The Last Shogun: The Life of Tokugawa Yoshinobu
この本の原作を読んでいますので、英語力に難のある私でも本書を読めました。概ね面白くはあったのですが、違和感が結構ありました。そして、この違和感が減点の理由です。
まず、慶喜公を「Keiki」と記していること。一説によれば、「Yoshinobu」よりも「Keiki」と呼ばれることを、慶喜公自身が好んでいたとはあるものの、「Yoshinobu」が一般的なのではないだろうかと。どうも、読んでいて引っかかります。
次に、慶喜公の粋な科白の言回しが、平凡な訳になっていること。並みの翻訳者では、日本の尊敬語あるいは謙譲語を上手く訳せないのは仕方がないことですか。例えば、「As long as I,Keiki,am here,and as long as I am protector of His Majesty's person,you may be assure there is no need for alarm.」(原作:「慶喜がこれにあり、玉体守護し奉るかぎり、御心配無用とおぼしめせ」)などは、「うーん」と首をひねってしまいます。味のある科白の妙味が、なくなっちまってます。他にも違和感がある箇所はありますが、いちいち挙げません。
一方で、冒頭に登場人物の紹介や、徳川家の系図があったり、それが案外詳しかったりするので、そこは感心しますけれど。
まあ、時間のある方にはお薦めです。
桂米朝 上方落語大全集 第一期
この全集は一枚一枚ばらしての購入は出来ない。
10枚セットだから価格もチョット高めである。
が、この商品、買って損はしないと私は思う。
同じ本を20代に読むのと30代に読むのとは、
理解の仕方も感じ方も違う、落語もそういうものである。
落語は肉体表現である。
米朝の、この年齢、この声にはここでしか会えない。
録音時期がかわって数種類の全集が発売されているが、
これは若いときのものである。
ココだけでしか聴けぬと思われるもの、抜粋しておく。
ディスク1 魚の狂句
ディスク4 動物園
ディスク5 佐々木裁き・米揚げ笊
ディスク6 親子酒
ディスク7 蟇の油・商売根問
ディスク8 明石飛脚
坂の上の雲〈1〉 (文春文庫)
初めに断っておくが、本書は小説である。
断っておかねば史学の研究者が明治史を一般向けに解説した学問書と勘違いしそうなほど、本書では歴史に関して掘り下げた考察がなされている。
現に本書を恰も研究論文であるかのように史学の見地から批判する記事を幾度か目にした。
が、本書は完全なフィクションではないにせよ創作の範囲を出ない。
創作物である本書を学問の立場から批判するのはいささか酷のように思える。
それはさて置き、本書は主に日露戦争に焦点をあてつつ近代日本の生い立ちを描いた作品だ。
元々台詞の少ない司馬先生の作品のなかでも特に台詞が少なく、考察部分が多くを占める。
従って文章を読むのが苦手な者には少々読みづらい作品ではあるかもしれない。
しかし明治という、それまでの日本を土台にしつつそれまでと全く違う、本邦が初めて国家として体系を為した時代を、またそこに生きた人々を、迫力を以って語ってくれる。
戦争の記述に関しても戦闘描写が本意ではないと述べつつ、緻密な筆致で表現されていて読んでいて手に取るように状況が想像できる。
一部の登場人物をあからさまに悪者に仕立てているという指摘もあるにはある。
しかしよしんばそれが事実だとしても、その悪者は悪者で確立した人柄がきちんと描かれており、現実感は損なわれるどころかむしろ増している観がある。
近代日本史について深く考察しつつ、現実的な物語を身震いするほどの迫力で伝えてくる秀作だと思う。
坂の上の雲 第3部 ブルーレイBOX [Blu-ray]
私は中学二年生なのですが、刑事ドラマや学園ドラマのようなフィクションのものよりも、このような事実を基にした硬派なドラマが好みなのです。
1期から見始めましたが、脚本、配役、BGMとどれをとっても良かったです。久石 譲さんの音楽はどれも良いです。
個人的には戦争の描写が大好きなので、奉天会戦や旅順制圧戦、二〇三高地、そしてラストの日本海海戦で10話くらいたっぷり使ってもっと戦争についてやってほしかったです。
特に二〇三高地は、あんな簡単に制圧できなかったはずです。しかし、全体的な評価は非常に高いので☆5といたします。
このような戦争もののドラマが今後も製作されるよう期待を持ちたいと思います。