粉飾 特捜に狙われた元銀行員の告白
税理士や公認会計士などの職業専門家にとっては必読の書です。出来上がっていた筋書きに組み込まれてしまった
ことで、運悪く、大きな事件と化してしまったように思われます。しかし、粉飾に加担して融資を引き出した罪は重く、著者の認識にもやや甘い点があると感じました。
まず、経営者とコンサルタントは立場が違うため、両者は決して一体になれません。本書でも社長とコンサルタントとの微妙な温度差のようなものが行間から感じられますが、まさにこの部分が(コンサルティングの)限界と思われます。顧問先との「適度な距離感」を保つことが重要ではないでしょうか。
さらに、コストカットだけで、粉飾を隠したまま、粉飾を解消できるという見通しもどうでしょうか。コストカットは現在の出血(赤字)を止めるのが精一杯の手段であり、過去の(累積的な)負の遺産である粉飾を解消するには不十分でしょう。また、ある程度確実な効果が見込まれるコストカットと異なり、売上アップはかなりの不確実性が伴います。こちらは、コンサルタントの努力ではどうにもならず、結局、社長(会社)頼みとなります。
過去の実例から見ても、粉飾はそう簡単には解消しません。粉飾を隠し続ければ、泥沼化するのは明らかです。たとえ教科書的と言われても、「正攻法に勝る方法はない」ということを改めて強く感じました。
なお、今回の事件の背後には、中小企業に対する金融機関の融資体制の問題点があります。この点は日本の金融システムに係る制度的な問題として早急に解決しなければならないでしょう。逆に、こうした問題点が解消しない状況下では、(融資に関するコンサルティングにおいては)かなり慎重な姿勢で臨まざるを得ないという気がします。
ことで、運悪く、大きな事件と化してしまったように思われます。しかし、粉飾に加担して融資を引き出した罪は重く、著者の認識にもやや甘い点があると感じました。
まず、経営者とコンサルタントは立場が違うため、両者は決して一体になれません。本書でも社長とコンサルタントとの微妙な温度差のようなものが行間から感じられますが、まさにこの部分が(コンサルティングの)限界と思われます。顧問先との「適度な距離感」を保つことが重要ではないでしょうか。
さらに、コストカットだけで、粉飾を隠したまま、粉飾を解消できるという見通しもどうでしょうか。コストカットは現在の出血(赤字)を止めるのが精一杯の手段であり、過去の(累積的な)負の遺産である粉飾を解消するには不十分でしょう。また、ある程度確実な効果が見込まれるコストカットと異なり、売上アップはかなりの不確実性が伴います。こちらは、コンサルタントの努力ではどうにもならず、結局、社長(会社)頼みとなります。
過去の実例から見ても、粉飾はそう簡単には解消しません。粉飾を隠し続ければ、泥沼化するのは明らかです。たとえ教科書的と言われても、「正攻法に勝る方法はない」ということを改めて強く感じました。
なお、今回の事件の背後には、中小企業に対する金融機関の融資体制の問題点があります。この点は日本の金融システムに係る制度的な問題として早急に解決しなければならないでしょう。逆に、こうした問題点が解消しない状況下では、(融資に関するコンサルティングにおいては)かなり慎重な姿勢で臨まざるを得ないという気がします。
粉飾の論理
昨今話題になっているオリンパスの粉飾事件に触発されて、過去の代表的な粉飾事件の概要を知りたいと思って手に取った本著ですが、連結決算導入前後の日本の大企業の粉飾の典型としてのカネボウ、無形資産中心のIT業界に対する監査の難しさと上場のデメリット側を突きつけたメディア・リンクス、そして資本市場を活用するための粉飾という新しい形を示したライブドア、と三者三様なケースを、丹念な取材を元として詳細に追いかける良書でした。
個人的な感想を付け加えるなれば、著者同様、その脇における監査法人の不作為や癒着、曖昧な立ち位置には疑問を感じることが多かったです。プロフェッショナルとしての監査を成立させるためには、ソフトローや個々人の職業倫理に全てを帰するのではなく、粉飾を見過ごした場合の一定期間の資格停止などの罰則を厳しくするハードローの改正や、監査フィーの出し手が(一部でも)取引所になるなどの思い切ったインセンティブ構造の変化を作らないと、また同じような粉飾とそれを見過ごすインセンティブを与えかねないのかな、と思います。
昨今、日本のスタートアップ業界も再び活気が出てきているように思えますが、これらの事例を他山の石として、またわけの分からない顛末にならないように、起業家のみならずそれをサポートする監査の方々にもある種踏み込んで取り組んでいただきたいと感じました。
個人的な感想を付け加えるなれば、著者同様、その脇における監査法人の不作為や癒着、曖昧な立ち位置には疑問を感じることが多かったです。プロフェッショナルとしての監査を成立させるためには、ソフトローや個々人の職業倫理に全てを帰するのではなく、粉飾を見過ごした場合の一定期間の資格停止などの罰則を厳しくするハードローの改正や、監査フィーの出し手が(一部でも)取引所になるなどの思い切ったインセンティブ構造の変化を作らないと、また同じような粉飾とそれを見過ごすインセンティブを与えかねないのかな、と思います。
昨今、日本のスタートアップ業界も再び活気が出てきているように思えますが、これらの事例を他山の石として、またわけの分からない顛末にならないように、起業家のみならずそれをサポートする監査の方々にもある種踏み込んで取り組んでいただきたいと感じました。
キャッシュフロー分析 黒川明 [DVD]
株式投資の勉強の一環として購入。
事業撤退→工場閉鎖→赤字計上
というのは普通のことだが、キャッシュフローでみると、これは現金有高の大幅増になっていたりするのだ!
