もう２度と企画されないＣＤ、今のうちに入手すべき１枚、保存に

市川崑演出、1990年放送のフジテレビの作品である。
吉田満『戦艦大和ノ最期』を原作とした1953年の新東宝の映画と類似の作品だが、
テレビドラマのため、派手な戦闘場面があるわけでもなく、映像作品としては地味である。
市川崑演出ということで、かろうじて成立している作品なのかもしれない。
それでも、腰のすわらない歌舞伎役者がわめいている昨今の映画よりは、くりかえしみるに値すると思う。

吉田満の原作は、最近その瑕疵をあげつらって嘲笑する風潮があるが、愚にもつかないことだ。
この作品は、戦争映画としてみるとたいへん地味だが、吉田満の原作の静謐さを再現しているという意味では秀作だと思う。
DVDにしてのこすべき作品だと思うが、最近の迷走しているフジテレビに期待しても無駄だろう。

　芦川いづみは、私にとって日活映画永遠のヒロインだ。とくに、田坂具隆監督が描く芦川いづみ（本作と乳母車）が大好きだ。
　また田坂監督の弟子となる熊井啓監督も彼女を日本列島でヒロインに起用している。ラスト、彼女が国会議事堂をバックに歩くシーンは震えが来るほど感動した。
　彼女は潔く引退してしまったけど、スクリーン（いまはＤＶＤか）の中で永遠に生き続ける。