かめくん (河出文庫)
一粒で三度美味しいかめくんです。
一度目は読んでほのぼの、かめくんの愛らしさに顔がほころぶこと間違いなしです。パンのみみとセロリもきっと食べたくなるでしょう。
でも二度目は、ちょっと不思議な『かめくん』ワールドの謎を解き明かしたくなって、じっくり読んでしまうでしょう。かめくんの、実は悲しい?むなしい?境遇に思いあたって、涙しちゃうかもしれません。
さらにはまって三度目、「これはいったいどんな意味なんだろう」と考え、テツガクしだすようになったら大変です。すっかりかめくんの虜です。でもそれがとってもキモチいい、そんな『かめくん』をぜひ読んでみて下さい。
見た目に騙されちゃだめですよ。
どーなつ (ハヤカワ文庫 JA Jコレクション)
装丁のかわいらしいイラストに惹かれ『ジャケ買い』してしまったが、
『電気熊』を通した他人の記憶との同化したり、『アメフラシ』を使って
火星に人が住める様な仕込みをしたり、見えない敵と戦っているのかいない
のか分からなくなったりするなど、今迄の概念が全く通用しないサイケデリック
な世界観の中であらゆる伏線が入り混じり物語が進行していく。かと言って
よくある不条理モノに落ち着かないのがこの作品の良いところ。
自分の理解力が足りないのか、それとも話そのものが難しいのかは分から
ないが、最低でも2回は読んだ方が良いかと思われます。
『○子の部屋』の黒○徹子のウィッグの中には宇宙人が棲みついていると
信じて疑わない人は買い。
かめくん (徳間デュアル文庫)
僕はもともとカメが好きで、この本もタイトルにひかれて 買ってみました。だけどこの本はただのカメ好きのための本ではなく、周りの人と、カメに似せて造られた主人公「かめくん」との心温まるふれあいや、その「かめくん」 が考える、人とはまるで観点の違う世界観を、ほのぼのとした町を舞台に、ほのぼのとした「かめくん」の私生活を
通して楽しみながら読むことが出来る、心温まる本なんです。読んでると、不思議と笑みがこぼれてきます。 イライラしてる時なんかは、これをちょっと読んでみて下さい。癒されますよ。
かめ探偵K (メディアワークス文庫)
北野勇作作品ではお馴染みの、かめ。
かめは語り手、ナツミの店子で屋根裏部屋に探偵事務所を構える。これはナツミによる事実を下敷きにしたフィクション・小説として紡がれるかめ探偵Kのお話。新聞小説らしい。要はメタフィクション。そして何が現実で、虚構で、はたまた誰かの、あるいは何かの夢見た、もしくは夢見るセカイなのかが曖昧模糊とした物語。つまり北野勇作的SFの通常進行。
いつもと異なるのは、このかめ、レプリカメ(模造亀)じゃない。たぶん。それによくしゃべる。探偵らしい探偵の振る舞いをするが、これは決してミステリじゃない。いや、ミステリとしても読めるかも。でもSFであることは間違いない。
ゆるゆると流れる、こことはちょっと違う、失われた懐かしい近未来の世界。かめ探偵の声に導かれるまま、ノスタルジーという、つくりものの記憶にしばし心身を委ねてしまうのです。
メイド・ロード・リロード (メディアワークス文庫)
「かめくん」「ザリガニマン」「レイコちゃんと蒲鉾工場」「どーなつ」「ウニバーサルスタジオ」などで有名な北野勇作さんの最新小説です。
今回のタイトルは「メイド・ロード・リロード」。冥土とメイド、メイド喫茶、セーブ/ロードのロードとゲームのロードなどをかけたダブルミーニング、だじゃれを使ったファンタジーライトノベル風SFです。そう、いつもは不可思議なSFがうりの北野勇作さんが、ライトノベル小説を書くというところから話が始まる小説です。
とはいえ、北野勇作さんの事ですから、その始まりからのところで既にどこまでが虚構でどこまでがメタでどこからが作品世界になっているのかわからなくなっていくという不可思議設定で、読み終わってみればいつものまごうことなき北野節が炸裂の小説でした。
なにがなんだかよくわからないままに世界に放り出される主人公。それを支えるちょっと魅力的な少女、現代風の多少ツンデレにメイド姿の女の子が、自分探しをもとめてロードノベル的冒険をするという、ライトノベルのデフォルトテンプレートを用いつつも、そこをメタに見下ろす作者と編集者、それが都市伝説となっている世界、それを小説に書いている作者という入れ子構造の多用で確実な足場がなくなっていく感覚は、とても北野勇作さんらしいものです。
今までと毛色はやや違うけれども、確かに北野作品です。