小説 さくら前線 ~君だけの天使になる~
私かかねがねこの作者の作品については生きた愛を描いているとレビューしてきましたが、今回は死が大きなテーマである。
あまりにも狭いコミュニティで次々に起こるトラブルがあまりにも現実離れしているという意見もあるかもしれない。
しかし、それも、日常的な感情の動きも事件だと考えれば、さもあるかもしれない。
結局根底には登場人物の若さからは想像できない深い愛情がある。純粋であるが故におこるすれ違いや、進まない部分。
天使という立場で見える現実や逆にそれゆえのもどかしさがいっそう物語りに彩りを添えている。
ここには紛れもない生きた愛の証があるといえるのだろう。今回も名作です。
小説 砂時計 (小学館文庫)
従姉妹に借りて以来の砂時計でした。
杏と大悟の視点がメインだったから藤の杏への想いが伝わりにくいなあとか。
脇役の描かれ方が中途半端で勘違いをさせそうだなあとそこは残念でした。
ただ映画の原作本ということを考えると削らないといけないから仕方のないところですね。
それに基本的には忠実に描かれていたので、漫画を思い出すようで懐かしかったです。
あんまり感情移入とかする作品ではなかったので、尚更あの後の杏と大悟がいつまでも幸せでありますように。
なんだかそう願わずにはいられないです。
原発と祈り 価値観再生道場
内田さんのブログも読んでいます。原発供養の話から放射能、呪いの言霊の話、
次に来るべき大地震への心構えの話。内容は多岐にわたります。
鼎談だから、流れるように会話が弾みます。そもそもラジオが発端なので
それが当たり前なのでしょうが。
流れるような会話を読むのが辛いんです。被災地でも福島でも
ないのにそんな感情になるのがおかしいのでしょうか。
「怒り」とか「苦しみ」とか「恨む」などという
言葉は使ってはいけない。自分自身が破滅すると言われます。
確かにその通り。でも福島の高校生がつぶやいた言葉を取り上げて、
それをたしなめるべきだという議論についていけません。
「寛容」確かに重要です。でもそれは、電気を享受して
住宅も仕事も家族も失っていないひとたちに求めるべきであって、
疲労困憊した避難者たちのホテル住まいでの無作法を
とがめるために使うべきではない、私はそう思います。
次の大地震が来るための心構えは、「ここで死ぬんだな」という
締念だと、家族を失ったら「そういうこともあるのかな」と、
そういうことを受け入れることだと書かれています。
これは誰のためにだされた本なのでしょうか。
唯一共感したのは、原発供養の話でした。
関東に住んでいる私にとってまだ大震災と原発に
十分に心理的距離がとれないことが、この本を読んで
実感しました。まだ事故も収束せず、多くの人が復興への足がかりを
模索してい真っ只中なのですから。