一夢庵風流記 (新潮文庫)
正直、どの前田慶次郎利益が正しいのかは判りません。
ただ、私的には隆慶一郎氏の書く前田慶次郎利益が一番好きです。
文武両道、そのくせそれをおくびにも出さず、風の吹くまま気の向くまま、
海を渡るのもヒョイと。
ただ自分の思ったことを実行する。それが難しいのはいつの時代も同じこと。
それをしている手本としてこの本を読みました。
一夢庵風流記 (集英社文庫)
学生時代漫画で読んだが、友人より実在の人物だと聞いて驚いた。驚きのあまり私はそれを否定してしまった。
巻末に「石原裕次郎主演で映画化した際に原作者がシナリオを担当した」と書かれている。時間がなかったため、あまりの出来の悪さにリベンジしたのが本作品だそうだ。
しかし、必死で集めた資料がペラ紙1枚・・・。よくそれだけの資料でこれだけの本が書けるものだと脱帽するばかりである。
その心意気が主人公 前田慶次郎と相通ずるものがある。
隆慶一郎というもののふが前田慶次郎というもののふの話を書く。
その心意気があればペラ紙一枚で十分であったのかもしれない。
最後になったが現在でも歴史小説の基準がこの作品となっている。
この作品を超えるものが果たして出るのであろうか、その日を心待ちにしてはいるものの、その日が来て欲しくないという思いもある。
影武者徳川家康〈上〉 (新潮文庫)
関ケ原の合戦以降の徳川家康は影武者で,二代将軍秀忠との間で凄まじい暗闘が展開されていた,という大胆で壮大な構想に基づき,影武者家康の死までを描いた,衝撃的な大作.『徳川実紀』などいくつもの史料に照らされながらの内容は史実と思えるほどで,本当に影武者だったのではないか,と疑ってしまう.通説と異なる秀忠像,柳生像をはじめ,著者独特の漂白の民に対する考察なども新鮮で歯切れ良く,すばらしい作品だと思う.読み終わると,影武者家康がある種のユートピアを作ろうとした街,駿府に行ってみたくなる.ただ一箇所,上巻で描かれる影武者の若き日,一向一揆での活躍のくだりはやや冗長かも.でも,それを補って大いに余りあるお勧めの作品.