世紀のピアニストたちの共演~ヴェルビエ音楽祭&アカデミー10周年記念ガラ・コンサート・ライヴ [DVD]
アルゲリッチがキーシンがレヴァインがそして現在クラシック界の巨匠達がヴェルビエに会して開いた音楽祭のライブ映像。
8台のビアノによる合奏はまさに圧巻。又、共演する弦楽器奏者達もクレメール、マイスキー、今井信子・・・などなどきら星のごとく。
そして、その奏者たち一人一人が心から楽しんで演奏している様子がとてもいい。
この様なドリームチームが実現したのは天上の地(4000m級の山々に囲まれたスイスのスキーリゾート)ならではだろう。
「ウィ・アー・ザ・ワールド」に継ぐ私のお宝映像になりました。願わくば15周年20周年にも是非開催を。
ディレクターのマーティン・エングストレーム氏に感謝。
8台のビアノによる合奏はまさに圧巻。又、共演する弦楽器奏者達もクレメール、マイスキー、今井信子・・・などなどきら星のごとく。
そして、その奏者たち一人一人が心から楽しんで演奏している様子がとてもいい。
この様なドリームチームが実現したのは天上の地(4000m級の山々に囲まれたスイスのスキーリゾート)ならではだろう。
「ウィ・アー・ザ・ワールド」に継ぐ私のお宝映像になりました。願わくば15周年20周年にも是非開催を。
ディレクターのマーティン・エングストレーム氏に感謝。
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第1番&2番
以前から好きなラフマニノフ、先日までは去年購入したツィマーマンのクリアな音色とテクニックが一番のお気に入りでしたが、最近このアルバムを聴いてから、アンスネスがマイブームです。
録音技術のせいだと思いますが、アルバムとしての音はツィマーマン版の方がずっとよろしいかと思います。ただ、アンスネスの奏でる音がより素直に心に響いてきます。テクニックもすばらしいと思いますが、何というか大げさすぎず、ロマンティックに流されすぎない骨太の演奏が大好きです。2番がすばらしいですが、1番もアンスネスの演奏を聴いてから心に残るようになりました。
このあとグリーグ&シューマンのピアノコンチェルトも聴きましたが、いい演奏です。ただアルバムとしての音質がこちらもいまいちなのが悔やまれますけど。
もうすぐ来日するそうですが、遠くて聴きにいけないのが残念。日本でもっとファンが増えるといいな、と思います。
ちなみにアシュケナージ・ハイティンク版も持ってますが、これはまた別の味わいがある名演奏ですね。
録音技術のせいだと思いますが、アルバムとしての音はツィマーマン版の方がずっとよろしいかと思います。ただ、アンスネスの奏でる音がより素直に心に響いてきます。テクニックもすばらしいと思いますが、何というか大げさすぎず、ロマンティックに流されすぎない骨太の演奏が大好きです。2番がすばらしいですが、1番もアンスネスの演奏を聴いてから心に残るようになりました。
このあとグリーグ&シューマンのピアノコンチェルトも聴きましたが、いい演奏です。ただアルバムとしての音質がこちらもいまいちなのが悔やまれますけど。
もうすぐ来日するそうですが、遠くて聴きにいけないのが残念。日本でもっとファンが増えるといいな、と思います。
ちなみにアシュケナージ・ハイティンク版も持ってますが、これはまた別の味わいがある名演奏ですね。
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」&合唱幻想曲
現代を代表するノルウェーのピアニスト、レイフ・オヴェ・アンスネス(Leif Ove Andsnes 1970)によるプロジェクト“Beethoven - A Journey(ベートーヴェンへの旅)”完結編。2014年、プラハでのライヴ録音。これで、ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 1770-1827)のピアノ協奏曲が全曲揃ったことになる。
今回の収録曲は以下の2曲。
1) ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 op.73「皇帝」
2) 合唱幻想曲 op.80
