火祭りの踊り~スパニッシュ・アルバム
廉価版ばやりの昨今では比較的高めの価格なので、ちょっと手をださずにいたのですが、買ってよかったです。楽しく情熱的で文句なくいいです。特にインファンテは決定盤だと思います。
イレーヌ (白水Uブックス)
俺を起すな、こん畜生、ろくでなしめ――意表をついた激越な調子で始まる本書。自動記述(オートマティック・ライティング)による不可解な文章が数ページ続いた後、「イレーヌ」という女性の幻影を追って浮世離れした挑発的なドラマが語られていく。
内面凝視の詩的独白あり、イリュージョナルな情景描写あり、霊妙神秘なる女体スケッチあり、生々しい愛欲シーンあり……。創意に満ちた絢爛たるレトリックを基調に、猥雑極まる口語、アナーキーな比喩、毒気あふれる諧謔を炸裂させた〈超誨淫の書〉だ。
序文を書いているシュール系作家A・マンディアルグは「独創性、非凡なイメージ、熱気、辛辣、激しさ、優しさ、色彩性、音楽性、さらに余裕と遊びの風情など、どれひとつとして欠けてはいない」と作品を讃え、その表現世界は大部分においてロートレアモンの衣鉢を継いでいると指摘。なるほど、「ミシンとコウモリ傘との……」で知られる、かの優美なる残酷の叙事詩「マルドロールの歌」を随所で彷彿とさせるものがある。
また、訳者の生田氏は「精神の自由と想像力の勝利を、それにふさわしい〈不埒な〉形式で高らかに歌い上げ」た作品と位置づけ、言葉のパロディーはロートレアモンほか、ランボー、ブルトン、スタンダール、コンスタンらにまで及ぶとしている。
この芸術的資質と俗物性の奇妙な混淆をみせる作品の珍味佳肴を盛った部分は、実際に読んで体感していただくほかあるまい。たとえば、こんな叫びを……イレーヌのえも言われぬ××××よ!
ペーパーバード 幸せは翼にのって [DVD]
劇場でこの映画を見てから、必ずDVDを買おうと思っていました。スペイン内戦から軍事独裁政権時代を生きる人々が丁寧に描かれ、スペインの味のある舞台、風景、家族、友情、人間の尊厳、自由、そのような物すべてが心にしみいります。舞台のシーンではまるで自分がそこにいて、観客と一緒にちょっと固くて古臭い椅子に座って見ているような気分になり、傷つき、苦しみながらも互いを励ましあい、いたわり合ってつながっていく登場人物達を見るうち、どんどんこの映画の世界に引き込まれます。まだ幼い少年ミゲル役のロジェール少年もさることながら、最初から最後まで、喜劇役者ホルヘ役のイマノル・アリアスの秀逸な演技に心をわしづかみにされました。『Adios,hijo...(息子よ、お別れだ)』のシーン、素晴らしい・・・。