宮大工の人育て (祥伝社新書 104)
ものづくりのみならず、サービス業のかた、特にホワイトカラーの
ように、系統だっていない仕事が多いかたに読んでいただきたい本
です。
もちろん系統立てる工夫や考察は必要ですが、学校の教科書までは
系統立てることは難しい。だからこそ、OJTなどで首までどっぷり
浸かって、日々体で覚えてもらう。こうして、バラバラの情報を
こつこつと蓄積してもらい、気付いたら自らの中で系統立つことを
きちんと本書は伝えてくれます。先が見えないと、今行っている
仕事を主体的に考えにくいものですから。
なお、OJTでは最初に人の指図で動くことになります。その際は、
雑用ではなく、仕事の大枠を学んでいる意識がほしいですね。
大枠とは、段取りと、ツールなどの名前・用途・使い方です。
また、指図する側になってからは、ミスが発生したら指図から
省みることを自戒として記しておきます。同じミスをしないように、
そして、安易に人のせいにしないように。
日々行う努力は誰かが見ていること、そして、日々行い力を蓄えて
信頼を得ること仕事が巡ってくる。
このように「運は努力の総量に比例する」ことを、いつの日か
体感したいものです。
宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み (日経ビジネス人文庫 オレンジ に 2-1)
本書は2部構成となっており、第1部は日経新聞の私の履歴書に書かれた、西岡氏の半生、
第2部は生前に西岡氏と関係のあった弟子、職人、学者、息子などが西岡氏について語っています。
第1部では、西岡氏の人柄や祖父の代から引き継いできた大工としての想いが描かれています。
大工になる前に祖父の命で工業学校ではなく、農業学校へ生かされ、土を知り、木を学んだこと、
そして、農業学校を卒業した後に、1年間の期限付きで農業をさせられたことなども書かれており、
その際に他の農家と比べて自分の収穫が少ないことを祖父から
「おまえは稲を作りながら、稲と話し合いせずに本と話し合いをしていた。」と指摘されたエピソード
などもあり、改めて仕事の本質はどんなことでも変わりがないことを思い知らされた気がしました。
また、大工としてのこだわりにも驚かされます。
飛鳥時代の大工が使用していた工具の復活や、300年、500年ではなく1000年先も立派に建ち続ける
ものを作りたいと大学の教授と論争したりなど非常に高いプロ意識がうかがわれます。
その一方で、人の育成や、人を立てる術を知っており、またそれを実践する西岡氏の魅力的な人柄
も感じられる内容です。
第2部も弟子や職人の方など素朴でありながらも、しみじみと語られる西岡氏の話の中には非常に
深い味わいがあると感じます。
木のいのち木のこころ―天・地・人 (新潮文庫)
法隆寺最後の宮大工西岡常一とその弟子小川三夫、そしてそのお弟子さんたちのことばを伝えたのが本書。
えてして説教臭くなるところをぐっと抑えて、若い人たちへのメッセージにしたところが好感が持てると思います。
単なる技術論ではなく、長い経験に裏打ちされた職人論・自然論・教育論になっていると思います。
〈COLEZO!〉沖縄島唄 バラード・コレクション
1~5曲目と11曲目が普久原恒勇作曲。7がその父普久原朝喜の有名な曲で、残りは沖縄民謡3曲、八重山民謡3曲。本当に普久原恒勇のメロディーって美しい。個人的には特に玉城一美の「御縁花」と伊波智恵子の「歌や歌」はそれぞれの可憐な声と相まってとても好きです。ウチナーポップから深い民謡の世界へと入ってゆく橋渡しになる一枚になるのでは?(少なくとも私にとっては)。
忘れられた日本人 (岩波文庫)
無名の人たちに光をあてたすばらしい作品集
歩いて集めた語り部たちの話
それにしても江戸末期や明治期とは、平民の暮らしはおもったよりもおおらかであっけらかんとしていたのだなあとおもった。
飢饉や一揆といった農民の苦労話がないのがむしろふしぎなくらいだ。