新版 古寺巡礼京都〈26〉清水寺
春には、ちょうど清水の舞台から見下ろせば、幾枚もの着物を重ねたような桜の織り重なりが見事に鮮明に目に焼きつく清水寺です・・・
好きなお寺は幽玄的な泉涌寺どすし、それから幻想的な東福寺やとか、あっそうや、曼殊院も気に入ってるし、そやかてまだまだ、思い出して数え上げたら二十や三十は出てくるはずで、京都で生まれ育った私には、お寺のある風景は、普通の、何の変哲もない日常茶飯事のことどす。(舞妓さんじゃあるまいし実際にはこの様な京言葉は使いません)
お寺好きが高じて小学生の時に「社寺仏閣研究会」というクラブを作って京都中のお寺や神社を見て回ったのを自慢げに父に話すと、親子は似るもんやなワシも小学生の時に「お寺鑑賞同好会」を作って京都はおろか奈良まで行ったんやでえ、やて。いややわ〜あ、すかん蛸。
その中でも清水寺はいってみれば私のホームグランドでした。すぐそばに住んでいたので、遊び場で通学路で、単に近いだけでなく四季の花々の美しさ綺麗さは天下一品で、春は桜・秋は紅葉の花見に家族総出で散し寿司や酒さかな、飲めや歌えの酒宴・吟行は毎年恒例の行事として子供心にも訳判らずとも愉しみでした。
春の穏やかな風を感じて境内の子安の塔の近くの草原に座って本を読んだり、それからこれはいわば穴場なんですが、音羽の滝を過ぎて阿弥陀堂・釈迦堂も後にして普通の参観者も足を踏み入れたことのないもっと奥へ入り込むと、忽然と奈良時代か平安時代にさかのぼったような森林の中で神聖な気持ちで沐浴したり、さらに分け入って地主神社や成就院から離れてギター弾き語りで歌を作ったり落語の練習をしたり、仁王門の横で観光客相手に気紛れでにわかガイドになってお寺の歴史を講釈したりなど、思い出は尽きません。
この本で清水寺貫主の森清範と『ジョゼと虎と魚たち』の田辺聖子は、寺の来歴や見所を存分にあますところなく語っています。
ただ私自身は読んでいくうちに、思い出が頭を持ち上げてきて半分以上前述のようにノスタルジーに浸って書くしかない情況が現出してしまいました。
鮮明に、幼い頃の母との会話が甦って来ました。
「どこ行くねん?」
「ちょっと、きよみずさんまで」
京都おさんぽマップ (ブルーガイド・ムック)
3年ぶりの京都旅行にガイドブックを新しく買おうと検索して、価格で決めた。紙質が劣るだけで内容はそん色ないし、かえって軽くて携帯には好都合だった。難点は六波羅密寺へのアクセスがでていなかったこと。初めて京都に行く人にはオススメしないが、2度目以降ならいいと思う。