バッハ:6つのフルート・ソナタ
スイス・クラーヴェスに録音されたペーター=ルーカス・グラーフの2回目の録音(の一部)。グラーフはベーム式フルートの現代楽器を使用しており、音色の変化、強弱のつけ方を含めて、現代楽器の能力をフルに発揮した、実にメロディックな演奏である。グラーフの演奏から感じる伸びやかな明るさは、同じくベーム式の演奏者であるニコレの冷厳なほどの演奏とはほぼ対極にあるもので、ともすれば厳格で冷徹な印象にもなりがちなバッハの別の一面を思い出させてくれる。
この録音がなされた当時はバッハのフルートのためのソナタはBWV1020も含めて録音するのが「全集」としては一般的だったが、その後「真作でない」ものは親しまれている作品も全て排除し、真にバッハの筆になるものだけを取り上げる風潮になったため、実質的には偽作も含む全集の最後の時代に当たる。このような「真作でない」ものを排除する姿勢は、モーツァルトにおいても同様の風潮が見られるが、音楽学者的な観点からは適切だとしても、単なる音楽愛好家にとってみれば楽しい一時を過ごすための機会を取り上げられているだけの話であって、余計なお世話であると言いたい。「オーセンティク」な演奏スタイル共々迷惑な原理主義に過ぎないものであって、早く淘汰されることを切に望むものである。
さて、この録音は嘗てポリドールからLPで発売された時には2枚組で、イ長調ソナタ(BWV1032)の第1楽章は欠落している部分以外が収録されていた。尤も、欠落部分の手前からフェードアウトするような録音スタイルは違和感を感じざるを得ないものでもあったが。CD一枚に収録するにあたって、この問題ありの第1楽章は収録対象から全面的にカットされてしまっているが、曲自体はイ長調の輝かしい明るさを前面に出したものなので、カットされたのは残念なところである。
この録音がなされた当時はバッハのフルートのためのソナタはBWV1020も含めて録音するのが「全集」としては一般的だったが、その後「真作でない」ものは親しまれている作品も全て排除し、真にバッハの筆になるものだけを取り上げる風潮になったため、実質的には偽作も含む全集の最後の時代に当たる。このような「真作でない」ものを排除する姿勢は、モーツァルトにおいても同様の風潮が見られるが、音楽学者的な観点からは適切だとしても、単なる音楽愛好家にとってみれば楽しい一時を過ごすための機会を取り上げられているだけの話であって、余計なお世話であると言いたい。「オーセンティク」な演奏スタイル共々迷惑な原理主義に過ぎないものであって、早く淘汰されることを切に望むものである。
さて、この録音は嘗てポリドールからLPで発売された時には2枚組で、イ長調ソナタ(BWV1032)の第1楽章は欠落している部分以外が収録されていた。尤も、欠落部分の手前からフェードアウトするような録音スタイルは違和感を感じざるを得ないものでもあったが。CD一枚に収録するにあたって、この問題ありの第1楽章は収録対象から全面的にカットされてしまっているが、曲自体はイ長調の輝かしい明るさを前面に出したものなので、カットされたのは残念なところである。
コンチェルティーノ
今や世界のフルート界の重鎮となった感のある、グラーフ氏のライヴ録音です。確かこの録音時点で御年84歳(!)。そのテクニック(メカニカル)・ブレスコントロール・音楽性にはいささかの衰えもありません。まさに驚きです。
コンサートはバッハのホ長調ソナタから始まり、モーツァルト:ヘ長調ヴァイオリン・ソナタ、シューマン:3つのロマンス、そしてシャミナード:コンチェルティーノと続きます。唯一残念なことは、当日2曲目に演奏されたシューベルト:「萎める花」の主題による序奏と変奏曲がカットされていることです。
CDのどの曲もミスらしいミスが無く、曲の流れを大事にした素晴らしい出来映えだと感じました。以前の彼の演奏だと理詰めで攻めるところがあり、その点が引っかかる…と言う人もいたのですが、今回は同じ理詰めではあるものの、例えばフレージングとかが大きな曲の流れの中で見事に熟成されている、との印象を受けました。
もちろんライヴですので、フルートとピアノが少々ズレたりもしますが、それを補ってあまりある音楽性に溢れていると思います。
評価はシューベルトが含まれていない点はマイナスではあるものの、演奏の出来・CDの完成度、と言う点から星5つとさせていただきます。
コンサートはバッハのホ長調ソナタから始まり、モーツァルト:ヘ長調ヴァイオリン・ソナタ、シューマン:3つのロマンス、そしてシャミナード:コンチェルティーノと続きます。唯一残念なことは、当日2曲目に演奏されたシューベルト:「萎める花」の主題による序奏と変奏曲がカットされていることです。
CDのどの曲もミスらしいミスが無く、曲の流れを大事にした素晴らしい出来映えだと感じました。以前の彼の演奏だと理詰めで攻めるところがあり、その点が引っかかる…と言う人もいたのですが、今回は同じ理詰めではあるものの、例えばフレージングとかが大きな曲の流れの中で見事に熟成されている、との印象を受けました。
もちろんライヴですので、フルートとピアノが少々ズレたりもしますが、それを補ってあまりある音楽性に溢れていると思います。
評価はシューベルトが含まれていない点はマイナスではあるものの、演奏の出来・CDの完成度、と言う点から星5つとさせていただきます。