赤字企業であってもキャッシュが増えるということ。
逆に 新製品開発 → 新工場建設 → キャッシュ不足
となって配当原資が少ない、という「黒字」企業もあるのだ。
あるいは決算書上ではさえないが、キャッシュフロー(とくにFCF)が豊富な会社はいわゆる「逆粉飾」気味のことをやって節税している可能性がある。
こうしたことを見抜き投資に役立てたいと思って探していた答えをここに見つけた。
いや正確にいうと答えというより、その見抜き方を教えられた。
キャッシュフローの本は多いし私も何冊も買っているが、これは分かりやすいのでお勧め。図もいい。
事業撤退→工場閉鎖→赤字計上
というのは普通のことだが、キャッシュフローでみると、これは現金有高の大幅増になっていたりするのだ!
赤字企業であってもキャッシュが増えるということ。
逆に 新製品開発 → 新工場建設 → キャッシュ不足
となって配当原資が少ない、という「黒字」企業もあるのだ。
あるいは決算書上ではさえないが、キャッシュフロー(とくにFCF)が豊富な会社はいわゆる「逆粉飾」気味のことをやって節税している可能性がある。
こうしたことを見抜き投資に役立てたいと思って探していた答えをここに見つけた。
いや正確にいうと答えというより、その見抜き方を教えられた。
キャッシュフローの本は多いし私も何冊も買っているが、これは分かりやすいのでお勧め。図もいい。
歪んだエンロン~虚栄の崩壊~ [DVD]
企業が単に一部の経営者の金を生み出す装置として利用されている。映画で描かれているエンロンのある部署では将来の数字の見積もりがボーナスにつながる。多めに見積もればボーナスの額が増えるので社員は多めに見積もることになる。それによって会社が抱えられるリスクの限界をはるかに超えた将来の負債が積みあがる。これを監視する機能が欠けている。そのことに社員の誰もが疑問を抱いていない。
エレベータでは自社を褒め称え、自尊心を高めるための映像が常に流れている。巨額の負債を抱えていてもエンロンの成長がそれを超えた速度で進むと誰もが信じている。そういう文化が常に社内で作り上げられている。
社員がエンロン株を買い進める中で、経営陣は株を売り利益を確定させている。経営陣には巨額のボーナスが支払われる。
2002年に制定されたSOX法が作られる引き金を引いた非常に大きな企業・会計スキャンダルを描いた事件。エンロンの監査を担当する旧アーサー・アンダーセン担当チームの描き方が滑稽で面白い。
エレベータでは自社を褒め称え、自尊心を高めるための映像が常に流れている。巨額の負債を抱えていてもエンロンの成長がそれを超えた速度で進むと誰もが信じている。そういう文化が常に社内で作り上げられている。
社員がエンロン株を買い進める中で、経営陣は株を売り利益を確定させている。経営陣には巨額のボーナスが支払われる。
2002年に制定されたSOX法が作られる引き金を引いた非常に大きな企業・会計スキャンダルを描いた事件。エンロンの監査を担当する旧アーサー・アンダーセン担当チームの描き方が滑稽で面白い。
融資力トレーニングブック 粉飾決算の見分け方
この「融資力」シリーズの前作が面白かったので、今回も速効購入してしまいました。
このシリーズは今回が3作目ですが、どの本も金融機関の融資担当者向けに中小企業の財務分析の方法を紹介したうえで、ケーススタディー方式でトレーニングしていく形になっています。
一口に財務分析といっても利害関係者が多岐にわたる大会社と違って、代表者、税務署、銀行(取引先)程度の利害関係者を想定しなくていい中小企業では、その方法は大会社のそれと全然違ってきます。その中でも3冊目のこの本は、特に中小企業の粉飾決算に的を絞って書かれています。
はしがきの、
中小企業の粉飾決算であれば、
「9割以上の確率で粉飾を見抜くことができる。」
「25%以内の誤差で、粉飾額を推定できる。」
