北条早雲 (SPコミックス)
永井豪作品としておちつきのある、歴史漫画。
独特のインスピレーションを持つ永井豪作品のなかでは、きっと地味目。
その分説得力がある、北条早雲伝。
戦略眼、戦術眼を鷹の目として表しているのだろうか。応仁の乱から関東制覇までを描く。
歴史的には名君だったとされ、家訓もよくひきあいに出される後北条氏の祖。
独特の政情判断と家臣団による活躍が見物。太田道灌とのエピソードはモデルは秀吉かもしれない。
今でも小田原といえば、早雲。鎌倉と頼朝のようなもの。
美女の裸体像も少なく、超人的な武将も少なめだが、まぎれもなくダイナミックプロの作品。
手天童子、バイオレンスジャックの素材の一つとなっている歴史漫画なのかもしれない。
味のある歴史シリーズの一冊。
武士の家訓 (講談社学術文庫)
武士の家訓集です。北条、武田、豊臣、島津などそれぞれ人柄がでていて率直に面白い、昔の日本人(武士)の考えが身近に感じられます。支那古典をどう取り入れているかなども読み取れて興味深いです。家康が生涯大事にした言葉「足ることを知って足る者はすべて足る(老子)」好きな言葉です。あと特に「孟子」をよく味わうようにと言っていたそうです。大河ドラマ風林火山で話題になった武田信玄、信繁の家訓も。
謀将 北条早雲〈上〉 (角川文庫)
伊勢新九郎6歳,いまだ備中に在る頃から話は始まる.時代は戦国より一つ前の応仁の乱の頃.姉の千冬(後の北川殿)が今川義忠に嫁ぎ,二人の間にできた竜王丸と今川家の重臣である小鹿範満の熾烈な家督争いを中心に話が展開される.竜王丸と小鹿範満の勢力差は大きい.新九郎は姉のため,10倍以上に及ぶ勢力を持つ範満を相手に,荒木兵庫や大道寺太郎らを従え,智謀の限りを尽くす!・・・が,そこには近接する堀越公方の足利政知,扇谷・山内の両上杉,ひいては中央政権の思惑も必然的にからんでくる・・・.新九郎の主な活躍の場は今川館であるが,駿河地方にとどまらず,父である盛定とは備中で,天才絵師である雪舟とは京都相国寺で,それぞれの関係が描かれてゆく.
息も吐かせぬストーリー展開に,手に汗握る.上巻だけで一通りの話が完結しているところは,作者の筆力だろう.上巻だけでも十分楽しめるが,上巻を手にした者は,必ず下巻も手にしたくなる.
箱根の坂〈上〉 (講談社文庫)
以前に読破して、「面白かった」という記憶がありまし
たが、若くて熟読できていなかったとの反省から、再
読することにしました。
室町時代のことは、前後の幕府とくらべて地味な印象
があるが、これは南北朝の争いから、ずっと争いが絶
えず混沌としていたからだと思う。そういう時代の世
相を著者は早雲だけではなく、千萱など、本編とは無
縁とも思えそうな人物の業績、文責などを下地に、読
者に対し時代を「再現」してくれていると感じました。
室町幕府という虚飾が剥がれ落ち、徐々に守護という
虚構もなくなり、守護代や国人といった実力を持つも
のが実力に応じて生き抜いてゆくという時代がくるの
だと思うと、室町幕府というものが滑稽で仕方がない。
中・下巻が楽しみです。
新装版 箱根の坂(上) (講談社文庫)
『国盗り物語』の斎藤道三は、物語のはじめから天下取りを見定めて、そのうえで美濃を選んで、とにかく最初からエネルギーに満ち溢れていた。
確かその第一巻で道三が伊勢新九朗について語っているシーンがあったので、同じようなタイプの人物かと思っていた。
そう思いながら読み始めたのだが、予想と違い、静かな立ち上がりだった。
最初からエネルギッシュだった道三と違い、新九朗に野心は全くなく、現代風にいえば「草食系」とでもいえるタイプ。
読んでいると、「この人物が本当にあの後北条家の創業者なのか?」と疑ってしまうくらいだ。
この「草食系」・伊勢新九朗がどのように変わり、どのように関東を制覇していくのか楽しみに続きを読みたい。