バッハ:無伴奏チェロ組曲(全6曲)
優れた演奏家が、自分にとって重要な曲を再録音する。
2つの間には時間的経緯があり、演奏家は成熟する。
その成熟と変化が、プラスになる場合と、そうならない時がある。
1回目の録音の輝きのほとんどすべてを失ってしまう再録音もあれば、
時の経過と成熟が、1回目とは違った味わいを演奏に加味するケースがある。
前者は、ピリスやバレンボイムのモーツァルトなどで、グールドのゴールドベルクは後者になる。
このアンナー・ビルスマのバッハ「無伴奏チェロ組曲」はどうかというと、そのどれでもない。
どんな音楽が聞こえてくるのかと、期待とともに待ち構えている耳に入ってくるのは、
チェロの、空間そのものが鳴りだしているような、深くて、広い響き。
冒頭の1音から、組曲第6番ジグの最終音まで、これほど気持ちよく通して聴ける演奏はない。
1曲目「プレリュード」の最後の箇所を、ほとんどの演奏家はある種の昂ぶりの中で弾いていくが、
ビルスマはもっと自然に抑えて弾く。高揚感の中に終わっていくのに慣れている耳には、”ん?”という感じが
一瞬残るが、じつはそこが重要で、ゆったりと歩み抜いていくようなペースが設定され、最後まで貫かれている。
そう思えるのは、今回ビルスマが用いた楽器ストラディヴァリウス「セルヴェ」の個性も関係している。
通常のチェロより3センチ以上長いため、低音部がコントラバスに似た豊かな響きになる。
それとのバランスで、高音部や、早く弾いた場合も、飛び跳ねているようなせっかちな印象がない。
ビルスマは「セルヴェ」と語りあい、「セルヴェ」がチェロの新しい王国へビルスマを導く。
チェロの選定と共にビルスマがおこなったのは、バッハの妻アンナ・マクダレーナによる筆写譜(原典)の
徹底した吟味、考察、発見。演奏上の技術的突き詰め(特に右手のボーイング)。
その結果、このアルバムは、コンテンポラリーという言葉の意味を体現する輝かしい成果となった。
クラシック名曲の名演という枠を超えた存在。
言葉を失い、ただ聞こえてくる音楽に包まれる、その至福。
CDには、解説、ビルスマ自身の解説文、曲目解説、楽器についての文章などが付いている。
どれも読みごたえがあるので、訳出されている日本盤を推薦する。
2つの間には時間的経緯があり、演奏家は成熟する。
その成熟と変化が、プラスになる場合と、そうならない時がある。
1回目の録音の輝きのほとんどすべてを失ってしまう再録音もあれば、
時の経過と成熟が、1回目とは違った味わいを演奏に加味するケースがある。
前者は、ピリスやバレンボイムのモーツァルトなどで、グールドのゴールドベルクは後者になる。
このアンナー・ビルスマのバッハ「無伴奏チェロ組曲」はどうかというと、そのどれでもない。
どんな音楽が聞こえてくるのかと、期待とともに待ち構えている耳に入ってくるのは、
チェロの、空間そのものが鳴りだしているような、深くて、広い響き。
冒頭の1音から、組曲第6番ジグの最終音まで、これほど気持ちよく通して聴ける演奏はない。
1曲目「プレリュード」の最後の箇所を、ほとんどの演奏家はある種の昂ぶりの中で弾いていくが、
ビルスマはもっと自然に抑えて弾く。高揚感の中に終わっていくのに慣れている耳には、”ん?”という感じが
一瞬残るが、じつはそこが重要で、ゆったりと歩み抜いていくようなペースが設定され、最後まで貫かれている。
そう思えるのは、今回ビルスマが用いた楽器ストラディヴァリウス「セルヴェ」の個性も関係している。
通常のチェロより3センチ以上長いため、低音部がコントラバスに似た豊かな響きになる。
それとのバランスで、高音部や、早く弾いた場合も、飛び跳ねているようなせっかちな印象がない。
ビルスマは「セルヴェ」と語りあい、「セルヴェ」がチェロの新しい王国へビルスマを導く。
チェロの選定と共にビルスマがおこなったのは、バッハの妻アンナ・マクダレーナによる筆写譜(原典)の
徹底した吟味、考察、発見。演奏上の技術的突き詰め(特に右手のボーイング)。
その結果、このアルバムは、コンテンポラリーという言葉の意味を体現する輝かしい成果となった。
クラシック名曲の名演という枠を超えた存在。
言葉を失い、ただ聞こえてくる音楽に包まれる、その至福。
CDには、解説、ビルスマ自身の解説文、曲目解説、楽器についての文章などが付いている。
どれも読みごたえがあるので、訳出されている日本盤を推薦する。
バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)
チェロ組曲はフルニエのものしか持っていなかったので、そんなに色んな演奏を聴いたわけではありませんが、このバッハは生き生きとしていてまさに舞曲であります。
ダンスの持つ野蛮さと美しさを兼ね備えていて飽きさせません。
ピリオド楽器なので半音低く聴こえますが、古楽奏法がどうとか、頭でっかちに聴くというより体感するものが大きい。
更に素晴らしいのが解説書!ビルスマのインタビューも楽曲解説もとても面白く勉強になります。
この解説書を読むだけでもかなり満足感がありました。
ダンスの持つ野蛮さと美しさを兼ね備えていて飽きさせません。
ピリオド楽器なので半音低く聴こえますが、古楽奏法がどうとか、頭でっかちに聴くというより体感するものが大きい。
更に素晴らしいのが解説書!ビルスマのインタビューも楽曲解説もとても面白く勉強になります。
この解説書を読むだけでもかなり満足感がありました。
アンナー・ビルスマの世界
アンナービルスマの叙情あふれる演奏です。
ただし、音質は決して良いとは言えないので、デジタルリマスターの作成を強く希望します。
しかしながら、演奏のすばらしさはやはり捨てがたく、聞く価値があります。
ただし、音質は決して良いとは言えないので、デジタルリマスターの作成を強く希望します。
しかしながら、演奏のすばらしさはやはり捨てがたく、聞く価値があります。