ブレイブ ワン 特別版 [DVD]
Jodie Fosterという女優に、一応の信頼を置いていますので、見てみました。(未だ映画を見ていない人は、読まないで下さい。あらすじが書いてあります。)
この映画のプロデューサーや脚本家や監督や役者たちが、この映画によって意図したものを、私は直接、彼等にインタビューして確かめた訳ではありません。以下に示すのは、「私の推測と、それに添えたコメント」です。
新約聖書に、「復讐してはならない」とあります。マトモなアメリカ人で、主イエス・キリストの言葉である「復讐してはならない」を、知らない人はいません。それを軸として、この映画を見てみます。
「復讐してはならない」という言葉の重みがあればこそ、復讐に至るまでのストーリーが、丁寧に描かれています。冒頭の、幸せそのものだった婚約者との生活から、突然の耐え難い不幸、拳銃入手の際の幾つかの微妙な経緯、ドラグストアでの偶然の防衛的発砲から始まって、地下鉄の中でチンピラ二人を半ば意図的に殺害し、終には、確信犯としての憎しみと殺意を持って、特定の悪党を意図的・目的的に殴打し、転落死さています。
次第にエスカレートして行く過程を描いているのは、勿論、最後にフォスターが単身、適地に乗り込むまでの必然性を説明する為でもありますが、それは又同時に、「復讐してはならない」という宗教の厚い壁に、徐徐に穴を開けて行くためでもあります。
途中で刑事が「理性から」フォスター逮捕の可能性を彼女に警告していますが、後に、フォスターが悪党を一掃する為に命を棄てて乗り込んだ現場では、最後のところで「情から」彼女に「合法的な拳銃」を渡しています。
映画を観ている観衆が、「こういうことなら、彼女と刑事が、ああいう行動をとったのも、仕方が無い、無理はない」と思えれば、映画の作り手たちの意図は、成功したことになります。
即ち、神によって復讐が禁じられている所でも、それでも猶そこに、「極めて人間的で必然的な復讐という行為が生じ得るのだ」ということを、彼等は示そうとしています。そのような、「厳然たる神の掟の御前(みまえ)での、人間の人間的な真実」に、照明を当てようとした映画であると、私は推測します。
その仮定に従ってコメントしますが、彼等がそういうコンセプトで此の映画を作ったのは、彼等にとっては、それが「人間的である」ことだからです。それが、彼等の、「人間としての、自己証明」だからです。ですから、現実問題として彼等がどこまで自覚していたか分かりませんが、彼等が実際にしていたことは、「神との対比に於て、『自分達は、人間である』」ということを、手の込んだ映像によって示すことでした。
私から見れば、そこにはひとつの「誤った前提」があります。それは、「神に100%吸収された生き方をするなら、そこでは、人間の自由意志など無くなってしまう。その意味で、『我々を我々自身たらしめている、人間そのものであるもの』が、一切無くなってしまう。」という考え方です。
何故それが、考え違いで誤りかと申しますと、人間は実際には、悔い改めの前と後では、自由と不自由に就いての理解が、180度転回するからです。主の命じられるところに従って、自己を強制して敢えて不自由なことをやり始め、やり続ければ、それは実際には本物の自由そのものの新たな始まりであることに気付きます。しかも、最も大事なことは、それによって初めて、その人に「人間の自我」と呼ぶに相応しい自我が備わり、「神からの善と真の流入を受ける器・receptive」と成ることが出来ることです。
Brave One (Score)
ジョディ・フォスター主演「ブレイブ ワン」のサントラ。
ジョエル・シルバー制作の「普通のハリウッドアクション映画」なのかなと思いきや
実際にはニール・ジョーダン監督の作家性の強い作品でもあり、
音楽にも造詣の深いジョーダン監督に作曲を指名されたのは「ルワンダの涙」のダリオ・マリアネッリ。
情緒豊かで、やはり上手いです。
ただし本編ではスコア同様に挿入歌も印象的だったはずで、
プロデューサーを兼ねるジョディ・フォスターとニール・ジョーダン監督は
物語に合う歌を(流行に左右されることなく)しっかりと選んでいました。
ですからせめてサラ・マクラクランの "Answer"ぐらいは収録してほしかったとも思います。
(アルバム“Afterglow”および“Afterglow Live”に収録されています)
ブレイブ ワン [Blu-ray]
ジョディ・フォスターの演技が凄かったです。もともと、演技力には定評はあるわけですが、この作品においても十分すぎるほど演技力が発揮されています。
おそらく、この作品で問題になるのがラストだと思われます。果たして正しいことなのか。正しいことではないと思います。明らかに。しかし、個人的には、あのラストは許してあげたい。目には目をではいけないのだが…。
Blu-rayの画質・音質に関しては、ワーナーの中では、上位に入る仕様だったと思います。しかし、残念ながらまだまだブエナ・ソニー等と比較すると劣っています。何度も言っていますが、Blu-rayの本当の力量は、こんなものではないはず。消費者を納得させる仕様でのリリースを望みます。中途半端な仕様なら、消費者は納得しない。