「決算書、科目内訳書、税務申告書があれば、1社の分析には5〜10分あれば十分」
という、自信満々な著者の言葉がいい感じです。
ちなみに本書の章立ては以下の様になっているのですが、特に「粉飾決算を体験してみよう」という章が斬新で面白いところでした。
中小企業における収益力の分析方法
中小企業における粉飾決算書の分析方法
その他の留意事項
キャッシュフロー分析の基本
粉飾決算を体験してみよう
財務分析ケーススタディ
金融機関における財務分析業務
事例をもとに「あなたが中小企業の社長であれば、どこから粉飾したくなるでしょうか?」という感じで、比較的ライトな方法から、完全にダメな行為までを順位をつけて紹介しています。
私自身会計事務所で働くようになってからしみじみと実感していることですが、決算書を作成する側が「なぜ粉飾をするのか?」、「どこが粉飾しやすいか?」という『粉飾のベクトル』が分かれば、自然におかしな点が見えてくるようになります。
その点この本は、粉飾の手順を追っていくという方法で、粉飾をやってしまう経緯を疑似体験させるところが面白いところです。著者が会計士さんだけあって、利用する側も一度は作成する側の視点を持つことを大事になさっているのでしょうね。
本書の中の「粉飾の善悪」というコラムで、著者が読者である融資担当者に対して
「中小企業の決算書は粉飾されて当たり前なので、『粉飾なんてとんでもない!』という姿勢ではなく、『どのぐらい粉飾してますか?』と軽い気持ちで質問できる関係ぐらいの方が望ましい・・・。」
といった旨のことを書いておられるところに、そんな思いを垣間見ることができました。
このシリーズは今回が3作目ですが、どの本も金融機関の融資担当者向けに中小企業の財務分析の方法を紹介したうえで、ケーススタディー方式でトレーニングしていく形になっています。
一口に財務分析といっても利害関係者が多岐にわたる大会社と違って、代表者、税務署、銀行(取引先)程度の利害関係者を想定しなくていい中小企業では、その方法は大会社のそれと全然違ってきます。その中でも3冊目のこの本は、特に中小企業の粉飾決算に的を絞って書かれています。
はしがきの、
中小企業の粉飾決算であれば、
「9割以上の確率で粉飾を見抜くことができる。」
「25%以内の誤差で、粉飾額を推定できる。」
「決算書、科目内訳書、税務申告書があれば、1社の分析には5〜10分あれば十分」
という、自信満々な著者の言葉がいい感じです。
ちなみに本書の章立ては以下の様になっているのですが、特に「粉飾決算を体験してみよう」という章が斬新で面白いところでした。
中小企業における収益力の分析方法
中小企業における粉飾決算書の分析方法
その他の留意事項
キャッシュフロー分析の基本
粉飾決算を体験してみよう
財務分析ケーススタディ
金融機関における財務分析業務
事例をもとに「あなたが中小企業の社長であれば、どこから粉飾したくなるでしょうか?」という感じで、比較的ライトな方法から、完全にダメな行為までを順位をつけて紹介しています。
私自身会計事務所で働くようになってからしみじみと実感していることですが、決算書を作成する側が「なぜ粉飾をするのか?」、「どこが粉飾しやすいか?」という『粉飾のベクトル』が分かれば、自然におかしな点が見えてくるようになります。
その点この本は、粉飾の手順を追っていくという方法で、粉飾をやってしまう経緯を疑似体験させるところが面白いところです。著者が会計士さんだけあって、利用する側も一度は作成する側の視点を持つことを大事になさっているのでしょうね。
本書の中の「粉飾の善悪」というコラムで、著者が読者である融資担当者に対して
「中小企業の決算書は粉飾されて当たり前なので、『粉飾なんてとんでもない!』という姿勢ではなく、『どのぐらい粉飾してますか?』と軽い気持ちで質問できる関係ぐらいの方が望ましい・・・。」
といった旨のことを書いておられるところに、そんな思いを垣間見ることができました。