春の雪(英文版)- Spring Snow (タトルクラシックス )
主人公、清顕について個人的にはちょっと笑ってしまいます。
女性に惚れ込む、惚れ抜いた理由や状況が非常に三島らしく、
そんな状況からしか愛は生まれないのかと…
清顕が嫌う竹刀を汗臭く振りまわしている学生…
聡子より三島のタイプはおそらくそちらでしょう。
清顕は三島自身が女性を死ぬほど愛してしまうとしたら?
を想像し、描かれた人生パターンのように思いました。
美しい文章・世界観にはうっとり。
第二巻『奔馬』を読む為のウォーミングアップ本かと思います。
潮騒 (新潮文庫)
三島の小説は、文章が美しいのはもう当たり前だとして、やっぱりもっとグロさが欲しい。だけど、三島由紀夫ってこんなこともできるんだって、彼の天才ぶりを再確認させられる普通に面白い小説。
金閣寺 (新潮文庫)
どうしてここまで、と思えるほどに精緻で凝らされた言葉。一つ一つのエピソードは短く多彩で、
それぞれが思考的、時間的、美的に掘り下げられ、飾られています。そしてそれが一つの結末に向かって連なって行く……。
特に金閣の鳳凰の描写が凄い。鳳凰が時間を超えていく様は、きっと映像にしたら陳腐なものになるでしょうが、文学という、
想像力を必要とする媒体だからこその表現の仕方で、さすが三島由紀夫、という感じです。他の作家では書きえない表現です。
そして最近の作家にありがちな中身の無い、伝えたいことのまったく伝わらない作品と違い、物語性もきちんとあります。
また、そこかしこに哲学的問いが出され、それが嫌味なく読めるというのも、やはり精緻な描写のおかげでしょう。
しかし一行として手を抜いたところがなく、読んでいるこっちも息をつめて一文字一文字味合わなければならないので、
一読目は非常に疲れました(笑) だけど読み終えれば、他の作家の作品が物足りなく感じてしまうこの不思議。
何度読んでも完全に解体することが出来ないような、至高の作品です。
11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち [DVD]
私は、高速バスで今年の7月に名古屋に行った時、名古屋のシネマスコーレという映画館でこの映画を鑑賞致しました。映画館の入り口で切符を買おうとした時、知らない方から「映画観るんだったら11.25自決の日がいいよ。すごく良いよ」と声をかけられました。
「実は、11.25自決の日を観に来たんですよ」と、私が答えたら、「三島由紀夫の金閣寺とか憂国は読んだ事があるよね。あれは、傑作だね」とか言っておられました。見知らぬ方が映画館の前で、これはいいよと、わざわざ声をかけられる事は、ない経験なので、
映画を観る前から気分が盛り上がりました。
しかも、後から家に帰って、観た映画の監督の事とかを調べたら、私が行ったシネマスコーレという映画館は、
この映画の監督自らが経営している映画館だったのです。そこで、観る事が出来て良かったです。
残念な事に最近、交通事故で若松監督は亡くなったそうです。最後から2番目ぐらいの作品になるのでしょうか・・・。
映画の内容はとても良かったです。楯の会を結成していく過程を描いているようです。
学生運動をしていた人が三島氏に傾倒していったようです。この映画では、楯の会の若者の中心森田君が
三島氏が日本の尊厳、国の防衛(自衛隊を日本正規軍に?)の為に行動を起こす事を
せかしているような描き方でした。自分を尊敬している若者から失望されたくないという感情も加わり、
考えに考えたあげく、行動を起こしたという描き方をしていました。
市ケ谷の自衛隊で人質をとって演説して、その後自決した三島氏の話をたんたんとサラッと、描いてる感じです。
この映画だと、三島由紀夫氏がとても、普通の人で、そうせざをえない状況にだんだん追い込まれ、
人が仰天する事をやったという感じでした。観る前は、三島氏をギラギラとした危ない人っていうイメージで
描いているのかと思いきや、そうではなかったです。普通の人っぽい感じに見えるから、
三島氏の言う事がとても、筋が通っていて、正しいなって思えてきます。
当時、頭がおかしいという意見が多かったようですが、そういう偏見を助長する描き方はしていないようです。
関係ないかもしれませんが、DVDの発売日11月25日した方が気が利いていると思います。