人生を豊かに歩むために大切なこと どうでもいいこと
「やりたいことを仕事にしよう」と、よく言う。本書はそこに潜む落とし穴を指摘する。 「やりたいこと」は、世間で良いと言われていることの影響だったり、「やりたくないこと」は、単に経験がないだけの食わず嫌いだったり。さらに、やりたい仕事を選んでも、不本意な異動や倒産など、不測の事態も起きる。 著者は、世間体や固定観念、不測の事態に振り回されず、「本当にやりたいこと」を見つけるために、自分の感覚を持つ大切さを伝えている。 感覚は鈍りやすい。著者自身もある経験を経て、不要なものに振り回されていることに気づいたと告白している。それが3ヵ月にわたる中国での武術修行だ。順風満帆と見られていたキャリアを中断しての決断。地味な基礎稽古を嫌気と戦いながら繰り返す日々の中で、自分の感覚が研ぎ澄まされたと書いている。 その感覚で、著者は今の日本人の「おかしなところ」をばっさり切っている。空気を読む習慣も、その価値を認めつつ、読みすぎて自分の意見が出せなくなる危険を指摘する。 かと言って、自己主張すれば良いわけではない。本書では「相手や会社に対して自分は何ができるか」という視点が繰り返し出てくる。需要がなければモノが売れないのと同様、独りよがりな主張は意味がない。相手の需要をつかむためにも自分の感覚は大切だ。
著者や周りの体験を実例としてあげながら書かれているため、誰でもどこかに思い当たるふしがあると思う。誰でも修行に出られる訳でも、それが良いこととも思わないが、本書を通じてどんな場面でも対応できる骨太な人になるためのヒントを得ることはできる。自分を成長させたい人には、感覚が麻痺していないか、自己チェックする良い機会になるかもしれない。
太極拳が教えてくれた人生の宝物~中国・武当山90日間修行の記 (講談社文庫)
45歳の情けない、弱い姿を見事にさらけだしています。
寺での生活にほとほと疲れ果てた様子、日本に帰ると泣きの連絡を入れる様子、
全て描かれています。
これが、師匠に可愛がられるお利口な弟子の姿しか描かれていないとしたら
興味も半減でした。
帰るといっても、今、そこでの稽古を止めてはダメだという周囲の声に
いらだちながら、結局、予定通り、そこで痛みに苦しみながら稽古をしつづける著者。
そして、日本に帰るときも、特に何かを掴めたと言う感慨もなく、
日本への帰路についた著者。
しかし、変わったのは間違いないようで、
だからこそ、この本を出しているのだと思います。
生臭くて、とてもいい本でした。
一気に読みました。
続けることが才能。