画のなかの登場人物の振る舞いに一点の曇りがなく、性格の卑しいところがまったくない。貧乏生活のなかでお天道様の下をまともに歩けない行動をしてはいけないと普通なら説教臭いことになりそうだが、俳優たちの演技や並木監督の演出によって素直に伝わってくる。演技と演出が品の良い映画と「花嫁吸血魔」が同じ監督で作られたとはすごい。「樋口一葉」もDVD化されて欲しいものだ。
にごりえ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)
同じシリーズの「たけくらべ」と共に購入しました。訳文はこちらの方が現代的で読みやすいという印象です(その辺りは個人の好みだと思います)。現代語訳は本当に読みやすくてあり難い。自分としては、訳者の後書きもこちらの方がよいです、一葉を更に読みたくなります。
それにしても、これだけ様々な立場の人間の心を描くことができる一葉の技量というのは、本当にすごい。一葉の作品は写実文学ですから、「にごりえ」を始め、悲しい話が多いですが、現代人も共感できる人間の心の不可思議さを描き出してくれていて、非常に惹きつけられます。
日本が誇る天才女流作家の名作、若い女性に特に読んでいただきたいと思います。
たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)
独特の文体・表現は残しつつも読みやすく現代語訳されている感じがしました。
内容を理解しやすくするにはもっと砕けた方がいいんでしょうが、そこは原文の雰囲気を残すために
あえてそうしなかったんだろうと思います。
ガッツリ読むスタイルが苦手な自分でもすっきりと読み終えることができ、内容も理解しやすかったです。
とりあえず樋口一葉の作品を読んでみたいという人にはおすすめの一冊です。
みだれ髪 (新潮文庫)
なんと贅沢な文庫本だろう。
一ページあたり四首の配列と、ほどよい活字の大きさが、文庫本とは思えぬほど絶妙な結構をもたらしている。
藤島武二の挿絵も素晴らしい。六章からなる歌集に続き「訳と鑑賞」、「評伝」、そして田辺聖子の解説「年々の愛読書」まで載っている。
○春みじかし何に不滅の命ぞと
ちからある乳を手にさぐらせぬ
これが明治34年の歌である。
○金色のちひさき鳥のかたちして
銀杏ちるなり夕日の岡に
子供のころから大好きだった一首。
頭痛 肩こり 樋口一葉
タイトルが見事です。記憶に残りますし、この物語を言いあらわしているように思います。登場人物は女性だけで、彼女たちの会話を通して、一葉の周辺を描いています。それが、井上ひさしさんの一葉への思いなのでしょう。樋口一葉、その人が身近に感じられる作品でした。