長い夢 特別版 [DVD]
実はホラーは大の苦手で内心ドキドキしながら見ました。でも、ホラーでなく奇怪でどこか切ないお話しでした。Higuchinsky監督の毒を含んだ世界観が妖しく広がり夢に侵されて変貌を遂げていく姿は恐ろしくもどこか、かわいらしさを感じてしまいました。堀内正美さんの”目”どこか無機質に響く”声”が作品に効果的に作用していました。ドラマ作品ということですが、切ない余韻を残すいい作品でした。ホラーがダメな方にもお勧めです!
伊藤潤二傑作集 1 富江 上 (朝日コミックス)
伊藤潤二さんの恐怖連作短篇から魔性のファム・ファタール「富江」を主人公とした作品を編んだ本です。
伊藤潤二さんのストーリーテラー、そして奇想の優秀さが充分に堪能出来る人気作ですが、初期の富江の正体が良く解らない状態の頃の不気味さとスリルは当時リアルタイムで読んでいて実に楽しみでした。
後半に於いても実は彼女の正体は良く解らないのですがそれでも少しずつ伊藤氏らしいサービス精神で新たな設定が後付けで出来ていく様もそれなりに楽しく、またそれが可能だった所に伊藤氏の漫画家としての高い職能が窺い知れると共に本シリーズが長く続いた要因だと思います。
個人的には、自然界の驚異、「プラナリア」の強い再生力やカタツムリをゾンビ化して操る吸虫「ロイコクロリディウム」を思わせる設定は大いに気に入りました。
こう言う「物」が人間界に紛れ込むと一見サイコパスの様に見えますがその実は全く別、と言う点に人智を超えた邪悪さを強く感じます。
第一話において事故で死んだ富江の死体を先生の指揮の下、男子学生が一糸乱れずに解体して行く様子は現在読んでも悪夢的なユーモアが有り、実に奇妙です。
伊藤氏の作品にその後も現れる恐ろしい群集心理の萌芽を観る事が出来ます。
このあさひコミックの傑作集は大判で読み易くて結構なのですが、初出一覧が無いのは残念でした。
永遠の美少女富江の描き方が年月に因って微妙に変化して行く様を追って見たかったので。
巻末に伊藤潤二氏のあとがきが2頁付いています。
伊藤潤二の猫日記 よん&むー (ワイドKC)
もう品切れかあ、早く増刷しないとですよ!
いやいや、よん&むーのかわいらしいことったら。
かわいらしいだけでなく、さすがの画力、描写力を駆使して、
猫ならではの底知れなさやとんでもない身体能力についても
あますところなく表現した傑作です。
しかしね〜、バロウズとか町田康といった先人の例をみるまでもなく、
どんな不良だろうがアナキストだろうがパンク野郎だろうが、
そしてもちろん鬼才異才の呼び名をほしいままにするホラー漫画の旗手だろうが、
猫には決して、誰にだって勝てやしないのだなあということがよくわかる本。
ああ、ひとえにその事実がおそろしいのれす。
そしてどうやら伊藤さんが勝てないのは、美しくて才気走った
歳下の新妻に対しても…のようですね。ふっふっふ。
いや〜、和む!