青い文学シリーズ 人間失格 第1巻 (Blu-ray Disc)
文学作品の映像化としてはこれ以上ない出来ではないでしょうか。
「デスノート」の夜神光っぽい主人公や、少し脚色されているストーリーなどは好き嫌いが分かれるかもしれませんが、原作を一読した事のある人には必ず見てもらいたい作品です。
アニメでしかできない幻想的な視覚表現、物悲しくも美しい音楽等、原作を抜きにしてもかなり完成度の高い作品だと思います。
「人間失格」の各四話を編集した劇場版が、伊の映画祭(Future Film Festival)でグランプリを獲得したそうですが、それも納得の出来です。
人間失格 (新潮文庫 (た-2-5))
「人間失格」は私が太宰にはまるきっかけとなった本でした。
「葉蔵って、わたし?!」と思わされ、どうしてこの人は、私のような人間のことをこんなによく知っているのだろう、と思わされてしまいました。
これが太宰マジックで、太宰は天才的に人の心に入り込む語り口を持っているということでしょう。
中学生の私は、何に共感したのか。
今、思えば、人間って怖い。ということだったのでしょう。
本心を見透かされないように道化てみる。
それは、他人が恐ろしいからだと思います。
一番共感したのは、人が怒るときの様子を牛のしっぽに例えたところです。
怒ったとき、その人の隠された面が生々しく出るものです。
傷つきやすい心。
建前が嘘に思えて仕方ない。
それは、思春期の心の特徴なのかもしれません。
今では私もずぶとくなり、溺れもせず、なんとか人生を泳いでいます。
未だにこの本はベストセラーだとか。
この本に共感する若い人。
若いときには、はまったくせに、今はそんなことを忘れたかのように生きている大人たち。
みんな、いとおしい気がします。
密かな仲間のような気がして。
青春期に一回は読んでほしい。
でも、もしはまっちゃったら、「富岳百景」や「津軽」や「正義と微笑」も読んでくださいね。
太宰は虚無だけの人ではないと思うから。