時代/最後の女神
この時期中島が描く愛は“見返り無用の愛”。かつての愛を求める女性の“TAKE”する愛の姿ではない。例えば「MEGAMI」にも表れるように、“GIVE”する愛だ。大らかな母性というものを彼女はしっかり見つめている。
詞では地球最後のロケットが自分独りを残してしまう孤独、とある。その恐怖の闇の底に一筋の希望を差し伸べる世界を描く彼女。それが意味するのは何か。
“いちばん最後に見た夢だけを 人は覚えているのだろう”
“幼い日に見た夢を 思い出してみないか”
この囁きから曲は始まる。ここはまるで女神が主人公に夢の中で語りかけるようだ。主人公は何かの覚醒を促されている。胎盤の中の世界に近い、無意識的な世界観だ。何処となくこの夢の様子は「萩野原」を思いださせる。
次の段落の“あぁ”とその次の段落の“あぁ”はあえて段落の高さを変えている。思うに最初の“あぁ”でみた世界こそ夢。そして次の“あぁ”で始まるのは覚醒した主人公が、あれは女神だった、と気付く“あぁ”ではないか。その女神こそ、“母親”なのだと思う。自分にとって仮に世界全部が敵に廻っても、最後の最後まで子供の味方になってくれるのは、母親なのだ。
“心は変る 誰もが変る”“変わりゆけ 変わりゆけ もっと好きになれ”
これは、彼女の曲「誕生」にリンクしてゆく輪廻的な世界観なのだろうか。
作曲家で故人''田三郎曰く、人はみな等しく愛をもって生まれてくるのだという。決して憎しみをではなく。
そう思うと、この曲の「愛」が出生とつながってゆくイメージもわいてくる。
主人公はここで受けた愛を、同じように次の世代に注ぎ、継いでゆくことなのかと。
これから先、この曲から伝わるイメージは人生経験の中で得られてゆくのだと思う。彼女の曲はいつだって人生のそばにある曲たちだからだ。