こいぬぐんだんの冒険
普段の生活が忙しくて気持ちに余裕がなくなってくると、こういった本が読みたくなる。
あっという間に読んでしまうけれど、その分、何回も何回も読める。
たまには人間をやめて『こいぬぐんだんの仲間になりたいなぁ』なんて思ったりする。
いつもの朝に (上) (いつもの朝に) (集英社文庫)
容姿も勉強もスポーツの何でも完璧な兄「桐人」と、容姿も勉強もスポーツの何でも駄目な弟「優太」。正反対ながらも、面倒見の良い優しい兄と、兄にコンプレックスを持ちながらも、そんな兄が自慢の弟は仲が良かった。しかしこの二人の関係が、ある1枚の手紙がきっかけで、おかしくなって行くというストーリー。
この作品を読んだとき、登場人物がとても身近にいそうな人物像で、物語にすっと入っていけました。お母さんの沙羅はとても「お母さん」を感じる人で、子供を大人と対等に見ていて、素敵な人だなと感じました。桐人は、完璧すぎてちょっと胡散臭いな、とういうのが最初の感想でした。優太は、だらしない子でちょっと困るなと思うところも沢山あるけれど、芯のある性格もチラホラ見えているので、根は優しい男らしい子なんだろうなと思いました。幼馴染の千夏ちゃんとも、お互い好きなんだろうけど、素直になれなくていつも喧嘩をしてしまうところも可愛かったです。何より二人ともお母さんが大好きというのがすごく伝わってきます。素敵なことです。
上巻を読んで一番考えたのは、私が川嶋優のあのノートを呼んでしまったらどう思うかでした。自分は殺人者の子供かもしれない。自分を今まで育ててくれた両親は本当の親ではないかもしれない。それだけでなく、自分は両親にとっては仇の男の子供かもしれない。私だったら、親に全て話して、全て教えてほしいと思いました。でも知ったときの衝撃は大きいだろうと思います。中学生はとてもアンバランスな年頃でもあるし。
これから桐人と優太がどのように真実に近づいていくのか、とても気になります。
日本のうた 2
”さとうきび畑”がとにかく聞きたくて探していました。森山良子さんなんかの方がもちろん有名だと思いますが、鮫島さんの歌声で聞きたくて衝動買いしました。
やっぱり期待を裏切らず最高でした。久々に泣きました。また、この値段で二枚組みというのもお買い得です。正直、古い歌はあまり知らなくてピンと来ませんでしたが、でもやっぱり「買い」でしょう。
鮫島さんの歌声で癒されたい、和みたい人はぜひ買ってみて下さい。
願い~愛と平和の歌
新垣勉の歌がCDショップに沢山並んでおり、その中からこの『願い~愛と平和の歌』を購入しました。
合唱を20年以上続けてきたこともあり、プロのテノール歌手をステージで多く聴いてきました。新垣勉の声の第1印象は、日本人離れしたのどの開いた深い声質のテノールだということです。ラテン系のお父さんの血はその風貌からも伺えますが、スケールの大きいラテン系の「声」の魅力にはまりました。明るい声ですね。気持ちの良い声です。
前半の6曲のイタリア古典歌曲は、彼の大らかな表現が曲と合わず、少し残念でした。彼の暖かさという持ち味が活かされていない選曲だと思います。
でも、真骨頂は「イムジン河」に込められた深い願いですね。歴史的にもこの曲は、複雑な運命を辿ってきました。引き裂かれた2つの国の悲しみをよく歌い上げています。とうとうと流れる「イムジン河」を彷彿とします。
「あざみの歌」「長崎の鐘」のように、50代の我々でも忘れていた懐かしい歌を現代に蘇らせてくれているのも聴きどころの一つです。その歌詞に込められた熱い気持ちをとても丁寧に伝えていました。これは是非お聞き下さい。良かったですよ。
「翼をください」「TSUNAMI」「明日に架ける橋」は、それぞれ有名なポップスですが、歌の奥深い所にある人類愛のようなテーマは共通しています。とても伸びやかに歌っており、このようなジャンルにも持ち味は活きますね。
「青い空は」は始めて聴きましたが、重いテーマを明るいメロディーに載せた佳曲ですね。21世紀にも歌い継いでいただきたい曲だと思いました。
楽譜の読譜に対してハンディを持っているわけですが、これからもどんどん新しいレパートリーを広げてほしい歌手です。
古関裕而歌曲集/長崎の鐘~新しき朝の
日本人の作曲家の歌を丹念に発掘しながら,発表し続けている学術博士藍川由美。世間に流布している歌と少し違うのは,作曲者の自筆原稿どおりに再現しようとしているところ。原点に戻る,これが現代日本人に忘れられそうになっている大事なところだ。いい仕事をしておられる。
声は澄やかで,伸びやかである。決してオーバーな表現はない。これが日本の曲に合う歌い方ではないかと感心している。他のCDも同じような歌い方である。だが,単調かと言えばそうではない。飽きにくい声といえる。藍川のどのCDでもいい,静かな雨の日にでも一人静かに浸ってみてはいかが。何か起こる。