大島渚 4 - 愛のコリーダ/愛の亡霊/マックス、モン・アムール [DVD]
長らく廃盤が続き、某オークションでは高値がついていた作品がボックスになって復活した事は喜ばしい限りです。マックスは初DVD化ですかね。価格も高くないし、買い替えには最適でしょう。大島監督も闘病生活が続いており、新作が観る事ができないのは残念ですが、不屈の精神でもう一度復活していただける事を願ってやみません。大島監督絶頂期の三作品を是非たくさんの特に女性の方に御覧いただきたいと思います。
あの頃映画 「御法度 GOHATTO」 [DVD]
大島渚監督が亡くなられた。…とても残念です。
大島監督は‘西のゴダール東のオーシマ’などといわれたほどのビックネームですが、国内では本来の業績が正当に評価されていないように感じることがあります。キャラクターとしては有名ですが肝心の映画作品が(映画ファン以外に)あまり観られていないよう思えるのです。いくつかの例外はありますが…。
訃報の際の報道にもそんな印象をうけました。…映画作家としての業績よりも討論番組での論客ぶりや某作家との一件・あるいはCM活動・晩年の闘病等のほうにウエイトを置いた内容で少々残念に感じました。(新聞では、一般紙はキチンと書いてありましたが、スポーツ紙などを見るとそんな感じでした。あとテレビ報道もやはりそうでした)
大島作品の場合、多くのテーマが ‘性’と‘暴力や犯罪’そして‘政治’となっており、現在の自主規制の厳しいテレビ放送には向かないことも一因かもしれません。(『戦メリ』は放送できると思うけど他の作品はなかなか…)
しかし、観るべき傑作は『戦メリ』と『愛のコリーダ』だけではありません。
さて、期せずして遺作となってしまった本作はそんな‘観るべき傑作’の一つといえます。
物語は、‘新撰組内である時期に男色が流行ったときの顛末’を‘妖気と狂気’をもって描いています。
(個人的に)しっくりしなかった前作『マックス・モン・アムール』から十三年。病を押して作られたこの作品は、悪条件(←麻痺の残る体で指示を出し、車椅子に乗って…鬼気迫る演出振りだった)にも関わらず見事な完成度で大島監督の凄さを見せ付けてくれました。
本作は‘男同士の’恋愛物です。
(『戦メリ』にしても、古くは『太陽の墓場』にしても大島作品では…ホモテイストが昔から底流として描かれています)
そして、なによりも一種の心理劇として秀逸で、密室劇又は幻想的なサスペンスのようなテイストも持っています。‘男色’が苦手(←私)な方でも十分観る価値があると思います。魅力にハマれば引き付けられたように繰り返し観ることができる秀逸な娯楽作でもあります。…個性が強い作品なので大嫌いになる方もいるとは思いますが。
(また、本作は、リアルさなどを求める物語ではなく‘新撰組’に材をとったある種の幻想譚ともいえます。…ある程度フィクションと割り切って楽しむべきです。)
全編にわたって隙のない作りこみが印象的です。
一見あっさりとした展開をしているようで、実のところ多くの謎があり多様な解釈が出来るよう仕掛けられ、重層的な読み取りが出来ます。
さらに、その作りこみは全ての要素に及びます。 本格的な美術・精悍でありながら豪奢な衣装・青紫とオレンジを基調とした撮影・陰影のある響きの音楽…。
そしてそれぞれの要素が‘目立ちすぎることなく’プロの仕事として磨きこまれ映画の完成度を押し上げます。例えば、やや控えめながら静かなテンションと色気を持ち続ける坂本龍一の音楽。見事でした。
キャストも見所といえます。ビートたけしを始め、多くのキャラクターが個性的に、そして魅力的に、描かれていますが、特に(やはり)松田龍平が印象的です。演技力以前にむせるほどの妖気が凄まじくヤラレました。タージオもびっくりの、魔少年というか…美少年というか…これで当時新人だったのだから、本人も…作り上げたスタッフも…監督の人選も…見事です。
脇役陣も見所満載ですが、個人的にはトミーズ雅のキャラクターが楽しく出色でした。
さて、ソフトの仕様について少し書きます。
音質はまずまずです。ただ、画質については今一歩といった印象を受けました。悪くはないのですが1999年公開の映画ならもうすこし良くなる気がします。将来ブルーレイ等で美しいバージョンが出ることを望むところです。(そのときは日本語字幕もつけてほしい)
封入物は全8ページのリーフレットです。オールカラーで綺麗ですが写真中心でチャプターやスタッフ紹介以外は記事もなくチョッと寂しい作りです。
(仕様については2000年発売の版についての評価です。最近再発された版についてはわかりません)
