ローラ・ブラニガン
ローラには皮肉なジンクスのようなものがあって、それは「先に歌ったのはローラのほうなのに、後から同じ曲をカヴァーした、他のアーティストにヒットを奪われる」というものだ。
Turn The Beat Aroundは、後発のグロリア・エステファンの単調なラテン・ヴァージョンがヒットし、Power Of Loveはセリーヌ・ディオンのくどいヴァージョンのほうがヒットした。どちらもローラのほうが数年先にカヴァーし、リリースもされていたのだけれど。
ひいき目で見なくても、ローラのヴァージョンのほうがソウルフルで、良く出来ていたから、ちゃんとプローモーションをしなかったレコード会社の責任は大だ。
今のローラにはラス・ヴェガスでディナーショーをやるのが専門みたいなイメージがあるかも知れないけれど、このアルバムはダンス・チューン、ポップ(特にReverse Psycologyが最高にキュート)が満載で、バラードにしてもあくびの出るようなものは一つもありません。
ポップス・ファンの方は騙されたと思って聴いてみてください。きっとローラのエネルギーに圧倒されるはず。
Self Control
ローラ・ブラニガンという人はその美人顔とルックスからなんとなく線が細そうに思ってしまうが、どうしてどうして味のあるアルバムを提供する人だ。中低域を中心とした張りのある歌声も素晴らしいけれども、彼女独特の魅力に、その得意声域からシャウト気味のパートや高音域パートへのつながりにふと現れるギャップがある。巧まざるこの微妙な声の揺らぎにはっとするようなセクシーさ、彼女の体温を感じることができるだろう。#1「Lucky One」や#2「Self Control」といった代表曲を聴くと分かるようにちょっと緊張感が高い曲やパートにそんな魅力がにじみ出るのだが、それ以外でも真摯に歌いこんだ彼女のスタイルは好感が持て、聴き込むにつれ彼女が歌声に込めた情感の深さが見えてくる作品だ。