敦 山月記・名人伝 [DVD]
もうこの方たちは「萬斎劇団」とでも名前をつけたらいいんじゃないかと。
今まで和のテイストを取り入れた作品はいっぱいありましたが、大体は西洋演劇スタイルを和風にしたものです。
しかしこの作品は、狂言(というより能の手法ですね)という和演劇のスタイルから現代演劇を創り出しています。そしてなかなかよくできてます。
出演者みんな狂言師なんですよね!踊り/舞はもちろんですが、間とか笑いも絶妙です。
あとは、敦が「山月記・名人伝」という作品で伝えたかった事や心の叫びがもっと表現されれば、余韻も残るいい作品になると思いました。
李陵・山月記 (新潮文庫)
「若いころは将来を嘱望されていたのに」と犯人をしる関係者がつぶやく犯罪がたまにおこると、私は山月記を思い出す。
あの通り魔も殺人者もきっと人喰い虎になってしまったのだろう。
李徴が袁サンに語ることばのなかに人生を悔いるセリフがでてくる。そう、あのときこう考えていれば、こうしていれば違う人生があったんじゃないだろうかと。
悔恨のセリフがなんだか犯罪者の手記をみているような感じ。だがこの部分を読んでいると誰でも虎になりうるのではないかと感じた。
オリジナルの人虎伝はどっちかというと、不思議譚だが、これを拾ってこの悲哀に満ちながらも簡潔な小説に仕立て直した中島敦の現代文学者としての才能が惜しまれる。中島敦、もっともっと作品をみてみたかった作家だ。
山月記
中島敦の名作「山月記」が無料で読める時代がやってきたんですね。
短編小説ですので読んだことがない方は一度は目を通して欲しいです。
流れるような文章は実に軽妙です。
作中で主人公が語る「臆病な自尊心」というの誰も多かれ少なかれ持っているものではないでしょうか。
非常に考えさせられる話であり、作者の人間に対する洞察の深さを感じさせられます。
最近巷にあふれるエンターテイメント小説とは趣の異なるこの作品を、ぜひ楽しんでください。
※最後の漢詩に返り点や読み下し文がついていないのが、星ひとつ引かせていただいた理由です。
中島敦全集〈1〉 (ちくま文庫)
中島敦といえば中国ものが有名だが、全集を読むと実はそれ以外のもの(かつ良作)が結構あるというのが良くわかる。
・古譚
古代オリエントを題材にした短編いくつかと山月記
・光と風と夢
「宝島」のスティーブンソンの晩年を描いた長編
第十五回芥川賞候補となるも、ほとんどの芥川賞選考委員から「奇を衒う面白さはあるが、到底、芥川賞に値する作品とは思えない」と評価される。
(これは、それ以前にでていた山月記も含めての評価らしい)
審査員でただ一人川端康成だけが「芥川賞に値しないとは、私には信じられない」と述べた。
・「斗南先生」
中島敦の分身である三造が登場。その後も三造が登場する小説が書かれている。