地球で最後のふたり プレミアム・エディション [DVD]
異常なまでに綺麗好きの物静かな死にたがり日本人男性ケンジと、散らかし放題の生活を送るタイ人女性ノイ。二人は、飛び込み自殺を図っていたケンジに注意を取られたノイの妹の交通事故をきっかけに知り合い、惹かれあうようになる。この作品は、そんな二人を中心に描かれる、タイのネットリとした空気が漂う不思議なラブストーリーです。
死にたがり屋のケンジの所に転がり込んでくるヤクザたち。銃口を突きつけられ、自らの命を捨てる絶好のチャンスが訪れたというのに、それを自ら棒に振るところをみると、彼の中には「死の美学」が存在しているようです。人の手ならば、ノイの手で…なんていう行動も、言葉の少ないケンジの愛情表現に見えてくるから不思議です。青白くてひょろ長い、弱々しく見えるケンジから振り下ろされる一発の拳の重さ。服を脱いだ時に現れる男らしい肢体。物腰の柔らかさ。刺青の大きさに負けない存在感。この数多くのギャップを演じきれるのは、やはり、浅野忠信しかいないと思います。監督が、「この役は、浅野しかいない」と言っただけあって、彼の魅力に溢れた作品です。
ノイの憂い溢れる瞳も、内側から溢れる強さと優しさを表現した演技もすばらしいし、タイの湿度を感じさせるカメラワークも申し分ありません。アジア映画に興味がある人にはお勧めの映画です。