伝説のアクション・ヒーロー映画ランボー・シリーズ最新作のノヴェライゼーションです。本作は通算四作目、前作から実に20年振りの新作で恐らくこれが最後になりそうです。最後と銘打たれているのは製作・監督・主演のスタローン氏の年齢的な理由からと想像致します。ストーリーは現代社会の史実に根ざしています。ミャンマーの軍事政権が、先住少数民族カレン族を弾圧し虐殺を繰り返していた。彼らの村に医療救助に向かったキリスト教団体の6人のアメリカ人が消息を絶った。半月前にタイの小さな町で暮らしていたランボーが、彼らの
看護士サラに懇願されて潜入を手助けしたのだったが。やがて、彼らは軍事政権に拉致された事がわかり、教会関係者に大金で雇われた5人の傭兵が乗り込んで来た。
映画の最大の見せ場は、弓矢や機関銃・爆弾等の武器を手に、数の上で圧倒的な不利にもかかわらず奇襲を掛けて人質を奪還する衝撃的で凄まじい戦闘と殺戮シーンにありますが、我らがランボーが厭世的な人生を送ってきた中で正義を信じる純粋なサラと出会って再び人間性に目覚め、己の身を犠牲にしても彼らを救い出そうと悪鬼の如く奮闘しているのだという事実は認識しないといけないと思います。彼は単なる戦闘マシーンではなく、お金とスリルを求めるだけで身の危険を感じると一目散に逃げ出す傭兵達とは全く違う、寡黙ですが志の高い真のヒーローでしょう。組織でなく少数派の戦いでは、殺るか殺られるかの刹那的な対処が精一杯で歴史は変えられず、それは極めて現実に近い姿です。本書を読んで映画を見たら、今もこの世界にある人間の愚かな戦闘本能が実感され、きっと今自分が平和に生きている幸せがより一層愛しく思えるでしょう。