西行花伝 (新潮文庫)
この本が名著であることは知っていたが、大部であるし、西行は僧であり歌人であることから、西行のストイックな生涯を描いたやや堅苦しい本なのかと思い、敬遠してきたところがある。今般、出張中の移動時間と空き時間を主に利用して本書を読破したが、いい意味で予想とはかけはなれた内容の書物であった。
何と言っても本書の肝は西行の現世観にある。出家した人は厭世家である、まして名門の出であった西行は当然そうだと私は思い込んでいたし、作中で西行をとりまく人物たちも同じように思い込んでいた。しかし、西行に言わせれば、逆に現世を愛していたからこそ出家したのである。現世に執着すると我欲等のために現世の美しさを十分に味わうことができないというのだ。従って、西行は出家しつつも、積極的に現世に関わることを好み、本書は西行の人生で起こった(であろうこと)をカラフルに描いたものとなっている。
西行と言えば何と言っても歌人であり、本書の随所に歌が散りばめられている。しかし、和歌があまり得意でない人であっても、本書を歴史小説として楽しむことができる。西行の現世への好奇心は凄まじく、女院との恋愛、平清盛との親交、保元の乱回避のための工作、奥州藤原氏との縁、源頼朝との面会など、フィクションも交えているのだろうが、非常にエキサイティングな物語となっており、全く飽きが来ない。そして個人的には本書の白眉は西行の仕事観にあると考えている。仕事は極めて重要であり、徹底して働くべきであるが、仕事の結果については気にする必要はないという考え方は、多くのビジネスパーソンに勇気を与えてくれる。
本書を読むと、人生に対して前向きになれる。落ち込んだ時に読むのもいいかもしれない。常に傍らに置いておきたい、人生のパートナーとも言うべき一冊だと思う。
何と言っても本書の肝は西行の現世観にある。出家した人は厭世家である、まして名門の出であった西行は当然そうだと私は思い込んでいたし、作中で西行をとりまく人物たちも同じように思い込んでいた。しかし、西行に言わせれば、逆に現世を愛していたからこそ出家したのである。現世に執着すると我欲等のために現世の美しさを十分に味わうことができないというのだ。従って、西行は出家しつつも、積極的に現世に関わることを好み、本書は西行の人生で起こった(であろうこと)をカラフルに描いたものとなっている。
西行と言えば何と言っても歌人であり、本書の随所に歌が散りばめられている。しかし、和歌があまり得意でない人であっても、本書を歴史小説として楽しむことができる。西行の現世への好奇心は凄まじく、女院との恋愛、平清盛との親交、保元の乱回避のための工作、奥州藤原氏との縁、源頼朝との面会など、フィクションも交えているのだろうが、非常にエキサイティングな物語となっており、全く飽きが来ない。そして個人的には本書の白眉は西行の仕事観にあると考えている。仕事は極めて重要であり、徹底して働くべきであるが、仕事の結果については気にする必要はないという考え方は、多くのビジネスパーソンに勇気を与えてくれる。
本書を読むと、人生に対して前向きになれる。落ち込んだ時に読むのもいいかもしれない。常に傍らに置いておきたい、人生のパートナーとも言うべき一冊だと思う。
回帰 細川俊夫作品集 音宇宙(9)
毎年レコ芸の現代曲受賞作品をチェックしているが、昨年度は日本人の細川氏の作品が受賞。確かにこれといった目新しい作品はここ数年上がっていなかったのだが。武満トーンが感じられるハープ協奏曲「回帰」、随所威嚇・崩壊を示し鳥肌が立った。「森の奥へ」では床をたたく足音が効果的に世界との関わりを示しているし、「相聞歌」では長唄を現代音楽タッチで表現している。最後の「想起」についてはマリンバという楽器から「うねり」を引き出したもの。アコースティックからの
環境音楽へのアプローチといったところか。全体にリラックスして傾聴できるのがいい。
環境音楽へのアプローチといったところか。全体にリラックスして傾聴できるのがいい。
安土往還記 (新潮文庫)
私は引越す事が多いので、その度町の図書館に大部分寄付するのが慣わしです。
歴史小説もかなり読み漁りましたが、そんな私が結局手元に残した歴史小説はこの作品。
五感はもとより、信長の心象風景までをも、読者の心中に像を結ばせる、まさに名人上手の技を見る思いです。
歴史小説もかなり読み漁りましたが、そんな私が結局手元に残した歴史小説はこの作品。
五感はもとより、信長の心象風景までをも、読者の心中に像を結ばせる、まさに名人上手の技を見る思いです。