□ポランスキー監督は、「ローズマリーの赤ちゃん」「チャイナ・タウン」等、アメリカ時代は才気みなぎっていたが、「フランティック」でがっかりさせられた。ところが「戦場のピアニスト」では、映像表現に対するエネルギーが漲っていて、ポランスキー復活と思った。他の方の評価が高いし、原作もベストセラーということで大いに期待していたが、結果として「戦場のピアニスト」程引き込まれる作品ではなかった。ブロスナンは二枚目過ぎて主相に見えないし重量感がない。キム・キャトラルは好きな女優さんだが、どちらかといえばコメディー向きの資質の感あり。チョイ役のジェームズ・ブルーシ、イーライ・ウォラックのほうが味があり印象に残った。だからといってチープな感じはなく、セットにも細部に至るまで神経が行き届いて、作る側の熱意は感じられる。プロットは意外な結末で最後まで謎解きの楽しさはある。最近流行のCGや、カメラの動きすぎもない。ただ、ポランスキーがどんなに努力しても俳優たちの力量が今回の作品に及ばなかったと思う。ミステリーなら理屈よりも、もっとハラハラドキドキさせて欲しかった。しかし、それでも一度は観るに値すると思う。大人向けの作品が少なくなっている近年、ポランスキーは高い表現意欲で、大人の映画を作り続ける映画監督だからだ。