終わりまであとどれくらいだろう (双葉文庫 さ 29-1)
「アレルヤ」から2年半、僕はずっと桜井鈴茂の本を待ち続けた。今回は6人の様々な人々の人生の断片が描かれている。と言ってもそこに盛られた毒はハンパじゃなかった。みんな何かにハマり、何かを諦め、何かと戦い、何かにすがる。何かに対してはクズみたいに邪悪な自分と、何かに対しては天使みたいに純粋な自分を抱えてる。 読みながら僕は吉田修一の「ランドマーク」や 村上春樹の「アフターダーク」と同じような感触を思った。でも彼らの描いた世界は底なし沼のように僕ダークな気持ちにさせたけど、この本を読んだ後には不思議な光がさしている。もしくは角田光代が言うように「びっくりするほど美しい景色が見える。」自分の中の悪魔と天使の戦いは日常のようにづっと続く。どこかで戦争が起きようが、大地震が来ようと、気付けば日常という戦いに戻っている。この本を読んで、僕らにとっては「日常」こそが闘いなのだということに改めて気づいた。 「終わりまであとどれくらいだろう」と僕も思う。でも多分、終わりはこない。 だからみんなに天使に勝って欲しいと思う。少なくとも負けないで欲しい。
アレルヤ (双葉文庫)
While Murakami Haruki goes underground and Murakami Ryu goes chasing fantasies in Hokkaido, Sakurai Suzumo does an uncanny job of keeping the reader in the here and now - on the street, in bars, at home with friends. But, far from being hardbitten, this everyday reality achieves a pathos and almost tenderness through a narrator who's hopeful and despairing and timid and impulsive all at once. This is a fantastic read for anyone who appreciates good writing and anyone who wants to catch a glimpse of twenty-something lifestyles in post bubble Japan.