Stand In The World
日本のヘヴィロックバンド、ヘッドフォンズ・プレジデントの2012年作
2003年のデビュー作から、女性ヴォーカル、ANZAの情念の籠もった歌声で
ヘヴィかつ情感的な個性豊かなサウンドを表現してきたこのバンド。
前作は過去の楽曲を新アレンジした民俗調の異色の企画アルバムであったが、
本作では本来のヘヴィ路線に戻りつつも、サイケな浮遊感を巧みに融合させている。
ヘヴィなギターリフとグルーブのあるうねりを聴かせるリズムの上に、スクリームを含めたアグレッシブ性と
コケティッシュな表現力か同居したANZAの歌声が響きわたり、そのサウンドの堂々たる説得力たるや
すでに日本のバンドにとどまらない世界レベルのものだ。すべての面でスケールアップした力作である。
プローディギウム
Anza(vo) Hiro(g) Mar(g) Narumi(b) Batch(dr)
女性ヴォーカルを擁する日本産ヘヴィロック・バンド、2009年発売ミニ・アルバム。といっても8曲入りで30分少々と、ボリュームは結構ある。
まず耳を引くのは、メタル分が大幅に増強されていることだろう。これまでなかったタイプの、いかにもなスラッシュ・リフや疾走パートなど、新境地を開拓した感がある。
Anza嬢の、儚げな歌唱から狂気じみた絶叫まで表現力豊かなヴォーカル。また楽曲自体も静寂パートと轟音パートの対比がより明確になっており、空間と緩急を自在に操っている。
束縛・怒り・慟哭・絶望・怨念・そして祈り。洗練された楽曲群でありながら、そうした生々しい感情が渦巻く、激しくも美しい作品。
DELIRIUM [DVD]
HEAD PHONES PRESIDENTの3枚目のDVD。
ツインギターチームの弟、Marが脱退して初の音源/映像作品でもある。
しかしリリースにこぎつけるまで様々なトラブルに見舞われ、
お蔵入りする寸前の状態からなんとか世に出すことができる作品になった。
トラブルとは本編となるDisc2をご覧になっていただければすぐにでもわかると思うが、サウンド面。
一言で言えば音が録れてなかったのだ。
そこでエア(空間)の音を拾ったものが採用されたのだが、これが実に生々しい音になっている。
最近のライヴ音源と言うと臨場感を削いでしまうほどにクリーンでクリアなものが主流のような気がするが
この作品は良くも悪くも臨場感はたっぷり。
しかしこのラフ過ぎるほどの音像はバンドの攻撃性をスポイルすることなく、
美しくも荒々しい映像とともに新しい体制になったHPPの姿を描ききっている。
そして肝心のバンドのパフォーマンスだが、メンバー全員がMarが抜けた穴を補完するべく一致団結、
アレンジや見せ方を数カ月の間、試行錯誤しながらも変化させた結果、
ギター一本いなくなったことを感じさせないような・・・
というよりむしろ既に5人時代のバンドよりソリッドになるまでのレベルに至ったと思う。
特にNarumi(ベース)とBatch(ドラム)のリズム隊の貢献が著しく、
ともすれば薄っぺらくなりかねないボトムを重厚感たっぷりに支え、時には前に出てメロディを奏でる部分も。
そんなリズム隊に支えられてHiroのギターは自由奔放に泳ぎ回り、
HPPの世界そのものであるAnzaは狂気の狭間に神々しさすら纏い空間を支配していく・・・。
スタジオライヴを収めたDisc1も生々しいながらも音質は良好。
普段着でリラックスした感じから始まるInside、Crumbledはアコースティックヴァージョン。
(アコースティック・アルバムPobl Lliwに未収録のCrumbledは、昨年行われたアコースティックライヴに来られなかった人のために収録されたそう)
カジュアルなスタイルのままの彼らを見るのはなかなか興味深い・・・などと思うのもつかの間、
曲を追うごとに「いつもの彼ら」になっていく様子が克明に刻まれていて、
特にLie Waste〜Folie A Deuxの鬼気迫る様はとても安穏として見ていられるようなレベルのものではない・・・。
フランスのJAPAN EXPO SUDでの模様はオフショット的なものとして楽しめると同時に
かの地でいかに彼らのライヴが好評を博したかも映し出している。
メンバーの脱退、録音トラブルなど様々な障害に見舞われながらも
結果としてアイディア次第で十分過ぎるクオリティまで持っていくことができるという、HEAD PHONES PRESIDENTというバンドの底力を示す作品になった。
PARALYSED BOX/LIVE at CLUB CITTA’ [DVD]
収録曲情報が違う。これは1st albumのVary(2003)収録曲だ。
正しくは以下の通り。
Paralysed Box(2008)
01.n0ise
02.Hang Veil
interview A
off shot in Sweden & Los Angeles
03.Chain
04.Cray Life
interview B
off shot in Beijing
05.Sacrificed
interview C
off shot in Australia
06.Labyrinth
interview D
off shot in Taiwan
07.non title
08.I will Stay
"Chain-acoustic version"PV
total:72min.
2008年7月13日(日)にクラブチッタ川崎で開催された、
「ADDICT XX」でトリをつとめたときの映像である。
"non title"は、後に"Sixoneight"として登場することになる曲。
この日が初演だった。オーストラリア滞在中に書かれたという。
当日はもっと演奏されていたが、色々と事情があったのだろう。
曲目を削った分、インタビューや海外公演のオフショット、
そして"Chain-acoustic version-"のPVが収録されている。
全体の7割がライヴ、その他が3割、といった時間配分である。
肝心の内容だが、HPPの「狂った」「美しい」パフォーマンスが堪能できる。
合間に「その他」映像が入ってライヴが途切れてしまうのが、惜しい。
(ただ、ビデオ時代と違ってスキップすればいいだけのことではある)
CD以上に音が良く、彼らが鳴らしたい音の「重さ」が如何ほどのものか、
そして曲の「つなぎ」に止まらないセッションがどれほど表現力豊かか、
いや、何より、曲に同化して激しくも繊細なパフォーマンスを展開する、
HPPという特異なヘヴィ・ロック・バンドの存在というものが、
このDVDを見れば、いやというほどわかるだろう。
なお、この時期はまだBatch(dr)は正式メンバーではなかったので、
ジャケにも登場せず、インタビューも別枠である。
Mar(g)が脱退した今となっては、「5人編成時代の貴重な映像」でもある。
CDやPVで興味を持ったという方や、
類型的なライヴ・パフォーマンスに飽きてきた方々に薦めたい。
Folie a deux
普通にヘヴィでカッコ良く、適度にドラマティック。ツボにはまる人なら好きになるでしょ、これは。リフや音作りがKORN直系だが、最近の彼らよりは「かつての」KORN的かも。ヴォーカルは正直線は細いが、芝居掛かった歌唱法はなかなか存在感がある。これ、普通に男怒声ヴォーカルだったらこんなに話題にならんでしょう。アンジェラ・ゴソウやOTEP嬢と比較するのは可哀想でしょ(笑)
ヴォーカルが麗しい女性だったり、某誌で取り上げられる事が多かったせいか、やたら批判的な意見も目に付きますが(メタラーの悪癖だね)、世界レベルどうこう言う前に「普通に」カッコ良いのは評価すべきかな。