昭和天皇の妹君―謎につつまれた悲劇の皇女 (文春文庫)
よく書かれている。良くできている。真実はわからない。そうなのかもしれないし、そうでないかもしれない。それでいい。問題は、わざわざそれを暴き立てる行為に、何の意味があるのかということだ。もちろん、この本を手に取った時点で、私自身も同じ立場にいるわけだが。
283ページからの付記に、取材後、それを発表した河原氏に何が起きたか。それが書かれている。前半は恨み言に近い内容となっている。しかし、いつもは取材を拒絶されていたから、「やむなく電車を待ち伏せしたりしたが、取材のためやむを得ぬことであり」「私の記事は(中略)スキャンダルを暴いたものではない」…よくそう書けるものだ…。当人がずっと沈黙を守り、周囲もそうしていることを、根掘り葉掘りさらして、それが「スキャンダルを暴いたものではない」とは。そうではなく、河原氏は正直に書くといい。スクープが欲しかった。反響がほしかったと。相手の都合はどうでも良かった。真実をさらすことが自分の正義だと。そう書いたとしても、この本の価値が減ることはないだろう。よく調べてよく書かれていることは事実だ。