Naked Lunch: The Restored Text
ビート・ジェネレーションを代表する、ものすごく有名な作品です。
その知名度の高さは、前衛的なカット・アップ技法もさることながら、
バロウズという人自身の逸話の数々もあるのではないでしょうか?
それだけ強烈なキャラクターを持ち、色んな方面への影響力が強い人でした。
その破天荒な生活は自らの体験に基づく作品である『ジャンキー』などに表れてます。
自分が読んだ感じだと、もっぱらの評判通り「意味わかりません(爆)」
何かすごいものを読んだような、何かを理解したような気にもなりますが、
実際には何もわかっていない…
本当は意味など無いというのがホントのところかも知れません。
物語を論理的に説明しようとせずに、感性と想像力を働かせて読むと、
幻覚の中にいるような気分になり、凄くサイケデリックでシュールな映像が浮かびます。
こういう文章を書けるということがバロウズの類まれなる才能だったのかなぁ…
とも思ったりします。
しかし登場人物や舞台があまりに多い上に、ハッキリとしたストーリーの無い本ですから、
少しずつ読んでいると別の意味で混乱しそうです(爆)
ただ日本語に和訳することによって、元の文章の持つ雰囲気や、
ニュアンスが異なってしまっているとも感じています。
英語が理解度の高い人が、原本の文章が読めればまた大分印象が変わってくると思います。
原本の方がわかりやすいという話も…
屍界〈Narcotic World〉 (R/EVOLUTION 9th Mission)
ついに、国粋主義者と多国籍が衝突する。
純血を守る者、多国籍の地位確立を企図する者、お互いの思惑が複雑に絡み合い事態は急速に変わっていく。
屍界の名にある様に、今回で多くの人物が退場していく。登場人物の思惟が、次々と悲劇を引き起こし終わりは見えない。
アクション要素は静かに抑えられているものの、急速な展開と各登場人物が終局へ向けて収斂していく様は面白い。
前巻(誘魔)が、2009年11月、今回は2011年7月。次回は「喪国」。ついに決着がつくのか。
Tulsa
現在、『キッズ』や『ブリー』など映画監督としての活動も目立つ写真家ラリークラークの71年の処女作がこの『タルサ』である。彼の地元オクラハマのタルサで暮らす友人達(ジャンキーや売春婦)を被写体にしている。ラリーは父親との確執や争いの耐えない荒れた家庭環境に育ち、思春期以前にドラッグに染まった少年時代を過ごした。そんなラリーにとって生きるとはどういうことなのだろうか。ラリークラークは、作品から自分の感情を排除しているようにも見える。だからこそ誠実でリアルな印象を受ける。この写真集は誠実で純粋な凶器である。
Junky (Essential Penguin)
鮎川信夫訳「ジャンキー」は素晴らしい。今は河出文庫で発行されている。
それを読んで興味を持った方は、ぜひこれを手にして欲しい。面白さは保証いたします。
「裸のランチ」「ノヴァ急報」で、やや悪い意味で「舞い上がって」しまう前の、良心あるバロウズの小説である。山形浩生氏によれば、ルー・リードはバロウズのベストに本書を挙げているのだそうだ。
誇張したいいかたではなく、「今でも色あせない書物」である。ドラッグ描写なんかはリアルだし、英語自体もナイスだ。ペンギン版で出ているのも当然といえば当然かな。
バロウズは「JunkはKickじゃねえ、Lifeなのだ」と本書でおっしゃっている。こんなださい(失礼!)ことは現代の青臭いミュージシャンだって言わないのでは。まあ、それはそれ、ドラッグ経験者にしかわからないことだってありますからね。ドラッグに興味のない方で、バロウズが好きだ、という方にも、このペンギン版はお勧めだ。