アンスネスの弾き振り。オーケストラはマーラー室内管弦楽団。合唱幻想曲のコーラスはプラハ・フィルハーモニー合唱団。なお、当盤には、合唱幻想曲における4人の独唱者の名前の記載がなく、詳細不明である。
皇帝協奏曲は、ベートーヴェンの書いた最も偉大で、雄大なピアノ協奏曲である。アンスネスのアプローチは輝いていて、鋭い切り口をもって、鮮明な音像を作り上げていて、そこに内包される強靭さや、現代ピアノらしい雄渾なパワーに私は感じ入る。しかし、その一方で、オーケストラの表現は、いつにも増して、室内楽的な緊密さを徹底するという手法がとられている。このピアノとオーケストラのバランスが、本盤の最大の特徴であるが、人によって「いい」とも「良くない」とも感じ取れるものだろう、と思う。
つまり、私はこの演奏を聴いていると、ピアニスティックな効果が、他の演奏ではしばしば埋もれがちな対位法を支える音型の明瞭化など、アナリーゼ(解析)的な面白さを引き出している一方で、特に弦の響きが薄く感じられる点に、どうしても、時々「寂しさ」を感じてしまうからだ。その一種の「寂しさ」を受け入れた上で、確保された見通しの良さから派生する「面白さ」を追求しているわけだが、そこの前提の部分で、大きな抵抗を感じる人には、この演奏は薦めにくいと思う。
象徴的なのは冒頭のカデンツァだ。アンスネスは、まさに偉大な音楽の壮麗な提示に相応しい響きでピアノを奏でる。ところが、一転して弦楽器のみによる第1主題の提示になると、突如として、ありふれた日常の営みに美点を見出すような音楽になり、一気に夢から現実に連れ戻されるような感じなのである。この関係性はその後も継続し、そこには全身全霊を賭けたピアノと、軽妙で軽やかなオーケストラの、不思議なやりとりが展開する。第2楽章の弦も、妙に現実的な描写を感じさせる。ピアノの登場で世界観は変わるが、この一変ぶりを音楽として堪能しきれるかどうか。ここら辺も、聴き手の感性が、逆に試されているような心持ちがする。もちろん、演奏の精度はきわめて高く、目的としたことを高度に達成できていることは疑いないのだけれど。
他方、併録してある「合唱幻想曲」は、まったくそのような懐疑を持つことなく楽しめた。立体的なピアノ、加わってくる管弦の朗らかさ、そして合唱を伴った音楽の豪胆な気迫。祭典的でありながら、内省的な響きもきちんと詰められた、プロフェッショナリズムの漂う、等方向に強度のある音楽だ。
以上のように、シリーズ最後の録音は、たいへん特徴的なものとなった。アンスネスの目指したベートーヴェンとしては、おそらくこれで正しいのだと思うが、この新しい感覚をどのように受け入れるかは、聴き手の音楽指向に大きく依存するだろう。
なお、ライヴであるが、ほとんど雑音はなく、拍手もカットされていて、聴き味はセッション録音に近い。
今回の収録曲は以下の2曲。
1) ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 op.73「皇帝」
2) 合唱幻想曲 op.80
アンスネスの弾き振り。オーケストラはマーラー室内管弦楽団。合唱幻想曲のコーラスはプラハ・フィルハーモニー合唱団。なお、当盤には、合唱幻想曲における4人の独唱者の名前の記載がなく、詳細不明である。
皇帝協奏曲は、ベートーヴェンの書いた最も偉大で、雄大なピアノ協奏曲である。アンスネスのアプローチは輝いていて、鋭い切り口をもって、鮮明な音像を作り上げていて、そこに内包される強靭さや、現代ピアノらしい雄渾なパワーに私は感じ入る。しかし、その一方で、オーケストラの表現は、いつにも増して、室内楽的な緊密さを徹底するという手法がとられている。このピアノとオーケストラのバランスが、本盤の最大の特徴であるが、人によって「いい」とも「良くない」とも感じ取れるものだろう、と思う。
つまり、私はこの演奏を聴いていると、ピアニスティックな効果が、他の演奏ではしばしば埋もれがちな対位法を支える音型の明瞭化など、アナリーゼ(解析)的な面白さを引き出している一方で、特に弦の響きが薄く感じられる点に、どうしても、時々「寂しさ」を感じてしまうからだ。その一種の「寂しさ」を受け入れた上で、確保された見通しの良さから派生する「面白さ」を追求しているわけだが、そこの前提の部分で、大きな抵抗を感じる人には、この演奏は薦めにくいと思う。
