熊出没注意―南木佳士自選短篇小説集
南木佳士さんの自選短篇集であり、南木ファンにとってはお馴染みの作品ばかりなのだろうが、「草すべり」しか読んだことがない自分にとっては新鮮だった。
普段、ミステリや冒険小説などを読むことが多いので、最初、物語としてのテンポの違いに戸惑った。
しかし、読んでいるうちに、じわじわと染みてくるような私小説の深さに触れ、夏目漱石や森鴎外などいわゆる古典的名作ばかり読んでいた学生時代を思い出した。
私小説が身に染みるのは、年をとった証拠だろうか。
阿弥陀堂だより 特別版 [DVD]
作家(寺尾聰)と女医(樋口可南子)の夫婦を中心に、
片田舎の日常を描く。
不要なまでの肩肘を張らず、
かといって癒しを前面に押し出す訳でもなく、
日本の俳優を知らない人にドキュメントと説明しても
大丈夫なのでは、と思うほど自然な作り。
だからこそ、見終わったあとに感動と清々しさが残る。
家族揃ってみるべき映画は、本当はこういうものなのだろう。
阿弥陀堂だより [VHS]
すごく美しい画面(1シーン1シーンが芸術写真、石仏も美しい)
美しい物語と画面とにぴったり合った心に沁み入るような音楽。
そして、何よりも、90歳を超えるという北林谷栄さんの存在感。
「お盆になると亡くなった人たちが阿弥陀堂にたくさんやって来ます。
迎え火を焚いてお迎えし、暗くなるまで話をします。
話しているうちに、自分がこの世の者なのか、
あの世の者なのか分からなくなります。
もう少し若かった頃はこんなことはなかったのです。
怖くはありません、
夢のようでこのまま醒めなければいいと思ったりします。」
などという言葉は美しくさえ感じられました。
すごく美しい画面(1シーン1シーンが芸術写真、石仏も美しい)
美しい物語と画面とにぴったり合った心に沁み入るような音楽。
そして、何よりも、90歳を超えるという北林谷栄さんの存在感。
「お盆になると亡くなった人たちが阿弥陀堂にたくさんやって来ます。
迎え火を焚いてお迎えし、暗くなるまで話をします。
話しているうちに、自分がこの世の者なのか、
あの世の者なのか分からなくなります。
もう少し若かった頃はこんなことはなかったのです。
怖くはありません、
夢のようでこのまま醒めなければいいと思ったりします。」
などという言葉は美しくさえ感じられました。
ダイヤモンドダスト (文春文庫)
高校の入学前課題で提示され、表題作を読んだもののすっかり記憶に薄かった為、改めて読み直してみた一冊。
表題作を含む4つの短編からなる作品。
作品を通し、一貫して描かれているのは、人間の生と死であり、著者自身が医者であるということもあってか、そうした経験や視点から、冷静かつ淡々と表現されている。
しかしながら、そこには人と人との繋がりや、自然と人間との調和が滲み出ており、作品に温かみが感じられた。
「冬への順応」の中での、「心臓や呼吸の停止は、ほとんどの場合、本質的な意味を持たない。死に価値があるとすれば、それを決めるのは、残された者の内に生まれる喪失感の深さの度合いだけなのではないか、とぼくは思っている。」
という部分が最も印象に残った。
個人的には、「ダイヤモンドダスト」と「冬への順応」が物凄く気に入った。