利休にたずねよ
山本氏の作品自体は素晴らしい出来栄えである。特に最後の張り詰めたクライマックスは、利休の異様な本質を露呈させる設定で、長く尾を引く余韻をかもし出す。しかし、作品の直後におかれた宮部みゆき氏による「解説」は、そんな緊張感と余韻とを一気にぶち壊す無神経さにあふれている。松本清張賞やら直木賞やら、高名な文学賞の選考委員をしている人からは想像もできない軽薄な内容で、秀逸な作品を読み終えた直後に、こんな解説を読んでしまった事が悔やまれた。自分が作者の山本氏であったなら、さぞかし苦々しい不愉快な思いにとらわれたことだろうと思う。優れた作品の解説には、それなりの名文を選んでほしい。
命もいらず名もいらず_(下)明治篇
禅僧の白隠をしても「禅の病気」と言い放つ禅師によって「あるがままをよし」とする富士山を眺めての悟りが秀逸。維新後の水戸藩(茨城県)、唐津藩(佐賀県)などの騒動をあっという間に治めた鉄舟の極意は、適材適所。全てを自分でやろうとしなくなった鉄舟は無敵に。
利休にたずねよ (PHP文芸文庫)
今までも数多くの分析がなされ、文芸作品でも描かれた利休。
武士にも負けぬ気迫あふれる凄みある文化人としての利休の姿は魅力的。
茶道で天下と向き合ったそのパーソナリティを小説で堪能できるのがとてもいい。