象徴的なのは冒頭のカデンツァだ。アンスネスは、まさに偉大な音楽の壮麗な提示に相応しい響きでピアノを奏でる。ところが、一転して弦楽器のみによる第1主題の提示になると、突如として、ありふれた日常の営みに美点を見出すような音楽になり、一気に夢から現実に連れ戻されるような感じなのである。この関係性はその後も継続し、そこには全身全霊を賭けたピアノと、軽妙で軽やかなオーケストラの、不思議なやりとりが展開する。第2楽章の弦も、妙に現実的な描写を感じさせる。ピアノの登場で世界観は変わるが、この一変ぶりを音楽として堪能しきれるかどうか。ここら辺も、聴き手の感性が、逆に試されているような心持ちがする。もちろん、演奏の精度はきわめて高く、目的としたことを高度に達成できていることは疑いないのだけれど。
他方、併録してある「合唱幻想曲」は、まったくそのような懐疑を持つことなく楽しめた。立体的なピアノ、加わってくる管弦の朗らかさ、そして合唱を伴った音楽の豪胆な気迫。祭典的でありながら、内省的な響きもきちんと詰められた、プロフェッショナリズムの漂う、等方向に強度のある音楽だ。
以上のように、シリーズ最後の録音は、たいへん特徴的なものとなった。アンスネスの目指したベートーヴェンとしては、おそらくこれで正しいのだと思うが、この新しい感覚をどのように受け入れるかは、聴き手の音楽指向に大きく依存するだろう。
なお、ライヴであるが、ほとんど雑音はなく、拍手もカットされていて、聴き味はセッション録音に近い。
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番&第4番
「Beethoven - A Journey(ベートーヴェンへの旅)」と題しての、現代を代表するピアニストの一人、レイフ・オヴェ・アンスネス(Leif Ove Andsnes 1970-)による、弾き振りでのベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 1770-1827)のピアノ協奏曲全曲録音のプロジェクト。本盤は、その第2弾として、2013年にセッション録音されたもの。以下の2曲を収録。
1) ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 op.19
2) ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 op.58
オーケストラは第1弾に引き続いて、マーラー室内管弦楽団。当初は、ライヴ録音で全集化するというアナウンスがあり、先にリリースされた第1番と第3番は実際にそうだったのだが、今回はセッション録音となった。しかし、その結果、当盤は、より完成度の高い録音芸術になった趣で、この変更は歓迎したい。
このアルバムを聴いて、最初に感じたのは「第2番と第4番という組み合わせは、とてもいいな」という事である。変ロ長調とト長調というのは、特に古典的な明朗さや力強さが端緒に発揮される調性なので、聴いていて、全体的なカラーに統一感がある。加えて、聴き手に与える幸福感を増強する組み合わせであるとも言える。まあ、その辺は、聴き手の私の側に、前もってそういった思い込みがあるためかもしれないが・・・
それにしても、当盤の聴きあたりは、すこぶる良い。しかも新鮮味に溢れていて、とても楽しかった。
第2番という楽曲は、ベートーヴェンがいちばん最初に書いたピアノ協奏曲で、そのため「習作的」位置づけで見られることが多い。確かに他の作品と比べると、こじんまりとした印象がある。しかし、実際に聴いてみると、とても魅力的で個性的な音楽であると思う。
この曲は、軽妙な爽やかさと雄弁さを併せ持っていて、つまりモーツァルト的なものと、ベートーヴェンらしさが交錯するような、軽重の妙味がある。さらに、第1楽章のカデンツァは、不思議な憂いを感じさせるところもあって、思索的な深みさえ感じさせる。
アンスネスの演奏は、清流を思わせる爽快な活力に満ちている。浪漫的な起伏を敢えて設けることはせず、簡素で古典的な佇まいでありながら、ピアニスティックな味わいは精妙を究める。一聴した感じでは、インテンポで起伏の小さい流線型の演奏と思うが、明晰な音楽的処理の連続が、聴き手の気持ちに呼応し、豊かな味わいの様な残り香を漂わせてくれる。これがなんとも気持ち良い。新緑の中で、さわやかな風と木漏れ日を感じているような気持ち。
