ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫)
何の予備知識もなく、もちろん著者も知らず、毎月必ず一通り眺める
新潮文庫の新刊コーナーにあり、「精神に障害をきたすとき、その目には
何が映っているのか。」という帯、統合失調症闘病記とある副題に惹かれた。
そして中身をパラパラとみてみると、どうも実に整然と活字が組まれている
気がして。
弁護士としても、少なくない数の同病の人と接してきたこともあるし、
それを措いても、「事実」としてどうにも知っておきたくなった。
文章も整っていて、非常に読みやすい。発病していくところなんかは、
こちらはこのあと発病すると知っているから、そう思って読むが、
そうでもなければ全くこれが病気前夜とは分からないくらい、
論理的で、やはり彼らの認識する「事実」と(そんな抽象的なものがあるとすれば)
我々一般の認識する「事実」との境目が非常に曖昧であることが
否応なしにわかる。
前に「東郷室長賞」という名前ででていたらしく、そのタイトルで調べると
★一つになっているけれども、僕はこれは傑作だと思う。(このあたり
もうすでに筆者の口調が伝染してるけど)
「妄想」なのか「ほんとに起きたことの記憶」なのか、それがわからない
くらい一貫しているところが、僕にとってはミソだと思うし、それが
読みにくいのはやはりこの手の人たちが「難しい」理由そのものな気がします。
後半はたしかに理屈が勝っていて、ひたすらややこしいところがありますが、
僕は、この本の前半だけでも620円払って読むべき本であると思います。
エミリー・ローズ デラックス・コレクターズ・エディション [DVD]
霊の類を何一つ信じてない自分としてはエミリーは精神病の類だったんだと思いますね。
単純にそう思いながら見ても、あの凄すぎる演技力に圧倒されました。
作中の霊肯定派の意見は理解できませんでしたが。
見る人によってだいぶ印象の違うと思いますが、
霊を信じてる人にはとても衝撃的な内容なんでしょう。
主演女優の演技力に☆4
マンガでわかる!統合失調症
作者のお母様が漫画が読めるほどに回復なさっているということが素直に嬉しいです。
「わがやの母はビョーキです」1.2巻はとても感動したのですが
中村ユキさんが書くときに抱いた不安「統合失調症が包丁を振り回す
恐ろしい病気だと思われたらどうしよう」という考えが私の中にもありました。
というのも、私は当事者だからです。偏見の目にさらされることを
怖がっている節があります。恋人には告げましたが、作業所以外の友人の誰も
自分が統合失調であるとは知りません。今後も言うつもりはないです。
でも、中村ユキさんはやってくれました。こころさんという比較的穏やかな経過を
辿る人を主人公に、この病気を分かりやすく、誤解の無いよう、そして
変なきれい事(この病気になる人は頭が良いとか、そういう噂のことです)を
書かずに現実をしっかり書いているところが非常に良かったと思います。
同じ統合失調の仲間も「少し難しいけど、面白い」と褒めていました。
確かに漫画として読むと少し難しい処はありますが、専門書として読むととても
分かりやすく、参考になる、お勧めの本です。
PRANA DANCE
トランペットという楽器から出ているとは思えないほど暖かくて、繊細で技巧的なフレーズ、
そして類まれな作曲能力とハンディキャップ・・・。
トム・ハレルを知らない人に紹介する場合、一言でいうならこんな感じだろうか。
マイルスのようなスタイルを連想するひとが多いかもしれないが、マイルスのように強烈に
聞き手に突き刺さしてくるようなタイプでない。
あくまでも控えめに、優しくささやいてくれる。しかし、そのひとつひとつの音色とフレーズは
夜空に散らばる星屑のように光り輝いている。
そんなトムのスタイルはうれしいことに、昔から変わりなくこの最新作でも十分に堪能できる。
フェンダーローズを使用している楽曲が多く、全体的に幻想的な雰囲気を作り出し、
知らない風景が続いていく旅をしているような気分にさせてくれる。大きな期待と少しの不安が
まざったようなドキドキとワクワク感。
個人的には7曲目の「THE SEA SERPENT」がお気に入り。
色気のあるフェンダーローズの音色から、テーマ〜トムのソロと続いていく流れも美しい。
初めて聴く人にも十分にオススメできるアルバムだし、90年台後半〜00年台始めごろの
ストリング入りビックバンドより、こちらのほうがトムの魅力が分かりやすく伝わると思う。
間違いなく現在同じ時代を生きているジャズ・ジャイアントのひとりだろうし、
本当に多くの人に聴いてもらいたい。
最後に、ハンディがありながらコンスタントにリーダー作をだしてくれるトムに、
ただただ、ありがとうと言いたい。
統合失調症 (PHP新書)
100人に1人の発症という意外に身近な心の病、統合失調症について、それを知らない人も具体的に理解できる。例えば芥川龍之介の患った注察妄想など。
何よりも病む者の側に立つ視点がこの著書にはある。つまり遺伝や性格だけではなく、それ以上に社会的な要因に照明が当てられる。近代化されていない社会との比較は説得力がある。逆に言えば、今日の社会や家族の側の受容体制こそ問題なのかもしれない。
フィルターをかけるのが苦手という認知的特徴は、病の早期発見に繋がるのだろうか。まだまだ解明されていないことは多々あるようだ。
この病の治療史の概略や治療薬についての言及がきちんとあり、特に患者を支える家族にとり役立つと感じられた。