オカメインコに雨坊主 (ポプラ文庫ピュアフル)
乗る電車をうっかり間違えてたどり着いた町で暮らす画家のぼくと、住人たちが織りなす七つのお話。
こましゃくれた口ぶりがおかしい小学生のチサノや、夢見る哲学者のような英語教師のノートンなどなど、
登場人物が大変ユーモラス。チサノのうちの猫ミーコや、ご近所のおたまさんの飼い犬だったシロ、
梅雨入り、明けを教えてくれる雨坊主など、人ではないものたちの描写も、非常に愛嬌があって微笑ましいです。
夢と現が交錯するようなちょっぴり不思議なことも起こります。
単行本のレビューにもありましたが、梨木香歩さんの『家守綺譚』とどこか似た空気のある作品です。
一話一話ほのぼのしていて味わい深いのですが、最終話の数ページを読んだとき、
生きていくことの理のようなものがやさしく立ち上ってきたような……
癒される、心が温まるというだけではない、深い感動が心に広がって、泣きたいような気持ちになりました。
山桃寺まえみち (PHP文芸文庫)
1993年に出た単行本の文庫化。
『青春デンデケデケデケ』につづく第2作。
目線を変えようという意図で、女性からの視点で語られた物語になっている。それなりの成功と思う。彼女を狙って(?)集まってくる男たち、女性同士の友情などが描かれ、新鮮だった。男女の仲の難しさと素晴らしさを伝えてくれる話だと思うが、やっぱり結末がオープンエンドなので、なんとなく収まりが悪い。 いつもながらのとぼけた味、会話は良かった。