タイトルに掲げられたのは「月光
仮面」ですが、「月光
仮面」から「快傑ハリマオ」「隠密剣士」まで、昭和三十年代のTVドラマ界を牽引した宣弘社作品群の成り立ちと歴史的意義を論じたルポルタージュであります。
当時の映画・TV界を取り巻く状況を踏まえつつ展開される、硬派な草創期TVドラマ論。「水戸黄門」や二時間サスペンスまで繋がる、宣弘社の足跡の意外な大きさに驚かされます。ただし、ノスタルジックな撮影裏話集を期待すると肩透かしかも。この内容なら「遊星王子」「恐怖のミイラ」にも言及して欲しかったです。
大瀬康一氏のロングインタビューが抜群に面白く、TVドラマの始まりを知る、この人こそはまさに歴史の生き証人。関係者の大部分が鬼籍に入られたいま、大瀬氏がまだお元気なうちにまるまる一冊、TVドラマの草創期の証言で本を作っていただきたいものです。