仁淀川漁師秘伝―弥太さん自慢ばなし (BE‐PAL Books)
職漁師というと黒部や桧枝岐が頭に浮かぶが今はもういない。高知県仁淀川には今も川漁師として生活している宮崎弥太郎さんがいる。
黒部のように岩魚だけを対象にするのでもなく ありとあらゆる魚が漁の対象となっている。
素晴らしい技術、努力そして魚を育む綺麗な 渓流、森林。 こんな素晴らしい渓流が残っている事を誇りそして、他の渓流も元通りの昔の姿に戻って 貰いたい。
仁淀川
この小説の主人公は、なんとなく、ふわふわと生きており、生きるための気迫を感じ難かったように想います。
文句をいいながらも親に頼り、夫に頼り、姑に頼りと、自立した女性というよりも、いつまでも子どものような主人公には共感しかねます。
しかし、母親と娘と嫁との関係、母親と娘との想いはしっかりと伝わってきました。
実の娘には家の者さえ食べることのできない秘蔵の鶏卵を食べさせ、数年越しでも嫁入り道具をもたせたいという母親の姿は心打たれるシーンでした。
それをみた主人公が自分の母親の元へ走る場面は、嫁いだ娘と嫁との立場の違いをあらわしていて、とても印象に残ります。
流れるようなストーリーにひきこまれ、最後まで一気に読んでしまいました。ぜひ続きが読みたくなる一作です。
仁淀川 (新潮文庫)
一連の自伝小説(櫂、朱夏、など)を全部読んでいたのでこの本はそれこそ「待ちにまった」一冊でした。主人公綾子の、病弱でわがまま放題に育ったところ、それでいてあっけらかんと自分の非はみとめてしまうような損得勘定のできない性格が自分と似ているように思うこともあって、我がことのようになって一気に読みました。結婚して慣れない田舎ぐらしや戦争中満州で苦労したせいで実家のありがたみがわかるようになった綾子が、最後のお母さんが亡くなってしまうところは涙がとまりませんでした。文章が美しくて安心してひたれる世界です。宮尾作品をよんだことのない若い人にもぜひおすすめします。