浮浪雲 [DVD]
主題歌、吉田日出子の「いとしのファニー」「夢色ララバイ」につられて購入しました。
1990年ごろの深夜テレビで放映されたものを見たのが最初でありますが、当時は女性と初めて交際を始めた頃でありまして、その頃の強烈な想い出が、主題歌から蘇ります。
深夜、悶々と「いとしのファニー」をラジカセで聞いていた、さえない独身男は、浮浪雲のように飄々と生きる姿に憧れたものであります。
特に女性関係においては、浮浪雲の旦那が理想でしたね〜
わたくしのばやい、結局、その女性と結婚して現在に至るわけでありますが・・(汗)
作品自体は、無難におさまっています。
原作はビッグコミックオリジナルの、長期連載作品ですから、読まれた方も多いでしょうし、その作品を読んでいた頃のそれぞれの記憶がオーバーラップする方も結構おられるのでは?
追憶の引き金として、所有する価値のある作品でありました。
本作品で、青春時代の感傷に浸りながら、渡哲也版の「浮浪雲」が発売される今年夏まで待ちたいと思います。
個人的感傷に終始したレビューで失礼しました(ぺこぺこ)
はだしのゲン [DVD]
小学生の時、たまたまこの映画をTVで途中から見て非常にショッキングであったのだが、最後まで見終えて非常に感動した記憶は今でも忘れられない。
長い間、原作を読むことを忌避していたが、このアニメを見たことで原作の方を読むことにもすんなり入っていけた。
中学や高校の頃、学校でイジメにあったりして自殺を考えるほど苦しい時期があったが、苦しい時は必ず原作や映画を見て「生き抜いてやろう」と力強い励ましをもらったものだ。
僕にとっては「反戦反核映画」というより、もっとそれ以上の、人生を生き抜くための力強く大きな示唆に富んだ、心の拠りどころのような作品なのだ。
はだしのゲンを半ば強制的に学校などで見せられた経験を持つ人は、「トラウマ」として受け止めて作品をきちんと評価できない方も多くいらっしゃると思う。
幸い、僕の場合はそのような経緯が全くなかった。ゆえに作品との「幸せな出会い方」が出来たように思える。
原爆の炸裂直後、熱線と爆風によって人々が一瞬で炭化して果てるシーンなど、確かに生理的に受けつけられない描写がリアルに為されていると思う。
しかしこの映画で描かれたことは実際に起こったことで何一つ誇張など無い。爆風によって眼球が飛び出した被爆者についての記述などは他の文献でも多く証言されている。
だからこの作品に対し「グロテスクな表現」と看做すのは誤りである。
表現がグロテスクなのではない。
それがヒロシマの真実であったのだ。
それが人間が行った所業の全てであったのだ。
この作品、美術監督は男鹿和雄であり、後にジプリ作品の多くで美術を担当することになるのだが、彼の才能が遺憾なく発揮されている。
被爆描写は勿論のこと、被爆前の広島の光景、町並みや家屋、自然の描き方、背景の絵の美しさが素晴らしい。
また音楽担当の羽田健太郎もシーンのカタルシスを高める非常に素晴らしいものがある。
脚本では原作者の中沢啓治が担当しているが、原作に多くありがちな政治的言動をほぼ完全に排し、庶民の生活描写に重点を置いた「さりげなく何気ない」台詞を適切な量で適切な場面に配置している。原作に多くある冗長で説明的な台詞は全くと言って良いほど無く、映画的な「沈黙や静寂の間」が意識的に盛り込まれている。
エピソードを多く配置した原作のボリュームはここには無い。
しかし非常に静謐、叙情的で、視聴者のカタルシスが得られやすい良質なドラマ性が大きく膨らんだアニメ化となったと言えるだろう。
最後に。
この映画に対して「R指定にすべき」だとか言ってる人々がいるが、全く無意味である。
また、学校の授業なんかで子供に見せる必要など全く無い。
興味を持った子供たちは、自然と自ずからこの映画を見ようとするだろう。
そしてそのような子供たちの心に一生忘れられないようなものを必ず残す。
それだけの力を持ったアニメだと思う。
ジロがゆく完全版 1 (宙コミック文庫 漢文庫シリーズ)
初版本を読んだ時24歳だった。真崎守の繊細で清らかな世界に引き込まれた。あれから約40年後の私の元に、初版本は共にある。
文庫本として存在しているのが嬉しい。この漫画は、心の試金石だ。しかし、完全版2もP.150 ページまでは初版本とほぼ同じだが、それ以降のページは後に加筆されたものである事をお断りしておく。その部分には、触れたくない。
はだしのゲン 2 [DVD]
原爆投下から後のシーンは、マンガ原作にも比肩する惨たらしさで、小さい子が見たら、ちょっとトラウマになってしまう感じがしましたが、人間ドラマの方は、時間の制約もあるのでしょうが、残念ながら原作と同様に充分描ききれていたとは思えませんでした。主人公の父親を何かと非国民扱いして、ゲンに助けてもらいながら、ゲンの家族を見殺しにする町内会長親子の存在など、戦争の残酷さと同様に、人間性の嫌らしさを思う存分見せてくれた彼らが登場しないので、家族愛と、逆境にも逞しく生きるゲンの姿だけでは、『はだしのゲン』の凄さは、半分といったところかもしれませんが、原爆の悲惨さに特化すれば、きちんとメッセージは伝わっていると思いました。ゲンの声をあてた宮崎一成氏の変声期前?の声が、今現在、演じられているような繊細な少年タイプのキャラクターからは、想像できない意外性を感じました。