ヘルヴェティオス
クリゲル・グランツマン(vo) シーメ・コーチ(g,vo) イーヴォ・ヘンツィ(g) メリ・タディッチ(fiddle,vo) アンナ・マーフィー(hurdy gurdy,vo) マーリン・スーター(dr) カイ・ブレム(b) パトリック・キストラー(bagpipe,whistle)
スイス出身。フルート、バグパイプ、フィドル、ハーディガーディ(手回しオルガン)奏者を含む、8人組という大所帯のフォーク・メタル・バンド。2012年5th。
タイトルの「ヘルヴェティオス」とは「ヘルヴェティアの民」といった意味。ヘルヴェティアとは、古代ローマ時代のスイス/アルプス地方の呼び名。紀元前1世紀に起こったローマ帝国対ヘルヴェティア人の戦争…通称「ガリア戦争」をテーマにしたコンセプト作である。
メタルと民族音楽の融合という方向性に大きな違いはない。本作も、非常に高いレベルでそれをなし得ている。
クリゲルのヴォーカルは終始デス声だが、「悲哀」や「怒り」といった感情を非常に豊かに表現している。そのデス声や、疾走するギターといった典型的メタル要素に、女性ヴォーカルや、多くの古楽器によるケルト由来のメロディが絶妙に絡み合う。
激戦の末、結局ガリア地方はローマ帝国の属州とされてしまうわけだが、最後の最後まで抵抗し、決して屈服しなかったヘルヴェティア人達の誇り高さに思いを馳せずにはいられない作品である。
Everything Remains
スイス出身、様々な古楽器を取り入れたメタル・バンド。2010年4th。メンバーは前作から変わらず。
前作のメタル要素皆無のフォーク・アルバムもそれはそれで味わい深かったが、メタル全開の本作は攻撃性と哀愁に満ちた傑作。
本作もまた、メンバー自身のルーツである古代ガリアの物語集ともいえる内容。アルバムのテーマはローマ帝国との攻防。カエサルの『ガリア戦記』では当然ローマ軍側からの視点で描かれているが、このアルバムではガリア人側の視点で物語が進行する。
疾走曲が豊富で、そのヘヴィでファストなリフの上を笛、バグパイプ、ハーディガーディといった古楽器が乱舞する。表現力豊かな芯の通ったヴォーカルと、現代的なセンスのギター・リフ。それらと高次元で融合しているケルト音楽の要素が、彼らの最大の持ち味だろう。