パリの原智恵子
原智恵子の演奏はエレガントで且つ芯の強さを秘めている。また、夫君のカサドとのデュオでは、カサドの円熟味を帯びたセンスの良い演奏と、二つの個性が互いに支えあい引き立てあいながら、絶妙な境地を作り出している。新発見の音源とのことだが、本当に良くぞ見つけてくれたと感謝したい。
伝説のピアニスト
現在、クラシックのピアニストが使用するピアノと言えば、ベーゼンドルファー、スタインウェイかヤマハであるが、この録音に使われたピアノはプレイエルである。
多くのピアノが頑丈な音のする前記ピアノを使用しているのに対して、極端に表現すると、プレイエルは鈴を鳴らすような綺麗な音であり、その美しさは、ショパンやドビュッシーの音楽に最適な音である事をこれほどまでに提示してくれたこのアルバムは、驚異的なほど素晴らしい!
これが、ベートーヴェンやリストであったら、他の多くのピアニストの録音の影に隠れてしまったかもしれない。ライナーノーツにエンジニア若林氏が録音器材(当時は全て真空管だったので、途方もなく重い!)を運び込んで放送でこの音楽を聴取者に伝えるか、苦心した事がかかれているが、その目標は充分達成している。特にショパンの協奏曲に似合うアルバム(ライブ録音の一発録り!しかも未編集)はコレしかない、と思わせてくれます。是非聴いてみて下さい。
多くのピアノが頑丈な音のする前記ピアノを使用しているのに対して、極端に表現すると、プレイエルは鈴を鳴らすような綺麗な音であり、その美しさは、ショパンやドビュッシーの音楽に最適な音である事をこれほどまでに提示してくれたこのアルバムは、驚異的なほど素晴らしい!
これが、ベートーヴェンやリストであったら、他の多くのピアニストの録音の影に隠れてしまったかもしれない。ライナーノーツにエンジニア若林氏が録音器材(当時は全て真空管だったので、途方もなく重い!)を運び込んで放送でこの音楽を聴取者に伝えるか、苦心した事がかかれているが、その目標は充分達成している。特にショパンの協奏曲に似合うアルバム(ライブ録音の一発録り!しかも未編集)はコレしかない、と思わせてくれます。是非聴いてみて下さい。
麦秋 [DVD] COS-022
小津の最高傑作というと 本作と「東京物語」「晩春」あたりが 先頭争いになるのかと思う。「小津の最高傑作とは何か」という設問自体が あまり意味が無いと思うが 「小津で一番好きな作品は何か」という設問には即答できる。本作である。
何が良いのか。原節子は輝く美しさであるし泣き顔も素敵である。笠智衆の珍しい若作りも楽しい。東山千栄子の大きな体も母性を思わせる。そうして 何より杉村春子の演技足るや 入神と言っても良い。演じておられる俳優の代表的な作品に仕上がっている豪華さがある。
しかし それだけでは説明のつかない感動に満ち溢れる。映画の感動には 話の筋、演技等もあるが 「一瞬の映像の切れ味」も大きいと思う。その意味では 本作の一家離散の前の記念写真の場面には心を打たれるし 最後の 麦畑を行く婚礼行列には 理由はわからないが涙がにじんでしまうのが毎回である。「離散する家族」と「婚礼により新しく誕生する家族」のコントラクトに感動しているのであろうか? 自問自答しても 答えは解らない。
何が良いのか。原節子は輝く美しさであるし泣き顔も素敵である。笠智衆の珍しい若作りも楽しい。東山千栄子の大きな体も母性を思わせる。そうして 何より杉村春子の演技足るや 入神と言っても良い。演じておられる俳優の代表的な作品に仕上がっている豪華さがある。
しかし それだけでは説明のつかない感動に満ち溢れる。映画の感動には 話の筋、演技等もあるが 「一瞬の映像の切れ味」も大きいと思う。その意味では 本作の一家離散の前の記念写真の場面には心を打たれるし 最後の 麦畑を行く婚礼行列には 理由はわからないが涙がにじんでしまうのが毎回である。「離散する家族」と「婚礼により新しく誕生する家族」のコントラクトに感動しているのであろうか? 自問自答しても 答えは解らない。
東京物語 [VHS]
このディスクには英語字幕がついている。さか上がりを英語で言えなくても平気だが、この映画の能弁でなない日本人の会話が英語に、それも映画の字幕という制限のあるフォーマットでどういう英語に変換されるかは知っておきたい。日本語と英語の違いに起因して、アナログ信号がデジタル信号に変換されて量子化されたときのように、細かいニュアンスがある程度脱落するが、それは致し方ない。
「東京物語」で一番重要な紀子の台詞「猾いんです」は何と訳されたか?“selfish”である。これは正直私には思いもよらなかった訳だ。少し前の京子の台詞「(自分)勝手」の訳が“selfish”であるのはよくわかる。なるほどあの紀子の「猾いんです」の意味の一つの核は“selfish”かもしれない。しかし「猾いんです」はそれだけではないように思える。優れた翻訳は翻訳者の解釈が示されることで元の日本語の意味をじっくり考える契機を与えてくれるが、Tetsuo Yanai & Donald Richieの訳もまた然り。
白井佳夫氏によれば、84年のオーディオコメンタリー収録時に笠智衆さんはその周吉と紀子の場面で涙したとのこと。
「東京物語」で一番重要な紀子の台詞「猾いんです」は何と訳されたか?“selfish”である。これは正直私には思いもよらなかった訳だ。少し前の京子の台詞「(自分)勝手」の訳が“selfish”であるのはよくわかる。なるほどあの紀子の「猾いんです」の意味の一つの核は“selfish”かもしれない。しかし「猾いんです」はそれだけではないように思える。優れた翻訳は翻訳者の解釈が示されることで元の日本語の意味をじっくり考える契機を与えてくれるが、Tetsuo Yanai & Donald Richieの訳もまた然り。
白井佳夫氏によれば、84年のオーディオコメンタリー収録時に笠智衆さんはその周吉と紀子の場面で涙したとのこと。