特典類は資料関係と劇場公開当時の監督と主要キャストインタヴューが含まれています。
特に監督インタヴュー(約10分)は必見です。口調や麻痺などに病の影響は感じられるものの堂々と取材に応じ快活に答える姿は非常に感銘をうけます。
このインタヴューで大島監督は『賞には拘らないが、(自分を助けてくれた)人達のためにも今回は賞が欲しかった』と語り人柄を感じさせ印象的でした。(←『愛の亡霊』カンヌ監督賞のときのコメントに似ています)
同時に収録されているビートたけし氏や崔洋一氏のインタヴューなどにも病後復帰作に挑む大島監督をもりたてようとした様子が伺えます。
そして…
インタヴューの最後の質問は監督の次回作についてでした…。
『(次回作のアイデアは)まだ思いつかないが、フッと思いつくときがある。ソレを捕らえることが大事だ』と語っていました。…思えば、晩年は長く病魔と闘うことを余儀なくされ、また資金面でも(『ハリウッド・ゼン』の制作中止など)思うように撮ることが出来ませんでした。それは…とても大きな損失だったと思います。
…本作の公開後、時折もれ伝わっている病状を聞くにつれ、もう新作は難しいだろう、とは思っていました。
…本作が遺作になってしまい心から残念に思います。覚悟していたとはいえ、もっと新作が観たかった、と思わずにはいられません。
しかし、残された作品は消えてしまうことはありません。‘観るべき傑作’があります。再評価を待つ作品群です。
(個人的ベスト5を書かせていただけるなら『日本の夜と霧』『儀式』『少年』『絞死刑』『白昼の通り魔』の順でしょうか)
今後、映画ファンに限らず多くの方が作品に触れて大島監督の業績を広めていくことを望みます。
作品の再評価を!
『ゆけゆけ飛馬〜ドンとゆけ〜』
大島監督は生前『巨人の星』のテーマが好きだったそうです。酒席でも好んで歌っていたといいます。
その様子を想像すると、元気にテレビに出演していた頃を思い出します。
心からご冥福をお祈りします。
大島監督は‘西のゴダール東のオーシマ’などといわれたほどのビックネームですが、国内では本来の業績が正当に評価されていないように感じることがあります。キャラクターとしては有名ですが肝心の映画作品が(映画ファン以外に)あまり観られていないよう思えるのです。いくつかの例外はありますが…。
訃報の際の報道にもそんな印象をうけました。…映画作家としての業績よりも討論番組での論客ぶりや某作家との一件・あるいはCM活動・晩年の闘病等のほうにウエイトを置いた内容で少々残念に感じました。(新聞では、一般紙はキチンと書いてありましたが、スポーツ紙などを見るとそんな感じでした。あとテレビ報道もやはりそうでした)
大島作品の場合、多くのテーマが ‘性’と‘暴力や犯罪’そして‘政治’となっており、現在の自主規制の厳しいテレビ放送には向かないことも一因かもしれません。(『戦メリ』は放送できると思うけど他の作品はなかなか…)
しかし、観るべき傑作は『戦メリ』と『愛のコリーダ』だけではありません。
さて、期せずして遺作となってしまった本作はそんな‘観るべき傑作’の一つといえます。
物語は、‘新撰組内である時期に男色が流行ったときの顛末’を‘妖気と狂気’をもって描いています。
(個人的に)しっくりしなかった前作『マックス・モン・アムール』から十三年。病を押して作られたこの作品は、悪条件(←麻痺の残る体で指示を出し、車椅子に乗って…鬼気迫る演出振りだった)にも関わらず見事な完成度で大島監督の凄さを見せ付けてくれました。
本作は‘男同士の’恋愛物です。
(『戦メリ』にしても、古くは『太陽の墓場』にしても大島作品では…ホモテイストが昔から底流として描かれています)
そして、なによりも一種の心理劇として秀逸で、密室劇又は幻想的なサスペンスのようなテイストも持っています。‘男色’が苦手(←私)な方でも十分観る価値があると思います。魅力にハマれば引き付けられたように繰り返し観ることができる秀逸な娯楽作でもあります。…個性が強い作品なので大嫌いになる方もいるとは思いますが。
(また、本作は、リアルさなどを求める物語ではなく‘新撰組’に材をとったある種の幻想譚ともいえます。…ある程度フィクションと割り切って楽しむべきです。)
全編にわたって隙のない作りこみが印象的です。
一見あっさりとした展開をしているようで、実のところ多くの謎があり多様な解釈が出来るよう仕掛けられ、重層的な読み取りが出来ます。
さらに、その作りこみは全ての要素に及びます。 本格的な美術・精悍でありながら豪奢な衣装・青紫とオレンジを基調とした撮影・陰影のある響きの音楽…。
