ハンス=マルティン・シュナイト 商品

ハンス=マルティン・シュナイト シュナイト ブラームスドイツ・レクイエム

シュナイト&シュナイト・バッハ管弦楽団の2回目の「ドイツレクイエム」CDだ。評者は、このライブに接している。もちろん録音されたものゆえに、実演と比べれば隔靴掻痒の部分がないではない。冒頭楽章のハープのアルペッジョなど、さらにニュアンスは豊かで、ゾクゾクするほどだったし、第2楽章でも金管の抉りははるかに決まっていた。とは言え、である。冒頭楽章、1回目のCDを聴いていない人にはわからないが、合唱レベルの向上が顕著だ。ピアニッシモの持続が、最高度の訓練を要する。ここまでの安定度を保ったシュナイト・バッハ合唱団の奮闘を讃えなければならない。ハンス=マルティン・シュナイトとはだれか?急逝したカール・リヒターの後を襲ったミュンヘン・バッハオケのマエストロだと言えば、その実力のほどはわかってもらえよう。世間はラトルだ、小澤だと騒ぐが、現今これだけのドイツ音楽を振れる指揮者は皆無なのだ。過日(10月28日)も、アマチュアオケのジャパンアカデミー・フィルハーモニックとのブルックナー第7シンフォニーを聴いた。オケのレベル云々で言えば、いろいろとあるだろうが、その感動的であったこと!!!『ドイツレクイエム』!ブラームスの全作品で最も優れたものというだけではない。およそ、あらゆるレクイエム・宗教合唱作品でもバッハ『マタイ』を別格として、ベートーヴェンの『荘厳ミサ曲』、ブルックナーの『テ・デウム』に匹敵する人類の至宝である。評者にとって、この曲の理想的な演奏を聴きたいという思いは、20年来の悲願。多くのクラシックファンにとってもそうではないだろうか。録音、オケ、合唱と要素はいろいろあろうが、じっくり耳をすませて本ディスク、シュナイト新盤を聴いて欲しい。ここにあるのは、最も作品の本質に迫り、かつアノニマスな彼岸に達さんとする稀有の演奏であるから。どこにも、引っかかるところがない。作り物めいたところが皆無なのだ。美点はいろいろとあるが、全体がひとつの音楽作品として静謐で厳しい響きで一貫されているから、細部がどうのこうのはどうでもよいのかもしれない。第3楽章。バリトンのトーマス・バウアーの驚くべき表現力は、あと少しで作品をはみ出しそうであるが、それがギリギリのところで踏みとどまっている。この踏みとどまりこそが音楽を音楽たらしめるのだ。実演の印象もオーヴァーラップするから、それにどうしても引きずられてしまうが、バウアーのソロは謹厳一本槍ではないフレッシュな魅力に溢れている。こういうアプローチは、本来シュナイトの真摯なアプローチとは齟齬を来たしかねないのだが、そこはベテランのシュナイト、あくまで彼の掌にある。それにしてもバウアーの素晴らしさ!! バウアーは、インマゼール指揮のベートーヴェン第9のディスクでも大健闘を見せていた。クライマックスの「永遠のニ調」のフーガでは、旧盤はテンポが早過ぎると感じたものだが、ややゆったりとした進行が充実した響きと相俟って、この楽曲の最も感動的な演奏になっていると思う。ソプラノの平松英子は、本来もっと出来ると思う。体調が悪かったのか? とは言え、流石に我が邦を代表するソプラノだけのことはある。十分に作品の精神を伝えている。第6楽章。作品の本丸ともいえるこの楽章は、比較的軽快なテンポで開始される。そのリズム感が入りの序章として見事だ。バリトンは相変わらずオペラチックなほどにエスプレッシーヴォ! ついで、とうとうラッパが鳴り、死との闘いが始まる。何という素晴らしい音楽!! ここは録音の問題か、いま少し重量感も欲しいが、演奏そのものはまったくもって最高だ。「死よ、おまえの勝利はどこにあるのか」人間存在の卑小と偉大。ここでブラームスは、いつもの内省一辺倒の姿勢を変えて、振り絞るように闘いを挑んでいる。終楽章でも、合唱は健闘している。ソプラノパートにやや安定を欠く気もするが、オーケストラの豊かなニュアンスが印象深い。心があふれ出しているような弦群。慌てず、急がず緩やかな呼吸感のあるテンポ。音色はごくごく自然に、その趣きを変えていく。同じようにニュアンスの表出に留意したチェリビダッケの演奏は、終楽章に15分超をかけてネットリとやっているが、11分のシュナイトのほうが感動的だ。第3楽章「Dのフーガ」での、いつ終わるとも知れぬ超スローテンポ、バリトン・ソロの深々とした歌などチェリビダッケ盤も捨て難いところあるが、終楽章は呼吸する前に衰弱してしまう。今回、様々なディスクを聴いてみたが、チェリビダッケのやや凝り過ぎで作り物めいたところも散見される演奏よりも、演奏自体はシュナイトに軍配を挙げたい。ただし、響きの重量感、安定度という点では、チェリビダッケ&ミュンヘンが素晴らしい。この2盤にベルティーニ&都響盤を加えれば、『ドイツレクイエム』のベスト3が揃うことになろう。 シュナイト ブラームスドイツ・レクイエム 関連情報

ハンス=マルティン・シュナイト シュナイト モーツァルト:レクイエムK626 他

アマチュアマンモス合唱団の例に違い、見事な一体感に賞賛を送ります。団員の思いがステージ上にとどまらず、きちんと聴衆に届いているという点に拍手。ケチをつけようと思えばできもしますが、音楽としての完成度において問題ない範囲かと思います。是非、生で聴きたかった! シュナイト モーツァルト:レクイエムK626 他 関連情報




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