Of Queues & Cures
カンタベリー・ロックの中核を占めていたハットフィールド&ザ・ノースは1975年に活動を休止。これを受け,構成員が兄弟バンド【ギルガメッシュ】と混じり合うような形で結成したのがナショナル・ヘルスだった。折からのパンク隆盛が逆風となり,メンバーは流動的で活動も安定せず,結局3枚を残して空中分解してしまう。
本盤はバンド名を冠したデビュー作に続き,1979年に発表された第二作。一作目をいっそうソリッドかつダークな色合いにしたプログレッシブなジャズ・ロックだ。確かに,彼らはテクニックこそジャズ屋には遠く及ばなかったが,ジャズとロックをこれ以上なく幸福に融合した,イマジネーション溢れる音楽性があった。本盤でも,ジャズとプログレの境界領域で独自の桃源郷を作り出す作風に大きな変化は無し。急速調ではギターを駆使した多彩な変拍子ロックの表情を,緩奏部ではエレピやオルガンを使ってメロウなCTIフュージョン風の表情を,それぞれ使い分け。予測不能な転調の連続と厚い管部のオブリガードを援用して,起伏を作っていく。大物ピンク・フロイドやイエスに隠れて目立たぬ侭なのが不思議でならないほど,楽曲は粒ぞろいで創造性豊かだ。
唯一物足りないところがあるとすれば,ハットフィールド&ザ・ノースやナショヘル名義の第一作でも,桃源郷へのトリップ感を醸し出すのに大きく貢献していたアマンダ女史の神々しいお声が,本盤では全く入っていないことか。代わりに一部でヴォーカルを取るピーター・ブレヴァートは,トーキング・ヘッズのヴォーカルみたくぶっきらぼうで歌もヘタウマ。ヴォーカルのみの参加で,わざわざこんな人物を据える必要があったのか。正直言って意図が良く分らない(笑)。
National Health
イギリスのジャズロックバンド、ナショナル・ヘルスのアルバム。1978作/紙ジャケリマスター盤
Hatfield and the Northのデイヴ・スチュワートとフィル・ミラー、GILGAMESHのアラン・ガウエンを
中心に結成された、まさにカンタベリーシーンのスーパーグループともいうべきバンド。
軽快なリズムの上を、デイヴのオルガン、ガウエンのシンセが鳴り響き、テクニカルなインストを聴かせつつ
途中にはしっとりと美しいピアノに女性ヴォーカルも入ってきたりと、展開力も見せつける。
クラシックの要素もあったEGGをさらに優雅に繊細にしたという雰囲気もあり、
ジャズロックとしての名作という以上にメロディアスな美しさがあるのが素晴らしい。
Missing Pieces
ずっと欲しいと思っていたNational HealthのMissing Piecesがやっと埋まりました。このピースを手に入れるためにどれだけ待ったことか。National Healthというだけで星5つです。カンタベリー・ロックのすばらしさを余すところなく示しています。未発表曲集といいますが、そんなことは少しも感じさせない作品群です。