そしてそれぞれの要素が‘目立ちすぎることなく’プロの仕事として磨きこまれ映画の完成度を押し上げます。例えば、やや控えめながら静かなテンションと色気を持ち続ける坂本龍一の音楽。見事でした。
キャストも見所といえます。ビートたけしを始め、多くのキャラクターが個性的に、そして魅力的に、描かれていますが、特に(やはり)松田龍平が印象的です。演技力以前にむせるほどの妖気が凄まじくヤラレました。タージオもびっくりの、魔少年というか…美少年というか…これで当時新人だったのだから、本人も…作り上げたスタッフも…監督の人選も…見事です。
脇役陣も見所満載ですが、個人的にはトミーズ雅のキャラクターが楽しく出色でした。
さて、ソフトの仕様について少し書きます。
音質はまずまずです。ただ、画質については今一歩といった印象を受けました。悪くはないのですが1999年公開の映画ならもうすこし良くなる気がします。将来ブルーレイ等で美しいバージョンが出ることを望むところです。(そのときは日本語字幕もつけてほしい)
封入物は全8ページのリーフレットです。オールカラーで綺麗ですが写真中心でチャプターやスタッフ紹介以外は記事もなくチョッと寂しい作りです。
(仕様については2000年発売の版についての評価です。最近再発された版についてはわかりません)
特典類は資料関係と劇場公開当時の監督と主要キャストインタヴューが含まれています。
特に監督インタヴュー(約10分)は必見です。口調や麻痺などに病の影響は感じられるものの堂々と取材に応じ快活に答える姿は非常に感銘をうけます。
このインタヴューで大島監督は『賞には拘らないが、(自分を助けてくれた)人達のためにも今回は賞が欲しかった』と語り人柄を感じさせ印象的でした。(←『愛の亡霊』カンヌ監督賞のときのコメントに似ています)
同時に収録されているビートたけし氏や崔洋一氏のインタヴューなどにも病後復帰作に挑む大島監督をもりたてようとした様子が伺えます。
そして…
インタヴューの最後の質問は監督の次回作についてでした…。
『(次回作のアイデアは)まだ思いつかないが、フッと思いつくときがある。ソレを捕らえることが大事だ』と語っていました。…思えば、晩年は長く病魔と闘うことを余儀なくされ、また資金面でも(『ハリウッド・ゼン』の制作中止など)思うように撮ることが出来ませんでした。それは…とても大きな損失だったと思います。
…本作の公開後、時折もれ伝わっている病状を聞くにつれ、もう新作は難しいだろう、とは思っていました。
…本作が遺作になってしまい心から残念に思います。覚悟していたとはいえ、もっと新作が観たかった、と思わずにはいられません。
しかし、残された作品は消えてしまうことはありません。‘観るべき傑作’があります。再評価を待つ作品群です。
(個人的ベスト5を書かせていただけるなら『日本の夜と霧』『儀式』『少年』『絞死刑』『白昼の通り魔』の順でしょうか)
今後、映画ファンに限らず多くの方が作品に触れて大島監督の業績を広めていくことを望みます。
作品の再評価を!
『ゆけゆけ飛馬〜ドンとゆけ〜』
大島監督は生前『巨人の星』のテーマが好きだったそうです。酒席でも好んで歌っていたといいます。
その様子を想像すると、元気にテレビに出演していた頃を思い出します。
心からご冥福をお祈りします。
整形逃亡―松山ホステス殺人事件 (幻冬舎アウトロー文庫)
…断っておくが、私は福田和子のファンではない。病的な嘘つきだし、特に、(まず非はないであろう被害女性の事を悪く言い)、「私が殺人を犯したのは彼女のせい」と、自己弁護する姿勢には反吐が出る。
…しかし。彼女の生き様は、私に、勇気を与えてくれたのも事実なのだ。全国に指名手配され、何の保証もない30女でも、女を武器にすれば15年も逃げ延びる事が可能なのだと。
また、殺害後すぐ、当時はまだ珍しかった整形手術を受けたところなど、先見の明があるし何より機敏だ。
巷に溢れる“セレブ妻”などよりも、よっぽど、参考になる?生き方をしている。
まさにダークヒーロー。基本的にはやはり好感は持てないが、その底力にはただただ驚くばかりだ。
…しかし。彼女の生き様は、私に、勇気を与えてくれたのも事実なのだ。全国に指名手配され、何の保証もない30女でも、女を武器にすれば15年も逃げ延びる事が可能なのだと。
また、殺害後すぐ、当時はまだ珍しかった整形手術を受けたところなど、先見の明があるし何より機敏だ。
巷に溢れる“セレブ妻”などよりも、よっぽど、参考になる?生き方をしている。
まさにダークヒーロー。基本的にはやはり好感は持てないが、その底力にはただただ驚くばかりだ。