1960年に「お助け」で商業デビューして以来、すでに50年以上の長きに渡り執筆活動を続けている筒井康隆氏。
これだけ長くなると手に入りにくい作品も増えてきているが、その中の代表的な長・短編をまとめたコレクション
の刊行が開始された。
まずは1965年発表の「48億の妄想」。TVカメラを介して著名人はもちろん一般人までが「演技」を要求されている
社会が舞台。
続いて1964年発表の「幻想の未来」。人類滅亡後の異形の世界をこれでもか・というグロテスクな筆致で描写。
個人的に初めて読んだ作品である。
この作品には生頼範義氏が発表したイラストストーリーがあったとの事で、それも収録されている。
3つ目は1971年の「SF教室」。豊田有恒・伊藤典夫両氏との合作で青少年向けにSFの世界をひも解いた一冊。
最後に、「お助け」などが掲載された「NULL」から筒井氏本人の創作・執筆ページが1〜3号まで復刻されている。
最後には編者による解題。特に月報のようなものはついていない。
評者は1980年代に編まれた「筒井康隆全集」(
新潮社)は読破したものの、以後は落穂拾いのようにつまみ読みする
程度で、1993年の断筆宣言以後はほとんど読んでいない。
あまりよい読者(いわゆるツツイスト)ではないが、逆に、代表作を読み返せる/新たに目にするよい機会だと思っている。
出版社のHPでは発表されていないようなので、書誌データ、というか刊行予定について。
全7巻、隔月刊予定。
I(本書)
II:「霊長類 南へ」「脱走と追跡の
サンバ」
III:「欠陥大百科」他2冊予定
IV:「おれの血は他人の血」他2冊予定
V:「フェミニズム殺人事件」他1冊予定
VI:「美藝公」他数編予定
VII:「朝のガスパール」「イリヤ・ムウロメツ」
おそらくいずれも600p前後になるものと思われ、紙質も良いので厚い。
一冊7cm近くあるので、揃える方はスペースを空けておくのが望まれる。
評者は、そうするつもりである。