第4番も同様のスタイルで、この曲の場合、もっと巨匠ふうに大らかな味わいを引き出すことも出来るのだけれど、アンスネスは端正に、スピードを維持した上で、彫像性を構築していく。華美な味付けはせずに、メロディの持つ情緒を損なわない均衡性の高い古典的な様式美を示している。こちらも第1楽章のカデンツァにこの演奏の特徴は顕著に表れているのではないだろうか。流麗な、しかし、細やかなベクトルを織り交ぜて、溌溂たる表現だ。起伏は大きくはないのだけれど、しっかりとニュアンスを汲んだ心地よい力感がある。
オーケストラも全般に優れた演奏で、アンスネスのやりたい音楽を理解した万全の意思疎通を感じさせる。曖昧さの残らない精度の高い表現で、作品の隅々までを克明に照らし出している。
現代的かつ新鮮なベートーヴェン像を浮かび上がらせることに成功した演奏だろう。アンスネスのベートーヴェンへの適性の良さが証明されており、今後も、彼の芸術活動には、幅広い展開に期待したい。
1) ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 op.19
2) ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 op.58
オーケストラは第1弾に引き続いて、マーラー室内管弦楽団。当初は、ライヴ録音で全集化するというアナウンスがあり、先にリリースされた第1番と第3番は実際にそうだったのだが、今回はセッション録音となった。しかし、その結果、当盤は、より完成度の高い録音芸術になった趣で、この変更は歓迎したい。
このアルバムを聴いて、最初に感じたのは「第2番と第4番という組み合わせは、とてもいいな」という事である。変ロ長調とト長調というのは、特に古典的な明朗さや力強さが端緒に発揮される調性なので、聴いていて、全体的なカラーに統一感がある。加えて、聴き手に与える幸福感を増強する組み合わせであるとも言える。まあ、その辺は、聴き手の私の側に、前もってそういった思い込みがあるためかもしれないが・・・
それにしても、当盤の聴きあたりは、すこぶる良い。しかも新鮮味に溢れていて、とても楽しかった。
第2番という楽曲は、ベートーヴェンがいちばん最初に書いたピアノ協奏曲で、そのため「習作的」位置づけで見られることが多い。確かに他の作品と比べると、こじんまりとした印象がある。しかし、実際に聴いてみると、とても魅力的で個性的な音楽であると思う。
この曲は、軽妙な爽やかさと雄弁さを併せ持っていて、つまりモーツァルト的なものと、ベートーヴェンらしさが交錯するような、軽重の妙味がある。さらに、第1楽章のカデンツァは、不思議な憂いを感じさせるところもあって、思索的な深みさえ感じさせる。
アンスネスの演奏は、清流を思わせる爽快な活力に満ちている。浪漫的な起伏を敢えて設けることはせず、簡素で古典的な佇まいでありながら、ピアニスティックな味わいは精妙を究める。一聴した感じでは、インテンポで起伏の小さい流線型の演奏と思うが、明晰な音楽的処理の連続が、聴き手の気持ちに呼応し、豊かな味わいの様な残り香を漂わせてくれる。これがなんとも気持ち良い。新緑の中で、さわやかな風と木漏れ日を感じているような気持ち。
第4番も同様のスタイルで、この曲の場合、もっと巨匠ふうに大らかな味わいを引き出すことも出来るのだけれど、アンスネスは端正に、スピードを維持した上で、彫像性を構築していく。華美な味付けはせずに、メロディの持つ情緒を損なわない均衡性の高い古典的な様式美を示している。こちらも第1楽章のカデンツァにこの演奏の特徴は顕著に表れているのではないだろうか。流麗な、しかし、細やかなベクトルを織り交ぜて、溌溂たる表現だ。起伏は大きくはないのだけれど、しっかりとニュアンスを汲んだ心地よい力感がある。
オーケストラも全般に優れた演奏で、アンスネスのやりたい音楽を理解した万全の意思疎通を感じさせる。曖昧さの残らない精度の高い表現で、作品の隅々までを克明に照らし出している。
現代的かつ新鮮なベートーヴェン像を浮かび上がらせることに成功した演奏だろう。アンスネスのベートーヴェンへの適性の良さが証明されており、今後も、彼の芸術活動には、幅広い展開に期待したい。