死霊(3) (講談社文芸文庫)
中学校の卒業間近、人の来ない屋上に通じる階段の踊り場で、宇宙やこの光の反射で見える現実が全てであろうかと友人と語り続けた事がふと懐かしく思い出させられる7章です。
また最も吹き出すシーンが多いです。
昨年、雪深い霧積温泉で何故か養殖されていたテラピア(中東のガリラヤ湖の原産)が、本作中で焼き魚にされて喰われたことを訴えるのには因果さえ、感じてしまいました。
しかし途中で終わってしまっては困ります。
だいたい最後の晩餐にひとり欠けている。
多分私は作者の真意などお構いなしに楽しんでしまったのでしょう。
あらためて、一気に読める環境が好かったです。
また最も吹き出すシーンが多いです。
昨年、雪深い霧積温泉で何故か養殖されていたテラピア(中東のガリラヤ湖の原産)が、本作中で焼き魚にされて喰われたことを訴えるのには因果さえ、感じてしまいました。
しかし途中で終わってしまっては困ります。
だいたい最後の晩餐にひとり欠けている。
多分私は作者の真意などお構いなしに楽しんでしまったのでしょう。
あらためて、一気に読める環境が好かったです。
変人 埴谷雄高の肖像 (文春文庫)
若い世代の著した聞き書きの最高峰のひとつに数えあげられる名著です。著者の木村さんより少し上の年代として、このような書物を待ち望んでいました。
さて、立花隆さんの序文にもあるように、木村さんは全文を5回は書き直している、その実り、息遣いが、行間から立ちこめてきます。また、副題も評伝ではなく「肖像」としているところが控えめに的を射ていると思います。
中身について僕がとりわけすばらしいと思ったのは、木村さんの学生時代の問題意識が質問にぽつりぽつりと現れてきていて、それが嫌味でなく、とても質の高い切実さを伴っていることです。抑制が効いていますが、僕にも覚えのある人生問題に対してとても率直なんですね。そしてまた対象の作家先生方も木村さんの質問に、それぞれの芸風を彩りとして添えながら、誠実に、的確に、歯切れよく、先達として精一杯の対応をしていることが読み取れる、ことです。
これはインタビュアとしての木村さんのお人柄なのでしょうね。同時に、こうした先達と接することのできた木村さんは幸せだなあと、うらやましく思いました。書いて成長するってこういうことなのですね。
そう、こうしてレビューを書いていて思ったのは、この本は「知性とコミュニケーションにおける誠実さ」があふれているということです。薫陶、というのかな。ほんとうにいい本です。僕は木村さんのファンになりました。
そうして、そのような木村さんを生んだことが埴谷さんの「まわりの人たちを励まし、勇気づける」美徳の、最後の、最高の仕事になったのでしょう。
さて、立花隆さんの序文にもあるように、木村さんは全文を5回は書き直している、その実り、息遣いが、行間から立ちこめてきます。また、副題も評伝ではなく「肖像」としているところが控えめに的を射ていると思います。
中身について僕がとりわけすばらしいと思ったのは、木村さんの学生時代の問題意識が質問にぽつりぽつりと現れてきていて、それが嫌味でなく、とても質の高い切実さを伴っていることです。抑制が効いていますが、僕にも覚えのある人生問題に対してとても率直なんですね。そしてまた対象の作家先生方も木村さんの質問に、それぞれの芸風を彩りとして添えながら、誠実に、的確に、歯切れよく、先達として精一杯の対応をしていることが読み取れる、ことです。
これはインタビュアとしての木村さんのお人柄なのでしょうね。同時に、こうした先達と接することのできた木村さんは幸せだなあと、うらやましく思いました。書いて成長するってこういうことなのですね。
そう、こうしてレビューを書いていて思ったのは、この本は「知性とコミュニケーションにおける誠実さ」があふれているということです。薫陶、というのかな。ほんとうにいい本です。僕は木村さんのファンになりました。
そうして、そのような木村さんを生んだことが埴谷さんの「まわりの人たちを励まし、勇気づける」美徳の、最後の、最高の仕事になったのでしょう。
死霊(1) (講談社文芸文庫)
この小説に登場する人物は傍から見ると、皆頭がおかしいです。しかし、本当にそうなのでしょうか。私たちは本当に物事を正しく見ることができているのでしょうか。私はできていないと思います。なぜなら、あまりに深淵に関わることは恐ろしすぎて人は見ることをしないからです。
ここに登場する人物は皆、深淵を見ようとする人ばかりです。当然、皆が恐ろしい深淵に見つめられているため、恐ろしい運命にまきこまれ、社会から疎外されます。
しかし、そのような不幸にあってもなお、運命に身を委ね、疎外を恐れず突き進む主人公たちに僕は大いなる魅力を感じました。
ここに登場する人物は皆、深淵を見ようとする人ばかりです。当然、皆が恐ろしい深淵に見つめられているため、恐ろしい運命にまきこまれ、社会から疎外されます。
しかし、そのような不幸にあってもなお、運命に身を委ね、疎外を恐れず突き進む主人公たちに僕は大いなる魅力を感じました。